旅素描~たびのスケッチ

気ままな旅のブログです。目に写る風景や歴史の跡を描ければと思います。

巡り旅のスケッチ[西国三十三所]26・・・中山寺

 兵庫へ

 

 大阪府の札所巡りを終えた後、次は兵庫県に入ります。面積的には相当広い兵庫県。それでも、この県にある霊場は4か所にとどまります。この4か所の霊場は、何れも県中央の広くて深い山地から、少し南のあたりに位置していて、地図を見ると、ほぼ横一線に散らばっている状況です。

 最も東は、宝塚市の第24番中山寺(なかやまでら)。そして、加東市播州清水寺を経て、加西市の一条寺。最後は、姫路市の第27番圓教寺(えんぎょうじ)へと続きます。

 途中には、観光名所も幾つかあるため、折角の機会です。温泉に立ち寄りながら、或いは、名所を巡りながら巡礼の旅を続けます。

 

 

 中山寺

 兵庫県の最初の札所は、第24番中山寺宝塚市の中心部から、やや北東に位置しています。この古刹のすぐ近くには、阪急線の中山観音駅があり、JR福知山線も、少し南に通っています。

 境内の周辺には、何か所もの駐車場があるようですが、おそらくほとんどが民間の有料駐車場だと思います。私たちは、阪急中山観音駅にほど近い、有料の駐車場に車を停めて、境内へと向かいます。

 

※阪急中山観音駅

 

 山門前

 駐車場から阪急線の駅へと向かい、阪急の軌道下をくぐります。その先の細い道を辿って行くと、突き当りの左手に山門が見えました。道端には、「大本山 中山寺」と刻まれた、立派な石柱が置かれています。

 傍には、境内の見取図や案内所なども並んでいて、多くの人が訪れる、賑わいの寺院の雰囲気を感じます。

 

中山寺山門前。

 境内へ

 山門を通り抜けると、立派な参道が真っ直ぐに続いています。道の左右は、欄干を模したような、朱塗りの垣根が設けられ、その奥には植え込みが並んでいます。

 瓦の屋根が美しい、黄土色の土壁も見事と言う他ありません。おそらく、土壁の両奥には、中山寺の傘下の寺院が寄り集まっているのでしょう。

 参道の正面奥には、五重の塔や幾つかのお堂の屋根も見られます。

 

※見事な景観を醸し出している参道。

 

 中山寺の境内に近づくと、「中山寺境内略図」と記された、立派な境内図がありました。ここからも分かるように、参道の両脇には、5つの寺院が境内を構えています。そして、それら5か寺を見守るように、最奥に、中山寺の境内が広がっているのです。

 

中山寺境内略図。

 

 閻魔堂(えんまどう)

 本堂のある境内へは、参道から直線状に2か所ある石段を上らなければなりません。この2か所の石段の中ほどが、踊り場的に途切れたところの左手に、閻魔堂がありました。

 西国三十三所巡礼の創始者である、奈良長谷寺の徳道上人。この方が、閻魔大王から三十三所の宝印を授けられ、この中山寺に埋めたとされるお話は、この巡礼の原点です。後に、花山法皇が、ここ中山寺で宝印を見つけ出したことにより、巡礼が復活し、多くの人が霊場を巡ることになりました。

 そんなゆかりの閻魔堂。中山寺では、意義深いお堂です。

 

※閻魔堂。

 

 西国三十三所の原点のお話

 西国三十三所が始まった、原点のお話は、「巡り旅のスケッチ[西国三十三所]10」の中で触れてきたところです。奈良長谷寺の門前にある法起院を訪れた時、このあたりのことについて、詳しく知ることができました。

 

soranokaori.hatenablog.com

 

 本堂

 閻魔堂を過ぎた後、2つめの石段を上ります。右手には、寺院では珍しいエスカレーターも整備され、細やかな配慮の様子が窺えます。

 石段を上り詰めた一角は、中山寺の中心地。正面に本堂があり、右にはまだ新しい、立派な建物がありました。

 本堂に近づくと、そこには、幾つもの吊り灯籠が架かっています。屋根下は、鮮やかな色彩の花や龍の紋様が、周囲を取り巻くように描かれて、絢爛豪華そのものです。

 私たちは、十一面観世音菩薩を本尊とする本堂で参拝し、御朱印をいただきます。

 

中山寺の本堂。

 

 多宝塔

 本堂に向かって左奥に進んでみると、そこには、一段上の境内に、朱色が映えた立派な多宝塔がありました。整然と積み立てられた石垣や、多宝塔と溶け込んだ手摺の配置が素晴らしく、この寺院の壮大さが窺えます。

 

※多宝塔。

 

 五重の塔

 多宝塔を眺めた後は、本堂前に立ち戻り、反対の右奥へと進みます。こちら側も一段上に境内が設けられ、そこには、勇壮な五重の塔が聳えています。

 薄紫を基調とした屋根裏の色彩は、鮮やかというよりも、深淵さを感じる造りです。

 聖徳太子が創建したと伝えられる中山寺。仏教が日本に伝わってから、それほど時は進んでいない時代です。当然ながら開基以降、栄枯盛衰はあったはず。それでも、悠久の歴史を経て、今も立派な境内が宝塚の山際に広がっているのです。

 

※深淵さを感じる五重の塔。

 

 大師堂

 五重の塔に近づくと、深遠な色合いがさらに映え、辺りには不思議な空気が流れています。これまで見たことのない、魅力的な寺院の塔との出会いです。

 五重塔の裏手に回ると、もう一つ、質素ながら艶やかな小さなお堂がありました。このお堂、弘法大師をお祀りする大師堂。中山寺が、真言宗中山寺派大本山だということで、弘法大師との結びつきもあるのでしょう。 

 

中山寺の大師堂。

 

 五重の塔や大師堂があるところから向かい側を見てみると、谷間を挟んで、先ほどの多宝塔が見えました。

 

 写真にはそれほど写ってはいませんが、中山寺では、お子さん連れの参拝者が目につきました。百日のお参りなのか、七五三のお参りなのか、とにかく、子どもの祈願に人気のあるお寺なのだと思います。

 神戸市や大阪市などの大都会の近くにあって、多くの人が訪れる寺院です。

 

※大師堂の傍にある弘法大師像と多宝塔。