旅素描~たびのスケッチ

気ままな旅のブログです。目に写る風景や歴史の跡を描ければと思います。

巡り旅のスケッチ(四国巡拝)48・・・阿波路(9番→7番)

 吉野川左岸の巡拝

 

 9番札所の法輪寺から、最終の霊山寺までの10か寺は、吉野川の左岸に広がる徳島平野霊場です。それぞれの霊場は、程よい間隔でつながっていて、車で一気に巡ります。

 数年前、この区間だけ、歩き遍路で訪れましたが、地域に暮らす人たちは、温かく迎えてくれて、心地よく感じたことを覚えています。地域と一体となったお遍路さんの光景は、阿波の国の風物詩とも言えるでしょう。

 

 

 法輪寺

 讃岐山地の麓にある、切幡寺を後にして、坂道を吉野川方面に下ります。この辺りは、広々とした農地が広がって、その中に、ところどころ集落が点在するという風景です。

 先に訪れた切幡寺と、今回紹介する3か寺は、徳島県阿波市にある霊場です。讃岐山地の南側の斜面から、吉野川の方向に、緩やかに下るような地形が続きます。

 

 10分ほどのドライブの後、小さな集落の一角に、こんもりとした鎮守の森のような景色が認められると、法輪寺(ほうりんじ)はもうすぐです。農地の間を貫くような道を走って、森の方へと向かいます。

 

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※仁王門。

 

 法輪寺

 法輪寺の駐車場は、鎮守の森の手前です。境内の直前にある駐車場に車を停めて、森の方へと向かいます。

 木々が茂る境内は、そこを取り囲むような格好で、白壁が連なります。その壁伝いに進んで行くと、右側に仁王門。この仁王門は、鐘楼門も兼ねているような格好ですが、小じんまりとした姿です。

 門をくぐると、正面奥が本堂です。大師堂は、本堂の右隣り。全体として、小ぶりの境内です。

 また、境内は思ったほど、木々が生い茂る様子はありません。周囲には農地が広がり、見渡しの良い空間だけに、法輪寺の木々の姿が特に目立っていたのでしょう。

 

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※左、本堂。右、大師堂。

 熊谷寺

 阿波の平野の法輪寺から、今度は、北に続く山並みの麓へと向かいます。徳島自動車道路の高架をくぐると、左手に、堂々とした仁王門が忽然とその姿を現します。あたかも独立した、モニュメント然とした仁王門。歩いて巡れば、平地から直線的に坂道を上ったところに位置します。

 熊谷寺(くまだにじ)の駐車場は、仁王門を遠巻きに通り過ぎ、少し坂道を上ったところです。おそらくそこは、既に熊谷寺の境内になるのでしょう。

 

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※多宝塔。

 熊谷寺

 本堂がある境内へは、駐車場から右方向に進みます。細くつながる坂道や、石段を上りながら奥の方へと向かいます。

 境内の入口辺りの左には、落ち着いた雰囲気の多宝塔が見事です。その塔を見ながら石の階段を上って行くと、厳かな山門が現れます。本堂は、その山門のさらに先。山の斜面を上り進んだところに佇みます。

 

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※ 山門。第2の仁王門でもあるようです。

 

 本堂は、山門からさらに先に進んだ上方です。僅かに開けた空間に、独立してそのお堂を構えます。

 熊谷寺の大師堂は、本堂の左側。これも独立した空間にひっそりとその姿を隠します。

 熊谷寺の境内は、山の麓の斜面から、少し傾斜がついた、尾根のような地形のところに細長く伸びているような恰好です。

 

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※左、本堂。右、大師堂。

 

 寺院名

 熊谷寺は、”熊”という名がつくように、紀州の熊野信仰との関連があるようです。縁起では、空海紀伊山地での修行などと関連付けられているようですが、その真偽は別として、熊野は、空海にとっても特別な場所であったのだと思います。

 その根拠は、高野山。この地に真言密教の拠点を開いた空海は、熊野の地を大きく包み込むかのごとく、金剛峰寺を設けられたのだと思います。

 その昔、熊野信仰が流行し、熊野本宮を中心とする熊野三山の参詣が、盛んに行われた時期は、恐らくは、空海の時代より、さらに後のことだと思います。ただ、山岳を渡り歩いて、悟りを求める修行の姿は、空海より先の時代からあったのだと思います。

 空海が熊野信仰とどのようにつながっていたのか、知るよしもないことですが、高野山の位置を思うと、そのつながりを感じざるを得ないような気がします。

 

 十楽寺

 熊谷寺を後にして、山の麓を東へ進み、7番札所の十楽寺へと向かいます。十楽寺は、阿波市の東の端に位置していて、徳島自動車道路のすぐ近く。住宅が張り付く道沿いに正門を構えます。

 この霊場の正面は、竜宮造りと呼ばれている異国風の山門が特徴で、見過ごすことはありません。駐車場はその門のすぐ脇にあり、車を停めて、境内へと向かいます。

 

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十楽寺山門。


 十楽寺
 山門をくぐって先に進むと、右方向に、もう一段上がったところに中門が望めます。この門は、入口の山門ほどは派手なつくりではないものの、よく似た構造の建物です。

 

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※中門。

 

 中門の先の正面には、どっしりと構えた本堂が威厳を放って佇みます。まだ新しい感じの建物で、境内全体が、明るい雰囲気のところです。

 十楽寺の大師堂は、本堂の左側。本堂がある境内からは、もう一段、石段を上り進んだ上方です。

 

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※本堂。

 境内の右方向には、納経所がある立派な建物がありますが、そこには宿坊や寺院の関連施設などもあるようです。

 

 十楽寺の寺院の名前は、文字通り、10の楽しみが得られるようにと名付けられたということで、本尊は、阿弥陀如来とされています。

 浄土真宗が本尊と仰ぐ阿弥陀如来も、真言密教とどこかで結びついているのでしょう。

 

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※境内から大師堂を望みます。

 

 いよいよ、残る札所はあと6か寺。次は、上板町の6番札所、安楽寺(あんらくじ)を目指します。