旅素描~たびのスケッチ

気ままな旅のブログです。目に写る風景や歴史の跡を描ければと思います。

巡り旅のスケッチ(四国巡拝)21・・・伊予路(53番→52番)

 松山へ

 

 今治市の6か寺を急ぎ足で周った後は、瀬戸内海の海岸伝いに松山市へと向かいます。

 松山と言えば、道後温泉があまりにも有名で、是非とも立ち寄りたいところです。夏目漱石の「坊っちゃん」も愛した共同浴場の温泉は、今も古風な姿を残し、多くの観光客が訪れます。

 四国88か所の霊場を8か寺抱える松山市。瀬戸内海に面する市街地の北部から、四国山地の入口にあたる南部まで、多くの札所が連なります。

 

 

 53番円明寺

 延命寺を後にして、国道196号を一路西に向かいます。今治市は、その先端が半島状に瀬戸内海に突き出ていて、その部分をショートカットするように、山をすり抜けながら国道が走ります。

 やがて、海岸沿いの道に変わると、右手には太陽石油の大きなプラントが見えました。そう言えば、愛媛県では、エネオスコスモ石油などのメジャーなガソリンスタンドもありますが、ところどころに太陽石油のスタンドも。何となく、ローカルな感じのするスタンドで、愛着を感じてしまいます。

 海辺の、のどかな道路を、およそ1時間のドライブです。やがて、新しい街並みが現れて、住宅の中を進んで行くと、円明寺に到着です。

 

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※左、仁王門。右、仁王門をくぐった先の境内と山門。

 

 円明寺

 円明寺(えんみょうじ)は、一つ手前の延命寺と発音が似ています。元々は、延命寺(えんめいじ)が円明寺(えんめいじ)と名付けられていたそうですが、両寺院のつながりは分かりません。おそらく、名称の類似には、深い意味は無いのだと思います。

 

 さて、円明寺の境内は、向かい側の駐車場から道を挟んだところです。道路に面して仁王門が構えていて、その奥には、もう一つの山門が参拝者を迎えます。この山門は、中門とか楼門と呼ばれているようで、境内の中央に位置します。

 本堂は、山門を越えたその奥にあり、スッキリとした屋根が特徴です。一方の大師堂は、仁王門と山門の間の左側。全体として、小じんまりとした境内を、寺院建物が整然と囲みます。

 

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※本堂。

 

 52番太山寺

 円明寺から少し西の方角に、瀬戸内海に面した小さな山地が広がります。この山地の東の麓に太山寺(たいさんじ)は位置します。松山市太山寺町の集落に入ると、進路の向こうに、道をまたいだ山門が目に止まります。この門は、太山寺一の門。その先には、まだ集落が続きます。

 門前の民家が並ぶ狭い道をすり抜けて、さらに奥へと進んで行くと、左手に仁王門が現れます。その脇を通りすぎると、やがて林の中に入ります。そして、右手に駐車場。道はまだ先へと延びていて、もう少し奥に進みたくなりますが、ここから先は徒歩で向かわなければなりません。

 

 駐車場から本堂がある境内までは、およそ300mの道のりです。途中には、右手に立派な本坊があり、納経は帰りにそこで頂きます。その先は、かなり急な坂道で、道沿いには数軒の民家のような建物も見られます。これらの建物は、かつてはお遍路さんたちが投宿する施設であったとのこと。今では、その役目は終わり、ひっそりと林の中に佇みます。

 境内までの急坂を登りきったら、ようやく石段下に到着です。そこには少し広い空間があって、斜面を背にした大日如来の石像やお地蔵さんなどが配置され、参拝者を静かに迎えます。

 

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太山寺の境内入口。

 太山寺

 上の写真には写っていませんが、写真の右側には、境内へと続く石段が延びています。かなり急な石段で、その先に、立派な山門がそびえます。

 駐車場からの険しい道のりの後に控える石段は、私たちのような、車で訪れる参拝者には結構応える難関です。歩き遍路の方からすると、日々の修行の一時に過ぎず、山岳の道とは比較にならないたやすさなのだと思います。

 

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※左、本堂へと続く石段。右、境内から見た石段上の山門。

 

 山門をくぐると、正面に立派な本堂が見えました。大屋根の両翼が、少しそり上った勇壮な構えの本堂は、格式の高さが伝わります。この本堂は、鎌倉期の建物のようで、下の写真にある白い看板にも記されているように、国宝に指定されているということです。

 太山寺の境内は、山の中腹のようなところにあって、周囲は木々が取り巻きます。往時は、たいそう規模の大きな寺院であった様子で、その名残を感じます。

 

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※国宝の本堂。

 太山寺の大師堂は、山門の左手です。本堂がある境内からは、さらに少しだけ石段を上がらなければなりません。

 本堂と大師堂を参拝して、もと来た道を引き返し、駐車場近くにある本坊で納経を頂きます。この本坊、入り口も建物もたいそう立派な造りです。きっと、多くの信者の方が支えておられることでしょう。

 

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 ※左、写真の左の建物が大師堂。右、大師堂と反対側の境内の様子。


 帰り道も、再び仁王門の脇をすり抜けて、一の門へと続く道を辿ります。門前に連なる民家に挟まれたこの道沿いは、かつては、門前の賑やかな町だったのかも知れません。

 私たちは、太山寺を後にして、松山の中心地へと向かいました。