旅素描~たびのスケッチ

気ままな旅のブログです。目に写る風景や歴史の跡を描ければと思います。

巡り旅のスケッチ(四国巡拝)47・・・阿波路(11番→10番)

 吉野川

 

 四国八十八か所の巡拝も、いよいよ佳境を迎えます。11番目の札所である藤井寺を終えた後は、四国の大河、吉野川を北へと渡り、阿波の国の北辺に連なる霊場へ。最後の10か寺が甍を並べる、四国巡礼発心の地の巡拝です。

 吉野川は、讃岐山地と四国山地に挟まれて、深い谷を削りながら、徳島市紀伊水道へと注ぎます。上流は、大歩危小歩危(おおぼけ・こぼけ)と言われるように、岩場の峡谷が険しい地形を築いていて、中流は山間に、幾つかの町を抱えます。下流に入ると、川幅は次第に広がり、四国の川とは思えないほど、雄大な流れに変わるのです。

 

 

 藤井寺

 12番焼山寺の参拝を終えてから、私たちは、一旦徳島市の市街地へ。ここで宿をとり、次の日に、再び藤井寺からの巡拝を続けます。

 藤井寺は、吉野川中流域に入る辺りの、吉野川市鴨嶋というところに位置します。イメージ的には、12番焼山寺の険しい山を、真っ直ぐに、北に下ったところです。

 私たちは、この日の朝、徳島市を出て、国道318号線をひたすら西へ。鴨嶋の南側の集落の山際にある、藤井寺を目指します。

 

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藤井寺の入口辺り。

 

 藤井寺へは、国道から離れた後で住宅地をすり抜けて、山裾の細い道を辿ります。その後は、小さな川沿いの堤防道を少し上流に向かっていくと、左手に、駐車場が現れます。この駐車場は、地域で管理されているのか、プレハブの管理小屋で料金を支払うシステムです。

 ちなみに、駐車場料金は、私たちが昨年(2020年)巡った時点では、88か所の札所の内、およそ半数近くが有料でした。そして、その内8割強が、納経所で駐車の申告をする方法です。*1

 

 藤井寺

 藤井寺(ふじいでら)の仁王門は、駐車場から川伝いに、小道を少し上ったところです。石段を少し上がって、仁王門を通り抜けると、かぎ型に参道が続きます。

 右側には、幾つかの建物が連なって、奥に進んで右に折れると、それほど広くはない境内が見渡せます。

 

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藤井寺の境内。正面が本堂。

 境内の正面奥、一段高くなった所にあるのが、本堂です。大師堂は、本堂に向かって右側で、霊場ではよくあるように、小じんまりとしたお堂です。

 藤井寺の大師堂は、内陣がオープンになっていて、黄金の飾りつけに囲まれた、優しい顔の弘法大師像を目にすることができました。

 

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※大師堂。

 

藤井寺のこと
 藤井寺は、”ふじいでら”と発音します。四国八十八か所で、”てら”と呼ぶのは、恐らく、藤井寺だけだと思います。他の幾つかの霊場で、訓読みの”寺”と読みそうなところは何か所かありますが、それでも、”じ”と読む場合がほとんどです。

 

 もうひとつ、先の焼山寺のところで触れたように、12番焼山寺と徒歩でつなぐ遍路道の入口が、藤井寺の境内にあるのです。本堂に向かって左側、境内裏の山の中へと向かって行く、細い坂道がその入口です。

 ここから焼山寺まで、歩いて8~9時間の行程は、「遍路ころがし」と呼ばれるように、厳しい修行の道でもあるのです。

 

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焼山寺に向かう遍路道の入口。

 

 切幡寺

 次の札所は、10番札所の切幡寺(きりはたじ)。藤井寺から北に向かって、阿波中央橋で吉野川を渡ります。この辺りの川幅は、もう随分広がっていて、まさしく大河の様相です。

 橋を越え、吉野川の北に広がる平地に入り、その後で、讃岐山地の麓に連なる、緩やかな斜面の丘へと向かいます。

 市場町切幡の集落に入った後、徳島自動車道路の高架下を潜り抜け、急坂を少し上って行くと、重厚な仁王門が現れます。駐車場は、門の傍をすり抜けた向う側に準備され、そこからは、歩いて境内へと向かいます。

 

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※左、仁王門。その奥が駐車場です。右、駐車場から境内へ続く坂道の参道。

 

 切幡寺

 石段と坂道が続く参道は、そこそこ幅の広い空間です。木々に覆われていながらも、日差しは十分降り注ぎます。しばらく真っ直ぐ進んだ先に、石像などを納めている、少し変わったお堂のような建物がありました。

 その先で、今度は、右方向に向きを変え、急勾配の石段を上ります。

 

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※境内に向かう参道の石段。

 

 切幡寺の境内は、ようやく石段を上り詰めたところです。正面に本堂があり、右方向が大師堂という配置です。

 境内は、山の斜面に切り拓かれたような場所ですが、狭隘という感覚はありません。本堂などのお堂を配する、メインの境内のさらに上にも、幾つかのお堂が建ち並び、境内の奥深さを感じます。

 

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※左、本堂。右、大師堂。

 山の傾斜を見上げれば、さらに石段を上ったところに、お堂の屋根が見える他、その上方には、多宝塔のような法輪の姿も見渡せます。

 切幡寺は、逆回りで巡礼する者にとっては、いわば、最後の山寺の様相です。言い換えれば、順周りの参拝では、山中に踏み込んでいく、初めての霊場となるのです。

 

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切幡寺の境内から山の斜面を望みます。

 

 法輪寺

 切幡寺の次の札所は9番目の法輪寺(ほうりんじ)。一転して、平地の集落へと向かいます。

*1:駐車場料金を徴収される札所は、年を重ねるごとに、増えてきているかも知れません。