旅素描~たびのスケッチ

気ままな旅のブログです。目に写る風景や歴史の跡を描ければと思います。

巡り旅のスケッチ(四国巡拝)43・・・阿波路(20番→19番)

 山から里へ

 

 阿波の国の霊場巡りは、海から山へ、山から里へと、変化に富んだ巡礼です。歩いて辿る遍路では、一つひとつ、深い峰を克服しなければなりません。その道中は、車で巡る私たちには、想像もつかない過酷さだと思います。

 空海の修行の地にほど近い、深い山の頂を降りたと思えば、次の札所も、再び険しい山の中。那珂川の谷間を越えて、次の霊場へと向かいます。

 

 

 鶴林寺

 太龍寺ロープウエイの麓駅から、那賀川の流れに沿って、しばらく北に向かいます。その後、大井という集落に入る直前で左に折れて、山の中に分け入るように進んで行くと、鶴峠と呼ばれる三差路の、峠のポイントに到達します。

 鶴林寺は、この峠から左手の細い山道をさらに進まなければなりません。この道は、舗装こそ整備されてはいるものの、崖地やヘアピンカーブの繰り返し。細心の注意が必要な坂道です。

 

 やがて、少しだけ道幅が開けた、行き止まりの場所に到着すると、そこが鶴林寺の駐車場。そこから先は、車では入ることができません。

 この駐車場は、尾根のようなところに設けられ、両側は深い谷へと落ち込むような地形です。ここで車を駐車して、尾根の先に続いている、細い道へと向かいます。

 

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※仁王門

 

 鶴林寺の仁王門

 尾根道を少し歩くと、その先に、仁王門が現れます。一般に、仁王門には金剛力士像が配置され、寺院を固く警護しているものですが、鶴林寺の仁王門は、少し趣が異なります。

 この仁王門、金剛力士像の裏側には、何とも愛らしい鶴の像が置かれています。金剛力士の役割を、この鶴も協力して担っている様子です。ただよく見ると、やはり、その目の形は少し険しくも感じます。鶴であっても、しっかりと鶴林寺をお護りしているとの意思表示なのかも知れません。

 

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※仁王門の鶴の像。

 

 鶴林寺

 鶴林寺(かくりんじ)の境内の中心は、仁王門を通り過ぎて、しばらく進んだところです。参道の両脇には、杉などの木々が連なります。

 境内の中央辺りは、T字路になっていて、本堂はこの位置から右上の方向です。真っすぐに延びる石段の向うには、本堂の大屋根が見えました。

 このT字路を曲がらずに、真っ直ぐ進むと、右側が大師堂。そして、その先が納経所という配置です。

 

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 ※本堂への石段。

 

 私たちは、先ず、本堂に向かいます。T字路から石段を上っていくと、正面には、見事というほど、左右対称の配置が整う本堂が現れます。特に、灯籠が左右に置かれ、本堂前の両翼に配置された一対の鶴の像など、格式高い趣です。

 鶴の像をよく見ると、左側は静止した状態ですが、右側は、翼を広げて声をあげている様子です。何か意味ありげだとは思うのですが、その理由は分かりません。神社でよく見る狛犬も、片側が口を閉じ、片側が口を開けるというような、いわゆる阿吽を表す姿などと同じ意味合いなのかも知れません。

 

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※本堂。

 

 本堂から右側の、もう一段高くなったところには、三重塔がそびえます。深い山の峰に建つこの塔こそ、前回の「巡り旅のスケッチ」で紹介した、太龍寺から望むことができる鶴林寺の建物です。

 遥か先の山中から見た建物を、目の当たりにして眺めると、少し感慨深さを感じます。

 

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※本堂の右上にある三重塔。

 

 本堂の参拝の後は、石段を下りた先にある、大師堂に向かいます。立派な構えの大師堂をお参りして、隣にある納経所で御朱印を頂きます。

 

 鶴林寺の縁起

 鶴林寺には、そこここに鶴の像があるように、鶴とは縁の深い霊場です。このことは寺院の縁起に由来していて、寺院名も同様に、縁起を根拠にしています。

 その内容は、かつてこの地を訪れた弘法大師が、地蔵菩薩を守る鶴に出合われた、という不思議な伝説に基づきます。悠久の年を越え、今も鶴が本尊を守る様子を窺うと、愛らしささえ感じます。

 

 

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※大師堂。

 立江寺

 鶴林寺の山を下って、再び鶴峠に戻ります。その先は、太龍寺方面とは反対の、北向きの道路を進み、勝浦町へと向かいます。

 山間を抜けた後、勝浦町で進路を変えて東進です。目指す町は、小松島市の立江町。その町が、19番札所である、立江寺(たつえじ)があるところです。

 小松島市の郊外にある立江町は、入り組んだ住宅地が広がるところです。県道は、比較的幅の広い道ですが、町中の道は狭い上、複雑に交差と湾曲を重ねます。

 立江寺からは、少しだけ離れてはいるものの、県道沿いの駐車場を利用するのが便利でしょう。

 

 立江寺

 車を停めて、少しだけ町中を歩いて行くと、立江寺の境内を囲む土壁状の瓦塀が現れます。塀の下には水路がはしり、霊場を取り巻いている様子です。

 やがて、石橋が見えてくると、その右手が境内への入口です。

 

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立江寺の入口と仁王門。

 

 立江寺は、久々に、町中にある霊場です。それでも、境内は堂々とした姿を保ち、本堂も荘厳です。

 仁王門から直進し、少し進んだ左側が本堂です。この本堂は、昭和49年(1974)に火災に見舞われ、その後再建されたということで、まだ、新しさも感じます。本堂の正面は、木の階段を上ったところ。一段高い位置での参拝です。

 

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※本堂。

 

 大師堂は、本堂の向かい側。仁王門から進んでくると、右側に位置します。本堂から大師堂を眺めると、右に多宝塔が望める他、幾つかのお堂の屋根が見渡せます。境内は、町中にあるとは思えないほど立派な構えを保っていて、地域の方に親しまれている様子です。

 

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※大師堂と多宝塔。

 

 恩山寺

 立江寺の次の札所は、18番恩山寺(おんざんじ)。立江寺と同様に、小松島市にあるもう一つの霊場へと向かいます。