最後の霊場
いよいよ、巡礼の旅は最終章を迎えます。西国三十三所の観音霊場を巡る旅。何故か最後は西国の地を離れ、美濃の国へと向かいます。
南紀熊野の那智山青岸渡寺から始まって、紀州・泉州を経て、奈良飛鳥に入った霊場巡り。巡礼の聖地である長谷寺を終えた後、平城山(ならやま)を越え、真っ直ぐに北上します。山科の南にある醍醐寺からは、山を越えて近江の地へ。その先は、逢坂の関から都に入り、東山と洛中の幾つかの古刹を巡ります。
後は一気に西方へ。京都西山、丹波、播磨と東に向かって進むのです。そして方向を転換し、日本海を望み見る丹後の地を訪れて、後は、若狭をかすめ近江琵琶湖に戻ります。風光明媚な近江の地。都に近く、歴史上様々な戦いや政争の舞台となりました。
そして最後に向かうのが、不破関(ふわのせき)を東に越えて美濃の国を北に進んだ山中です。西国三十三所の最後の札所は、美濃に広がる深い山が始まる辺りにありました。
※Google Mapsより。美濃の国の山中にある谷汲山華厳寺の位置を示します。
谷汲山華厳寺(たにぐみさんけごんじ)へ
西国三十三所の巡礼の最後の札所は、谷汲山華厳寺です。この古刹、一般に華厳寺と呼ぶよりも、谷汲山(たにぐみさん)の呼び方で親しまれているようです。
アクセスは、何通りかありますが、私たちは本巣町から国道157号線を利用して谷汲の地に入ります。電車で向かうには、大垣駅から樽見鉄道を乗り継いで谷汲口駅へ。そこからは、バスか徒歩になるようです。
華厳寺の門前町の西裏にある、大きな駐車場に車を停めて、門前を歩きます。
華厳寺の門前町は、なかなか見事な規模を誇っています。あいにくと、私たちが訪れたのは、まだ裏寒い2月のことでした。そのために、人もまばらで、お店などそのほとんどが休業中。
年末年始や桜の季節、あるいは、新緑から紅葉の時期までは、多くの参拝客が訪れるのだと思います。町並みは整備され、立派なお店や食堂が軒を並べて続いています。
※門前町の様子。
延々と真っ直ぐ続く門前を奥へ奥へと進みます。道は、少しずつ勾配を増す坂道で、境内が近づく空気を感じます。
しばらくすると、前方に、荘厳な仁王門が見えました。道は、門の中へと吸い込まれでもするかのように、その姿を隠しています。
※境内に近づきつつある門前の道。
仁王門
仁王門に近づくと、石段脇には、「西国三十三番満願霊場」と刻まれた、立派な石柱がありました。三十三所の霊場の最後の札所と言うことで、どこか威厳を感じます。
楼門風の仁王門の構えも勇壮で、神聖な最期の霊場への入口として、厳格な空気を放っています。
※勇壮な雰囲気の仁王門。
境内
仁王門を越えた先も、真っ直ぐに参道が続いています。石畳の参道は、石灯籠に挟まれて、杉の林の方向に消え入ります。
※仁王門を越えた先も真っすぐに参道が続きます。
本堂へ
参道の先にあったのは、手水舎や香炉を覆う施設です。そして、その先に僅かな距離の石段が続きます。
上方の林の手前に見えるのが、本堂なのでしょう。そこに続く参道沿いには、白地に墨で「南無十一面観世音菩薩」と記された、幾本もの大きな幟旗がありました。
※本堂へと続く参道。
本堂
本堂へと近づくと、お堂は木組みの足場が覆っています。私たちが訪れた時、丁度改修工事の真っ最中。満願の霊場の参拝ではあったのですが、少し残念な気持ちにもなりました。
ただ、本堂修理は必須です。末永くお堂の姿を維持するためには、こうした改修工事は欠かせません。また、何年かしてこの地を訪れ、美しくよみがえったお堂の中で参拝したいと思います。
※改修工事が行われていた本堂。
正面から見た本堂をご覧いただきたいと思います。私たちは、満願の参拝を終え、最後の御朱印をいただきました。
※本堂の正面の様子。
笈摺堂(おいずるどう)
本堂の参拝後、本堂に向かって左の奥にある、笈摺堂へと向かいます。このお堂、御朱印をいただいた白装束(これを笈摺と呼ぶようです)や菅笠、杖などの参拝時の道具類が数多く置かれています。
西国三十三所の巡礼を終え、このお堂の中に供えられたものでしょう。古い時代の巡礼写真なども掲げられ、遍路の方々の深い信心が感じられるお堂です。
※ 笈摺堂。
満願堂
最後のお参りとして向かうのは、 笈摺堂のさらに左の満願堂。山の斜面に築かれた数十段の石段を上り進んで、満願堂の境内へと進みます。
石段の両脇には、幾つもの石灯籠や石像が並んでいます。三十三所のすべての札所を巡り終えた人々を、温かく見守ってくれているような道筋です。
※満願堂へと続く石段。
石段を上り詰めると、正面に満願堂がありました。それほど大きくはないお堂ではありますが、満願成就を報告する、ありがたいお堂です。
お堂の両脇には、何故かタヌキなどの石像が数多く置かれています。石像などに見守られ、満願の報告をさせていただきました。
※満願堂。
駐車場へ
私たちは、谷汲山華厳寺での参拝を終え、帰路の途につきました。
私たちが車を停めた駐車場は、下のような状態です。かなり広い駐車場が整備され、参拝者を迎えています。華厳寺は、この写真の中央奥。よく見ると、両脇から山の尾根が迫りくる、谷のすき間に境内があるようです。
満願の最後の札所の景観をしみじみと見つめながら、美濃の地を去りました。
※谷汲山華厳寺の門前に設けられた大きな駐車場。