近江へ
西国三十三所の巡礼は、近江の国に戻ります。先の、第12番岩間寺、第13番石山寺、第14番三井寺は、京の都にほど近い近江南部にありました。そして、この先の3か寺は、近江北部と中央部に位置しています。順序では、まず、琵琶湖に浮かぶ竹生島(ちくぶしま)。その後、近江八幡の湖岸に迫る断崖地の古刹を巡り、安土(今は近江八幡市の一部)の地、近江の広範囲を俯瞰する繖山きぬがさやまへと続きます。
古くから、要衝の地であった近江の国。特に、琵琶湖湖上の交通は、盛んだったのだと思います。今では、湖上の交通は、観光以外にほとんど存在しませんが、往時には、各地の湖岸の湊から船で四方八方を繋いでいたのでしょう。
かつては、若狭の国から近江北部に足を進めた巡礼も、北琵琶湖へと到達し、今津、あるいは海津辺りの湊から、竹生島を目指すことになりました。今では、この今津とともに、湖東にある彦根の港と、やや北にある長浜から竹生島へと渡ります。
船に乗っての巡礼は、なかなか面倒に感じてしまいがち。33所の札所の中で、最終の谷汲山華厳寺を巡り終えても、竹生島の参拝だけはなかなか決心がつきません。いつの日か、訪れなければならないと思いつつ、先延ばしの状況でしたが、ようやく、今年の2月に重い腰を上げ、最後の札所の参拝を終えることができました。
※Google Mapsより。滋賀県の第30番・31番・32番札所。
彦根港
私たちが乗船地に選んだのは彦根港。彦根駅から2キロほど北東のところです。この港、有名な「鳥人間コンテスト」が開催される、松原水泳場のすぐ南隣に位置しています。
彦根港から竹生島へは、高速船で40分の船旅です。波の少ない鏡のような湖面を見ながら、西国三十三所の巡礼の第30番目の札所がある、湖上の島に向かいます。
料金など
竹生島への船便は、季節によって変わるため時刻など、事前の確認が必要です。運賃は、大人往復3200円。別途、上陸時に入島料600円が必要です。
高速船は、それほど大きく感じませんが、200人以上は乗れるでしょう。まだ冬の2月でも、かなりの人が受付されて、心配をしたものの余裕で乗船出来ました。
※オーミマリンのチケット売り場。
湖上へ
港から船に乗り込み、いざ出発。彦根港を後にして、雄大な琵琶湖の湖面に進みます。
※彦根港を出港する高速船。(実際の写真は到着風景です。)
清々しい青空が広がる中を、湖面の水をかき分けて、高速船は一路竹生島を目指します。
船から北東の方向は、湖岸との境界に集落や街並みが見られます。おそらく、下の写真の左側の湖岸の街は、豊臣秀吉の出世の地、長浜市になるのでしょう。中央の雲に隠れた独立峰は、日本武尊(やまとたけるのみこと)の伝説で有名な伊吹山。
湖面から一望できる近江北部の景色を見ながら、船の旅を楽しみます。
船の中の様子についても、ご覧いただければと思います。たくさんの観光客が乗り込んではいるものの、まだ余裕の船内です。このフロアの後ろから、外に出ることができる他、屋上のところには、そこそこの客席もありました。
※高速船の船内の様子。
竹生島(ちくぶしま)
およそ40分の船の旅。意外と早く、目的地の竹生島に到着です。船の窓の外には幾つかの瓦屋根の建物が見られます。
神聖な湖に浮かぶ神の島。ここはまた、西国三十三所の巡礼の地でもあるのです。
※竹生島に接近する高速船。
上陸
船は、竹生島に設けられた突堤に接岸し、乗船客を降ろします。上陸地から見上げると、島の斜面一体に、石垣や建物が広がります。
※上陸地のすぐ先にある島への入口辺り。
上陸後、左隅の通路から、お寺や神社などの境内へと向かいます。途中、何軒かの小さなお店が並んでいますが、私たちが訪れた時、1軒のみ営業中。簡単な食べ物やお土産などが売られています。
お店からさらに進むと、境内への入口です。そこで、入島料の600円を支払って、参道の石段に向かいます。
※通路を通って境内への入り口に向かいます。
参道
入口を通った直後、正面には険しい石段が続いています。見上げると、鳥居と共に「竹生島 宝厳寺(ほうごんじ)」と刻まれた門柱です。鳥居と寺院の共存はよく見かける姿ではあるものの、やっぱり奇妙に感じます。
ただ、この島には、宝厳寺と肩を寄せるようにして、都久夫須麻神社(つくぶすまじんじゃ・竹生島神社)が鎮座するため、当然のことでもあるのでしょう。
※急な石段を上る参道。
本堂(弁才天堂)
そこそこ長い石段を上り進むと、ようやく、少し開けた境内に行き着きます。そこには、勇壮な2層の屋根に覆われた、本堂がありました。この本堂、御本尊は弁才天(べんざいてん)で、巡礼の仏さまの観音像とは違います。
それでも、とりあえずここでお参りし、石段を上ったすぐ左手の納経所に立ち寄って、御朱印を頂きます。
実は、島を巡った先のところに観音堂があるために、観音様は、そこに祀られているようです。順序的には、納経を先に済ませて、その後で観音様の霊場の参拝となりました。
※本堂。