旅素描~たびのスケッチ

気ままな旅のブログです。目に写る風景や歴史の跡を描ければと思います。

巡り旅のスケッチ[西国三十三所]31・・・成相寺

 天橋立

 

 兵庫県の札所巡りを終えた後、今度は一気に丹後の地へと向かいます。丹後と言えば、日本三景景勝地天橋立がまず頭に浮かびます。大きくくびれた湾の出口を塞ぐような松原は、逆さに見れば、天に架かる橋のよう。股のぞきで有名な南の丘には、多くの観光客が訪れます。私自身も、これまで何度かこの地を訪れて、絶景を楽しんだものでした。

 そんな景勝地近くにある西国三十三所の次の札所は、第28番成相寺(なりあいじ)。霊場は、天橋立の北方向、股のぞきの丘からは、湾を挟んで正反対の場所にありました。地図を見ると、こちらの方向からも天橋立が望めそう。なるほど、絶景は南から見るのが王道ですが、反対の北側からもその姿を捉えることができるのです。成相寺の参拝を終えた後、一味違う景観を楽しむことができました。

 

※あいにくの天候でしたが、北側にある成相山から天橋立を見ることができました。

 

 駐車場から

 第28番成相寺へと向かうには、天橋立がある湾の奥、与謝野町の中心地から丹後半島に延びていく国道の道を進みます。そして、橋立の北の付け根の少し手前で、左手の方向へ。そこから、成相山へと向かう道に入ります。

 道は、ほどなく山の中に分け入って、蛇行しながら一気に高度を高めます。やがて、成相寺の駐車場。入り口には料金所があり、そこで、1人500円の入山料を支払います。(入山料を支払えば駐車場料金は無料だったような気がします。)

 

※第二駐車場から境内へと向かいます。

 

 参道

 駐車場から参道へと向かう道は、少し急な坂道です。辺りは木々が覆い、森の中へと踏み込んで行く感覚です。

 少し進むと、参道の石段が左上に続いています。そして、反対の右手には、撞(つ)かずの鐘と呼ばれている、鐘楼が見えました。この鐘は、鋳造の段階で乳飲み子の悲劇を呼んだ言い伝えがあり、供養のために撞くことを止めてしまったということです。

 

※撞かずの鐘がある鐘楼。

 

 本堂へ

 本堂のある境内へは、左手の石段を上ります。それほど急ではないことと、ある程度幅広の石段です。一段一段踏み締めて、ゆっくりと本堂に向かいます。

 

※本堂につながる石段。

 

 巡礼堂と一願一言地蔵(ひとことのじぞう)

 石段の中ほどに差し掛かったところには、えんじ色の小さなお堂が佇んで、その前には、由緒がありそうな、石のお地蔵さんがありました。

 お堂の名前は巡礼堂。このお堂には、西国三十三所の巡礼の各ご本尊が安置されているそうです。ここでお参りすることで、三十三所巡礼のご利益が叶えられるようですが、少し安易すぎるようにも思えます。いずれにしても、参拝者の心の持ちように関わってくるのでしょう。

 もう一つ、一願一言地蔵については、傍に置かれた説明板に、次のように書かれています。

 

 「このお地蔵さんは唯一願を一言でお願いすれば、どんな事でも必ず叶えて下さると伝えられる大変あらたかな地蔵さんです。・・・約六百二十年前に創られた大変古いお地蔵さんです。」

 

 と言うことで、心に込めた一つの願いを心に浮かべ、手を合わせたものでした。

 

※巡礼堂と一願一言地蔵。

 

 本堂

 お地蔵さんがおられる場所から直ぐ右上が本堂です。残りの石段を少し上って、本堂の参拝を行います。

 

成相寺の本堂。

 

 正面から堂内に足を向けると、頭上には、幾つもの灯籠が架かっています。厳粛な内陣の空間には、本尊の聖観世音菩薩のお姿もありました。

 第28番霊場の参拝をさせて頂き、御朱印を頂きます。

 

※本堂の様子。

 

 縁起

 成相寺の縁起については、お寺で頂いた資料には、次のように書かれています。

 

 「成相寺は、・・・真応上人の開基または聖徳太子とも伝えられています。元々は日本古来の山岳宗教の修験場で、日本全国にある五つの『聖の住む所』の一つとして信仰を集めてまいりました。成相寺が開かれた年代は不明な所が多いですが、いにしえより願いが叶う寺として全国に広まり、慶雲元年(704)に文武天皇勅願寺となりました。本尊は身代わり観音、美人観音として名高い聖観世音菩薩です。」

 

 私たちは、観音像やお地蔵さんが見守る中を、駐車場へと戻ります。

 

※帰路の境内の一角。

 

 パノラマ展望所

 冒頭でも触れた通り、成相寺が佇む山の上からは、天橋立が望めます。これまで、南側から見てきた景色を反対からも見てみたい、との思いを持って、展望所へと向かいます。

 お寺の駐車場から、およそ10分ほどのドライブで、展望所の駐車場に到着です。ここまでの道筋は、どうもお寺の所有のようで、お寺への入山料を支払えば誰でも展望所まで車を走らせることができるのです。

 

 私たちが訪れた日は、生憎の雨模様。遠方が霞んでいたのは残念ですが、何とか、天橋立の絶景を眼に納めることができました。

 

※パノラマ展望所から見下ろした天橋立。ここは、橋立の北側に位置しています。

 

 下段の境内

 展望所から帰路の途へ。一旦、先の駐車場の入口のところまで戻った時に、優雅な姿の五重の塔が見えました。

 地図を見ると、駐車場がある場所は、成相寺の境内の中腹辺り。本堂は、そこから上にありますが、駐車場から下の方にも境内があるようです。

 紅葉が映える庭園と五重の塔。もう一つの成相寺の景観を楽しむことができました。

 

※警官が素晴らしい庭園と五重の塔。