旅素描~たびのスケッチ

気ままな旅のブログです。目に写る風景や歴史の跡を描ければと思います。

歩き旅のスケッチ[奥州道中]2・・・駅前から白沢宿へ

 多様な顔の街

 

 栃木県の県庁所在地である宇都宮。市街地の中心は、駅前の辺りまで続きます。日光道中との分岐点である追分から、駅近くまで、宿場町、城下町、門前町の顔を持ちながら、この都市は発展してきたのです。そしてその先は、或いは、物流が盛んな商業の町だったのかも知れません。幾つかの川が流れ下り、豪商の住まいが残る道筋が、そのことを物語っているようにも思えます。

 幾つもの顔を持つ、宇都宮。駅前の通りを越えて、さらに北へと進んで行くと、一気に郊外の様相に変わります。車が往き交う幹線道路を歩き進んで、次の宿場の白沢宿を目指します。

 

 

 市街地の中の街道

 細い路地の商店街を抜け出ると、少し広い県道が、その行く手を阻みます。街道は、そこを左折し、一つ先の横断歩道を、右方向に渡ります。

 ジグザグに折れ曲がる、街の中の街道は、地図でよく確認しながら辿らなければなりません。

 

※県道に出た街道。この先の横断歩道をコンビニへと渡り、その脇の道を進んで行きます。

 

 県道から路地道に入ってしばらくすると、今度は、別の県道に出合います。この辺り、住宅はほとんど見かけることはありません。概ね、事務所などの建物が並んでいます。

 

※もう一つの県道に出た街道。

 

 駅前

 街道は、その県道を左手の方向へ。そして、間もなく、駅前の大通りと交差する大きな交差点に入ります。

 この交差点、右に向かうと、田川を越えて、宇都宮駅西口に至ります。そして、左に向かえば、二荒山神社(ふたあらやまじんじゃ)が右側に。その先は、本町などの市街地へと向かうのです。

 奥州道中の道筋は、交差点を横切って、真っ直ぐ北へと進みます。

 

※駅前大通りと交わる交差点。

 

 この先、道沿いは、一気に静かな街並みに変わります。人通りがあまり無い、寂しげな光景が目の前に広がります。

 不思議な感じのこの通り、かつては、街道沿いの賑わいの町だったのだと思います。今は、一筋東に設けられた、駅前を横切る道路が中心です。特に昼の間は、街道は、このような、静かな街に姿を変えているのでしょう。

 

※駅前大通りとの交差点を越えると、静かな街に変わります。

 

 田川

 落ち着いた、静かな道を進んで行くと、その先で、右方向にカーブを描き、田川に架かる、幸橋(旧上河原橋)を渡ります。

 この田川、宇都宮の東の区域を流下して、その先で、鬼怒川(きぬがわ)に注ぎます。おそらくかつては、水運を利用して、物流が発展していたのだと思います。橋の欄干のところには、かつての”市”の様子が描かれた、モニュメントがありました。

 

※田川を渡る幸橋。

 

 初市の風景

 そのモニュメント、「初市風景」と表示され、次のような説明書きが付されています。

 

 「宇都宮市場は、古くから上河原にありました。江戸時代、奥州大名の参勤交代の通行に支障があるとして、寛永11年(1635年)より、年1回の初市に限ってこの地で催すこととなり、現在に至っています。」

 

 橋の南の方向は、宇都宮の駅前です。田川を挟んで高層ビルが建ち並び、近代都市の街並みをつくっています。

 

※初市風景のモニュメント。

 

 県道

 幸橋を渡り切り、少しだけ道なりに進んで行くと、幹線道路の交差点に入ります。この交差点を直進し、斜め右にカーブを切るとJR宇都宮駅に至ります。

 交差点を横切る道は、道路標識の表示では、県道10号線とのことですが、地図では、県道125号線の記載です。何れにしても、この道が、白沢街道と呼ばれる道で、宇都宮の駅前を横断し、白沢の次の宿場の氏家(うじいえ)の辺りまでを繋いでいる道路です。

 私たちは、この交差点を左に折れて、県道沿いに、北に向かって進みます。

 

※幹線道路の交差点。左方向が奥州道中です。

 

 旧篠原家住宅

 上の写真で、交差点の北東角(中央やや右)をご覧いただければと思います。そこには、黒く塗られた漆喰の、歴史ある建物が残っています。

 この建物、旧篠原家住宅で、国の重要文化財にも指定されているようです。中に入ることもできますが、私たちは、表から、説明書きだけ読ませていただき、先を急ぐことになりました。

 

 「篠原家は奥州街道口の豪商で、江戸時代から第二次世界大戦までは醤油醸造業・肥料商を営んでいた。明治28年(1895)に建てられたこの店蔵は、店舗と住居部分を一体化した蔵造りになっている。」

 

 先ほどの、幸橋(上河原橋)の”市”と言い、この豪商の館と言い、この辺りは確かに、商業の町だった様子です。

 幾つもの顔を有する宇都宮。関東北部の中心地となる条件を、古くから備えていたのだと思います。

 

※旧篠原家住宅前。

 北へ

 街道は、この先、県道の歩道に沿って、一気に北へと向かいます。駅前の高層ビルは姿を消して、低層の事務所風の建物が、道伝いに並んでいます。

 この県道、車の通りは頻繁で、道幅も片側2車線という具合。広々とした幹線道路の歩道に沿って街道は続きます。

 

※今泉町交差点。

 

 新幹線

 県道をさらに進むと、右側から、東北新幹線の高架の軌道が近づきます。そして、その先で、街道は鋭角に高架橋と立体交差。新幹線の軌道を見上げて、真っ直ぐに、北に向けて進みます。

 

※新幹線の軌道と交差する直前の街道。

 

 郊外へ

 街道の沿線は、一気に郊外の様相に変わります。道は、新幹線と交差する手前辺りで、二方向に分岐したため、その後は、道幅も片側1車線に狭まります。

 

※郊外の様相に姿を変えた県道125号線。

 

 この先、次の宿場までは、まだもう少し距離がありそうです。淡々と、県道伝いに、初日の行程を刻みます。