旅素描~たびのスケッチ

気ままな旅のブログです。目に写る風景や歴史の跡を描ければと思います。

歩き旅のスケッチ[甲州道中]28・・・白野宿から初狩2宿へ

 笹子川

 

 街道は、山あいを流れ下る、笹子川に沿いながら、東へと向かいます。この笹子川、少し下ると、都留市(つるし)から流れ込む、桂川に吸収されて、大月の町を東進します。やがて、桂川相模川と名前が変わり、相模湖を経由して、神奈川県の中央部を南進し、湘南の浜辺へと向かうのです。

 甲州道中と笹子川。陸と水の2つの流れは、相模湖の辺りまで、寄り添うように続きます。

 

 

 白野宿(しらのじゅく)

 白野宿は、笹子の里の最後の宿場。直前の、阿弥陀海道の宿場町から、およそ2Kmのところです。

 国道から左にそれた旧道沿いの辺りから、宿場町は始まります。白野の宿場は、西側は、ごく普通の集落です。落ち着いた雰囲気の、民家が並ぶ沿線です。

 

※白野宿の様子。

 

 集落を歩いていると、「甲州街道白野宿」の標識がありました。ただ、辺りには、宿場町の面影を感じるところはありません。

 白野宿は、本陣、脇本陣、問屋が各1軒で、旅籠は4軒だったということです。規模的には、小さいながらも、直前の2つの宿場、黒野田と阿弥陀海道の宿場町とは、協力関係にありました。

 笹子の里に設けられた、3つの宿場を合わせると、相当な規模を誇っていたのだと思います。

 

※白野宿の中央辺り。

 

 東へ

 宿場町を東に進むと、次第に、歴史を感じる建物が現れます。江戸時代のものとは思えませんが、それでも、何となく、宿場町の雰囲気が漂います。

 広い間口と大きな窓、赤茶色のトタン屋根の庇など、同じような建物が数軒並んだ光景は、旅情を誘う趣を放っています。

 

※歴史的な建物が続く白野の宿場。

 

 国道へ

 国道から弓なりに迂回している白野宿の街道は、宿場の先で、元の国道に戻ります。そこは、山が迫り、細長い谷間の道筋です。

 

※国道20号線に戻って来た街道。

 

 谷間の道を抜けた後、少し空が開けます。国道は、相変らず、大きな車が往き来して、物流の幹線であることを、実感するような沿線です。

 途中、笹子川の橋を越える直前には、船石の石碑です。親鸞上人にまつわる碑のようですが、詳しくは分かりません。

 

※国道に架かる船石橋と船石の碑。

 

 初狩

 街道は、その先で、次の集落を迎えます。道は、石垣で補強された、切通しのようなところです。

 丘状の地形のところを上り下って、中初狩(なかはつかり)の集落に入ります。

 

※中初狩の集落の入口付近。

 

 初狩宿

 この先は、かつて、中初狩の宿場町が置かれていたところです。前の宿場の白野宿から、わずかに、2.5Kmのところです。この辺り、今は、往時の姿はありません。国道の沿線に、住宅などが軒を連ねる、普通の集落の光景です。

 私たちは、わずかな幅の歩道に沿って、さらに東へと向かいます。

 

※中初狩の宿場の西側辺り。

 

 集落を進んで行くと、旅籠の名残のような、木造の特色ある建物が現れます。この辺りが、宿場町の中心なのか、何となく、奥ゆかしさも感じます。

 中初狩の宿場には、本陣、脇本陣、問屋が各1軒設けられ、旅籠の数は25軒という規模でした。隣接する、下初狩の宿場町と、一体的に運営されていた様子です。

 

※中初狩の宿場町の様子。写真は本陣跡のようです。

 

 芭蕉の句碑

 しばらくすると、左手に、「甲州街道初狩宿」の表示板。そして、その隣には、立派な、芭蕉の句碑がありました。

 

    山賊(やまがつ)の おとがいとづる 葎(むぐら)かな

 

 と、刻まれたこの句碑は、野ざらし紀行にゆかりがある句のようです。以前にも、少し触れたとおり(笹子峠を前にして、駒飼宿を過ぎたところの芭蕉の句碑に関する記事)、芭蕉の、野ざらし紀行の帰路については、不明な点が多いそう。

 甲州に立ち寄ったのは、事実だということですが、確かに、初狩の地を通られたのか。真相は分かりません。甲州の他の場所にも、同様の句碑があるようで、ある種の、歴史的な、ロマンの香りを感じます。

 ちなみに、この句の意味は、”夏草が覆う山道では、たとえ山人であっても、口を閉じて歩かないと草の穂が口に入ってしまいそう”というような情景を詠んだものだということです。

 

※中初狩宿の表示板と芭蕉の句碑。

 

 初狩

 中初狩を通過して、しばらく進むと、下初狩に入ります。そして、その先が、初狩駅前交差点。ここを右に向かったところには、JR中央本線初狩駅があるようです。

 

※左、中初狩から下初狩に入ります。右、初狩駅前交差点。

 

 初狩宿

 交差点から直進すると、下初狩の宿場町になるようです。この辺りにも、木造の、趣ある建物が何軒か見られます。ただ、全体として国道の沿線で、往時の面影を、それほど感じられるところではありません。

 下初狩の宿場には、本陣、脇本陣が各2軒、問屋が1軒設けられ、旅籠は12軒あったということです。

 先の、中初狩との間隔は、1キロの近さです。中・下の、初狩2宿は、協力し合って運営されていたのです。

 

 花咲へ

 国道を少し進むと、街道は、斜め右方向の旧道に入ります。緩やかな坂道は、依然として、初狩の集落です。街道は、この先で、宿場町に別れを告げて、山際の尾根の裾へと向かいます。

 

※下初狩宿を終えて、旧道に向かいます。

 

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