旅素描~たびのスケッチ

気ままな旅のブログです。目に写る風景や歴史の跡を描ければと思います。

歩き旅のスケッチ[甲州道中]32・・・上鳥沢宿へ

 桃太郎伝説

 

 街道は、猿橋を越え、鳥沢に向かいます。そして、その先は、深い山の中にある、犬目宿。・・・よく見ると、”猿”、”鳥”、”犬”の、3つの文字が並んでいます。不思議な地名と思いつつ、それほど気にすることはなく、これらの宿場を通り過ぎたものでした。

 ところが、後日、大月市の観光資料を見ていると、その裏面には、「大月桃太郎伝説」と題する一文がありました。そこには、「あの昔話のヒーロー”桃太郎”が活躍した場所は、実は大月だった・・・ことをご存じですか??」との問いかけが。

 コラムを読むと、川に落ちた大きな桃が、下流の鶴島(上野原市)に住む老夫婦に拾われて、桃太郎が誕生します。大月駅裏側の、岩殿山に住んでいた赤鬼を退治するため、桃太郎は、犬目で犬を、鳥沢で鳥(キジ)を、そして猿橋で猿を家来にし、鬼退治に向かったというのです。

 このようなお話は、全国各地にあるのでしょうが、地名と結びついた伝説は、歴史のロマンを感じます。

 

 

 芭蕉の句碑

 名勝の猿橋を渡った先には、時代を感じる、芭蕉の句碑がありました。

 

   うき我を さひしからせよ 閑古鳥

 

 憂いをもつ私を、寂しがらせておくれ、カッコウよ。というような意味らしいこの俳句。その”こころ”は、私などには、良く分からない境地です。ともかく、芭蕉は、この猿橋の渓谷で、カッコウの鳴き声を耳にして、この句を詠んだのかも知れません。

 句碑の左は石段です。街道はその先で、桂川の左岸の道につながります。

 

芭蕉の句碑と石段。

 渓谷の左岸道

 石段を上り切ると、そこは、静かな集落です。渓谷の上とあって、高台のようなところです。緩やかに上り下って、国道へと近づきます。

 

猿橋の渓谷の左岸道路。

 

 やがて街道は、国道と交叉して、国道右手の下り道に入ります。急な細い下り道。一段低いところにある、集落へと進みます。

 

※国道を渡り、細い旧道に入ります。

 国道と旧道

 街道は、その後、国道と旧道を交互に繰り返すようにして、少しずつ、東へと向かいます。山並みは、いつまでも続いていますが、空も開けて、爽やかな景色が広がります。

 桂川の水の流れは、街道のすぐ傍です。山々から、水を集めて、次第にその存在感を強めています。

 

※左、国道との合流点。日本橋から89.9Kmのポイントのようです。右、旧道を進む街道。

 

 街道は、その先で、しばらくの間、国道の歩道を辿ります。途中には、桂川の左岸の崖地に張り付いた、高架のような道もあり、複雑な地形のところです。

 

桂川左岸の崖地を通過する街道。

 

 鳥沢へ

 やがて街道は、国道から斜め左に分かれている、旧道に入ります。旧道の入口には、「横吹団地入口」と表示された、バス停留所がありました*1

 旧道は、しばらくの間、緩やかな上り坂が続きます。左にある高台には、何棟かのアパートがあるようで、そこが、横吹団地なのかも知れません。

 その先は、下り坂。大月市の横吹きの集落を進みます。

 

※横吹団地入口のバス停を左方向の旧道へ。右、横吹の集落内の街道。

 

 上鳥沢宿

 旧道は、横吹の小さな沢を越えた後、山際の道をすり抜けて、国道に向かいます。やがて、幅の狭い坂道を下っていくと、国道と合流です。街道は、この辺りから、鳥沢の町に入ります。上鳥沢の宿場町は、もう間近かなのだと思います。

 

※国道と合流した鳥沢の街道。

 

 国道を東に向かうと、整然とした町並みが広がります。切妻屋根が軒を連ねる光景は、どことなく趣があり、上鳥沢の宿場町に足を踏み入れた雰囲気です。直前の猿橋宿から、およそ4Kmの道のりを経て、次の宿場に着きました。

 鳥沢は、上鳥沢と下鳥沢の2つの宿場町に分かれています。西から進む私たちは、まず、上鳥沢へ。今は、国道の道筋でありながら、旅籠のような、古くからの木造の建物も見られます。

 

※上鳥沢宿の様子。旅籠のような建物も見られます。

 上鳥沢の宿場町には、本陣1,脇本陣2、問屋が1軒が設置され、旅籠の数は13軒だったということです。

 この先の下鳥沢とは、協力し合って、宿場町の運営が行われていた様子です。

 国道をしばらく進むと、右側に、歴史を感じる何棟かの建物がありました。旅籠の名残のようですが、今もお住まいされているのか、窓にはサッシがはまっています。

 

※上鳥沢宿の様子。旅籠のような建物が並んでいます。国道の道路標識は、鳥沢駅を示すもの。

 鳥沢駅

 街道は、この先で、JR中央本線鳥沢駅に近づきます。

 2日半の日程で、猿橋から相模湖辺りを目指す旅。このまま進むと、次に、駅に近づく場所は、15Km先の上野原。そして、その上野原の街までは、深い山に入ります。

 私たちの体力では、この日は、この先の行程を克服する自信はありません。かと言って、猿橋駅から4~5Kmで、終えてしまうということは、勿体ない限りです。ここは、少し機転をきかせて、変則の行程へ。鳥沢駅から電車に乗って、2駅先の上野原駅に向かいます。

 

※JR中央本線鳥沢駅

 

 この日の残りの行程は、上野原の宿場から、その先の街道を歩きつないで、上鳥沢から6つ先の宿場町、関野宿のすぐ近くにある、藤野駅まで進むことにしたのです。

 

 上鳥沢宿→下鳥沢宿→犬目宿→野田尻宿→鶴川宿→上野原宿→関野宿
   ↓→ーー------------------↑

 

 ただ、次回の歩き旅のブログについては、街道の流れ従って、翌日歩いた続きのルートを描いていきたいと思います。

 

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*1:富士急山麓バスの停留所です。