山里へ
甲州道中の難所といえば、既に通った笹子峠と、この先で、東京の高尾に向かう小仏峠が有名です。そして、この2か所に次ぐ難所の道が、ここからの先の道中です。
上鳥沢の宿場から、犬目の宿場に向かう街道は、深い山の中を辿る道。極端な峠道ではないものの、長く続く坂道を上らなければなりません。
山中に静かに佇む、山里の村を渡りつないで、難所の道を進みます。
下鳥沢宿へ
昨日は変則の行程で、鳥沢と上野原の間の道を飛ばしたために、鳥沢駅から先の道は、翌日の行程となりました。
ここでは、日付けは変わっても、前回の続きの道筋を、描きたいと思います。
翌日、鳥沢駅に降り立って、すぐ傍の国道に戻ります。
街道は、上鳥沢の宿場の東。ここから、すぐ隣りの宿場町、下鳥沢へと向かいます。
※鳥沢駅から国道に戻った辺り。上鳥沢宿の東端にあたります。
一里塚
街道をしばらく歩くと、左側の道端に、一里塚跡の標柱がありました。ここは、上鳥沢の一里塚があった場所。今では、住宅の片隅に置かれた木製の標識だけが、密かにその位置を示しています。
※上鳥沢の一里塚跡。
下鳥沢宿
一里塚を後にして、国道を東に向かって進みます。やがて、街道の右側の道沿いに、1階の庇(ひさし)がせり出した建物が、軒を連ねて並ぶ姿が見えました。
宿場を支えた、旅籠の名残のようにも見えますが、おそらくは、もう少し新しい時代の建物だと思います。それでも、この光景は、ありし日の宿場町の町並みを、彷彿とさせるような姿です。
※趣ある建物が並ぶ下鳥沢の宿場町。
下鳥沢の宿場町は、上鳥沢から1Kmのところです。本陣1軒、脇本陣2軒、問屋1軒が設けられ、旅籠の数は11軒。直前の上鳥沢の宿場とは、同程度の規模であり、隣り合わせの2つの宿場は、互いに協力し合って、運営されていたということです。
趣ある町並みを眺めながら、緩やかに弧を描いて延びて行く、国道の道を進みます。
※下鳥沢の宿場を通る街道。
山中へ
下鳥沢の宿場が終わると、国道は、右方向へと進路を変えて、桂川の流れに近づきます。
一方で、街道は、左方向に舵を切り、甲州の東部に広がる山の中へと向かいます。
※街道は、左方向の坂道へと向かいます。
県道
国道から離れた街道は、急な坂道へと姿を変えて、旅人を迎えます。この道は、県道になるようで、ここから、上野原の街までの間、深い山に点在する、幾つかの集落をつないでいます。
一方で、国道は、桂川に沿いながら、上野原へと向かいます。そして、2つの道の間には、中央自動車道路です。渋滞で有名な、談合坂(だんごうざか)も、この間に位置しています。
※急坂を進む街道。
続く坂道
街道は、中央自動車道路の高架下を潜り抜け、その先で、旧道に入ります。県道は、少し真っ直ぐ進んだ先で、左に進んでいきますが、旧道は、途中で右に折れ、さらに左に屈曲し、正面の集落の中に入ります。
※旧道との別れ際。街道は、右→左に折れ、正面の集落に入ります。
集落内は、石垣で整地された、小さな農地や住宅などが並んでいます。街道は、その中を急勾配で駆け上がり、その先で、先ほどの県道と出合います。
※石垣で整地された集落内へと向かいます。
県道に入った街道は、しばらくの間、この道に沿って進みます。依然として、斜面には、集落が広がりますが、やがて、民家は疎らとなって、一旦、視界が開けます。
※集落の中を通る県道。
里山の集落
視界が開けた辺りでは、道は、やや平坦となり、その先で道幅は広がります。左には、新しい住宅が何軒か並んでいます。
県道は、緩やかに勾配をつけながら、真っ直ぐに森の中へと向かいます。この辺りは、少し前まで、農地として利用されていたのでしょう。何となく、山里の心地よい空気を感じます。
※視界が開けた山の中の街道。
富士山
道は次第に勾配を増し、弧を描きつつ、急な斜面を上ります。途中で、休憩のため足を止めると、背後には、雪を抱いた富士山が見えました。峰々のさらに向こうに、白く輝く秀峰は、その雄姿を誇っています。
※甲州の峰々の奥から姿を見せた富士山。
続く山里
街道は、坂道を上り続けて、一段と標高を高めます。県道は、つづら折れの状態で、ヘアピンカーブを重ねます。
途中、街道は、県道から少し離れて、ショートカットの旧道へ。民家の際に残された、狭い古道を進みます。
※ヘアピンカーブのところを左手の旧道へと向かいます。
旧道は、山の斜面に沿うように設けられ、右からは、木の枝がその道を覆います。旧道の入り口辺りは、舗装された状態ですが、やがて、土の道に変わります。足場には、枯れ葉が敷かれた場所もあり、ゆっくりと、注意して進まなければなりません。
※県道をショートカットするような旧道。
旧道から背後を見ると、ここからも、富士山の姿が望めます。山里の民家の方は、四季折々の富士山を、いつの日も眺めながら、生活されているのでしょう。
何となく、うらやましくも感じながら、再び旧道の坂道を上ります。
※旧道から見た富士山。
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