旅素描~たびのスケッチ

気ままな旅のブログです。目に写る風景や歴史の跡を描ければと思います。

歩き旅のスケッチ[甲州道中]27・・・笹子の3宿

 笹子の町

 

 笹子峠を下った先には、3つの宿場が並んでいます。それらの宿場町の名称は、黒野田宿、阿弥陀海道宿、白野宿の3宿です。肩を寄せ合う3宿は、互いに協力し合いながら、旅人をもてなしてきたのです。

 峠越えは、それこそ険しい道ですが、難所の後には、旅人を静かに迎える宿場町が控えています。

 この先は、笹子川に沿いながら、甲州の東部に広がる山地の中を、この地域の中心地、大月の町を目指します。

 

 

 黒野田宿

 国道を下っていくと、その先で、右に大きくカーブを描き、笹子川に架けれた、小さな橋を渡ります。

 この辺りから、次第に、住宅の密度が増してきて、いよいよ、黒野田の宿場町に入って来た様子です。

 道沿いは、普通の民家が並ぶほか、ところどころに、趣のある建物なども見られます。ただ、全体として、宿場町の面影を、それほど強く感じるところはありません。

 

黒野田宿の様子。

 

 黒野田宿は、本陣、脇本陣、問屋が各1軒で、旅籠は14軒あったということです。笹子の里の3宿では、最も大きな規模でした。

 

 笹子駅

 宿場町の道筋を進んで行くと、右上方にJR中央本線の、笹子駅のプラットホームが見えました。駅自体は、プラットホームの先の方。少し下って、笹子駅に向かいます。

 私たちは、笹子駅で、この日の行程は一区切り。12Kmほどの峠道を歩き終え、宿泊地へと戻ります。

 

笹子駅の駅舎。

 

 笹子駅の駅前には、少し広い空き地があって、その一角に大きな石碑が置かれています。「笹子隧道記念碑」と刻まれたこの石碑、国鉄(現在のJR)中央本線の笹子トンネルの完成を記念した石碑です。

 明治29年に着工し、35年に完成したということで、大変な、難工事だった様子です。

 

※鉄道の笹子隧道完成記念碑。

 阿弥陀海道宿

 翌日再び、この笹子駅に舞い戻り、街道歩きを続けます。

 国道20号線は、駅からすぐのところです。国道に入ったところには、「甲州街道阿弥陀海道宿」の標識がありました。

 この宿場、少し珍しい名称です。地名の由来は、集落のはずれに建てられた、阿弥陀堂だと言うのですが、どうして”海道”なのでしょう。近くに流れる笹子川が、この先、桂川相模川と名前を変えて、相模湾に注ぐため、海につながる阿弥陀堂という意味なのか。機会があれば、調べてみたいと思います。

 

阿弥陀海道宿の表示板。

 

 阿弥陀海道の宿場町は、直前の、黒野田宿とは目と鼻の先。それでも、本陣、脇本陣、問屋が各1軒設けられ、旅籠も4軒ありました。一般には、小さな規模の宿場町。黒野田宿と2つ合わせて、ひとつの宿場であったとしても、違和感はありません。

 それでも、別々に位置づけられている背景には、集落の歴史的ないきさつがあったのだと思います。

 国道沿いの宿場町、今は、その面影を、見ることはできません。

 

※国道沿いの阿弥陀海道宿。

 白野宿(しらのじゅく)へ

 阿弥陀海道の宿場を過ぎて、次の宿場町、白野宿に向かいます。笹子にある、3つ目の宿場町は、少し間隔が開いています。

 街道は、阿弥陀海道を過ぎた先で、少しだけ、左手の旧道に入ります。そして、笹子川に架けられた、古い橋を越えた先で、再び国道に合流です。

 

※旧笹子川橋。

 

 国道に戻った後は、しばらく、歩道上を進みます。右には、笹子川が流れていて、左右から、緑深い山並が迫ります。

 やがて、左上方に向かう旧道が現れますが、今は、その先は行き止まり。JR中央本線の軌道敷きに出てしまい、それ以上は進めません。私たちは、一旦そこから引き返し、国道へと左折です。

 

※左、国道に戻った街道。右、旧道との分岐となる地点。左の旧道はその先は行き止まりです。

 

 吉久保

 国道に戻った後は、少しだけ直進し、直ぐに左の方向へ。正面には、JR中央本線の軌道が通り、その下を潜り抜けると、吉久保の集落が見えました。

 

※国道を離れて吉久保の集落に向かいます。

 

 吉久保の集落は、宿場町とも思えるような、趣あるところです。ところどころに、由緒ある建物なども残っています。

 

※吉久保の集落。

 

 親鸞上人

 集落内の街道には、「親鸞上人念仏供養塚」と記された、案内板や、多数の石仏が置かれた場所がありました。

 ここには、親鸞上人にまつわる話があるようですが、このお話は、伝説の域。ただ、新潟の上越に流されていた上人が、常陸の国へと向かう時、ここを通られたということも、あり得ない話ではありません。*1

 

親鸞上人念仏供養塚。

 

 吉久保から白野へ

 街道は、吉久保の集落内を、緩やかに弧を描くようにして、東へと向かいます。木々や花で彩られた家並みが、軒を連ねて続いています。

 

※集落内を通過する街道。

 

 吉久保の集落を過ぎた後、街道は、もう一度、JR中央本線の軌道下をすり抜けます。そして、その後間もなく、国道と合流です。

 

中央本線の軌道下を通ります。

 白野宿

 国道を少し歩くと、街道は、再び、左前方の旧道に入ります。そこは、民家が並ぶ集落で、かつての白野宿の町並みです。

 阿弥陀海道の宿場から、およそ2キロ。私たちは、笹子の里の最後の宿場町に入ります。

 

※左方向が白野宿への入口。右は国道20号線。

 

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*1:親鸞上人は、新潟から信州を通り、群馬へと向かわれたとの話もあり、良く分かりません。