旅素描~たびのスケッチ

気ままな旅のブログです。目に写る風景や歴史の跡を描ければと思います。

歩き旅のスケッチ[甲州道中]26・・・笹子の里へ

 笹子

 

 笹子峠を越えた後、街道は、下り坂が続きます。途中に残る旧道の近くには、”矢立の杉”の名所とともに、杉良太郎の歌が流れる、石碑などが置かれています。

 この先は、甲州東部の広大な山地の中につくられた、笹子川の谷間に沿って下る道。向かう先は、笹子の里の宿場です。そこには、江戸側から峠に挑む、3つの宿場が控えています。

 

 

 県道の下り道

 笹子峠を越えた後、街道は県道に合流し、しばらく、舗装された下り道を進みます。

 幾つかの、ヘアピンカーブを過ぎた先で、「矢立の杉」の道標です。街道は、この方向に進むのですが、道標があるにもかかわらず、その入り口が分かりません。標識の指示方向に向かっても、そこは、急峻な崖地です。とても、下りられる道ではありません。

 私たちは、仕方なく、県道伝いに下ることになりました。(後に、下の写真を確認したら、正面のこんもりした土壁の右側に、上り道があるようです。もしかして、そこを辿ると、旧道に入れるのかも知れません。)

 

※矢立の杉に向かう旧道への道標。

 

 矢立の杉(やたてのすぎ)

 道標から、県道を下っていくと、やがて、矢立の杉への入口です。そこには、立派な説明板が置かれていて、通る人の目を引きつけます。私たちは、大きな看板の左側から、矢立の杉の方向へ。

 本来なら、先にあった道標から、旧道を辿り下って、矢立の杉に向かうのですが、先にお伝えした通り、私たちは、この場から、旧道に入ることになりました。

  

※矢立の杉の入口に置かれた案内板など。

 

 矢立の杉のいわれについては、大月市観光協会発行の、リーフレットの記事を引用し、紹介したいと思います。

 

 「矢立の杉は樹齢千年を超すといわれますから、この地に根をおろしたのは、はるか昔の平安時代のことです。戦国時代、笹子峠を通って合戦に赴く武士が必勝を祈願して、この杉に矢を射ったことがその名の由来と言われています。」

 

※ひと際大きな大木が矢立の杉。

 後に、甲州道中が整備されると、多くの旅人が、矢立の杉近くの街道を往来します。そして、この杉は、旅人たちの憩いの場として、愛されてきたというのです。

 また、近年は、

 

 「昭和三十五年には・・・新笹子隧道が開通したことにより、街道の交通量は激減しましたが、矢立の杉は杉良太郎さんの歌にも唄われ、現在は新緑の頃や紅葉の頃にたくさんの人が訪れています。」

 

 この杉の近くには、杉良太郎の歌の碑も設置され、仕掛けによって、その歌が、山あいの谷に響きます。

 

※矢立の杉の歌碑。

 矢立の杉は、幹の下部は空洞ですが、それでも、しっかりと大きな体を支えています。そんなところに魅せられたのが、杉良太郎。彼は、この杉の木を題材に、”矢立の杉”という歌を、自ら作詞・作曲したのです。

 どのような歌のか、全く知らない私たち。この時初めて、谷に流れるこの曲を知りました。

 

https://www.youtube.com/watch?v=r6V7wdPQMjY

 

※矢立の杉の幹の下部。

 里へ

 街道は、矢立の杉のすぐ傍を通りながら、谷間に沿った旧道を進みます。途中には、谷を渡る木橋など、自然に近い道を辿って、少しずつ、笹子の里に近づきます。

 

木橋を渡る旧道。

 

 その後、街道は、再び県道と合流です。そして、地図を注意深く確認しながら、途中から左に下りる、旧道を探します。ところが、いつまで経っても、旧道の入口はありません。注意しながら歩いたものの、どうも、入口を見失ってしまった様子です。

 結局、そのまま、県道を歩き下って、笹子の里、新田の集落に向かうことになりました。

 

 大月市

 笹子の里は、山梨県大月市に属しています。大月は、結構広い面積ですが、大半が山地で占められ、多くの人は、川伝いの狭い低地に暮らしています。

 甲州道中の道筋は、人々が暮らす集落を、縫うように通り抜け、甲州の東の端、上野原へと向かうのです。

 

 大月市の中心は、JR中央本線の、大月駅周辺です。東西は、信州と東京を結んでいる、主要道路や鉄道が通過する、交通の要衝地。南に向かうと、都留市富士五湖周辺につながります。

 深い山に囲まれて、ひっそりと佇む大月市。街道や山々は、不思議な魅力を放っています。

 

※新田の集落。甲州街道の標識が置かれています。

 国道

 国道の街道を下っていくと、次第に空が開けてきて、新田の集落に入ります。途中、左に延びる細い道の角地には、甲州道中の旧道へと向かう標識がありました。先に、旧道への入口を見落とさなければ、谷伝いに、この場所に出てきたのだと思います。残念な気持ちになって、標識前を通ります。

 街道は、集落を過ぎた後、笹子トンネルを越えてきた、国道20号線と合流です。これまでの県道とは一転して、整備された国道筋へと入ります。

 

※国道20号線に合流する街道。

 

 国道に入った街道は、緩やかな下り道に変わります。この日の朝、9時頃に、甲斐大和駅から歩き始めた峠越え。黒野田の集落に到着したのは、午後1時30分のことでした。

 昼食をどこかで買おうと、歩き始めたこの日の旅。途中の道にお店は無く、空腹で街道歩きを続ける羽目になりました。ようやく、里に辿り着き、地図でお店を探します。

 幸いにも、国道沿いのすぐ先に、”やまびこ”という食堂があるようです。私たちは、オアシスを求めるように、そのお店へと、一目散に向かいます。

 

※国道20号線沿線の黒野田の集落。

 

 宿場町へ

 ”やまびこ”の食堂は、かなり古い店構え。それでも、ボリュームある定食を頂いて、一息つくことができました。*1

 この先、目指すところは、笹子の里の黒野田の宿場です。食堂がある集落も黒野田ですが、宿場町はまだもう少し先。あとひと踏ん張りの行程を進みます。

 

黒野田宿へと向かう街道。

 

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*1:この記事を書きながら、地図で確認しましたが、どうも、今は閉店されているみたいです。