旅素描~たびのスケッチ

気ままな旅のブログです。目に写る風景や歴史の跡を描ければと思います。

歩き旅のスケッチ[甲州道中]25・・・笹子峠

 峠越え

 

 甲州道中の笹子峠がある場所は、県道の笹子隧道の真上です。わずか、150mほどのトンネルは、赤茶けたブロックが積み上げられて、洋風の意匠なども施された入口で、どことなく、歴史の香りを感じます。

 車線は、上下に分かれているようですが、とても対向できそうもないぐらいの道幅しかありません。今では、ここを通る車などは、あまり多くはない様子です。それよりも、文化財的な魅力を感じるこのトンネル。昭和の初めの頃の建設で、近年*1登録文化財に指定されたということです。

 私たちは、隧道を通らずに、古くからの街道の、峠道を辿ります。

 

 

 峠道

 相変わらず、山道の街道を進みます。心細くなるような、山の中の道ですが、ところどころに、「甲州街道峠道」の案内標識が置かれているため、道を誤る心配はありません。早く峠に出ないものかと、気を急きながら、先の道を進みます。

 

※案内標識を頼りに山道を進みます。

 

 道は次第に緩やかになり、杉の林をすり抜けます。この辺り、何となく、森の出口が近づいているような、明るさを感じるところです。

 

※杉林をすり抜けて、峠を目指します。

 

 甘酒茶屋

 山道が一旦終わり、県道へと抜け出た地点には、「史跡 甘酒茶屋跡」と記された標柱がありました。かつて、この辺りには、甘酒を商う茶屋があったということです。峠の茶屋のような、一息つける、憩いの場所だったのだと思います。

 

※県道に抜け出たところ。甘酒茶屋跡の標柱です。

 笹子隧道西口

 県道に合流した街道から、右手を見ると、笹子隧道の西側の入口が望めます。こちら側の入口は、それほどの装飾は無いようです。それでも、山中に静かに隠れたトンネルは、それなりに、奥ゆかしさを感じます。

 

※県道と笹子隧道。

 笹子峠

 街道は、県道を横断し、向かいの山の斜面に入ります。ここから先は、最後の峠道の難関です。隧道の延長は、わずかに200メートルほどの距離ですが、どのような峠の道が控えているのか、気を引き締めて、山の上へと進みます。

 

※県道を渡って向かいの山道に入ります。

 山の斜面を上っていくと、少し幅広の道となり、隧道の入口上部に近づきます。そこからは、左右に道が分かれていて、どちらに向かうか、迷ってしまうようなところです。

 資料を見ると、左の方に進むのが正解で、右に進めば、隧道の右下に戻ってしまうと書かれています。資料に従い、左手の山道に向かいます。

 左に向かった少し先には、赤い鳥居と小さな祠がありました。そこは、笹子峠天神社。その脇を通過して、右上へと上ります。

 

笹子峠天神社の鳥居と峠道。

 笹子峠
 道幅がわずかしかない山道を、蛇行を重ねて上っていくと、ついに、峠の上に出てきます。それほど広くはない空間ですが、ここが笹子峠の様子です。

 

笹子峠

 笹子峠は、山の尾根のような地形をしていて、平らなところはわずかです。峠の前後の街道も、どちらかと言えば、山道です。往時の様子はどうだったのか。この道からは、想像もできません。

 

笹子峠の標識。

 

 下り道

 峠からの下り道も、厳しい急勾配の坂道です。滑らないよう、注意して、一歩一歩下ります。急な斜面を、一段下に達したところに、右後方から一つの道が合流します。そして、そこには、笹子峠の標識も。

 もしかして、こちらが本当の街道で、私たちが通った道は、それこそ、峠の道だったのかも知れません。

 

笹子峠からの下り道。

 合流後の街道は、やや、勾配が緩やかとなり、道幅も広がります。相変わらず、右に左に蛇行しながら、少しずつ、山の下へと向かいます。

 

 笹子隧道東口

 やがて、県道が視野に入ると、坂道は、さらに勾配が緩くなり、やがて、その県道につながります。振り向くと、右後ろには、隧道の東側の入口です。こちら側の入口は、趣ある形をしていて、歴史の香りを感じます。

 

 街道との合流点には、笹子隧道に関しての、立派な説明板。その内容を、少し紹介したいと思います。

 

※笹子隧道の東入口と隧道の説明板。

 

 「四方を山に囲まれた山梨にとって昔から重要な交通ルートであった甲州街道。その甲州街道にあって一番の難所といわれたのが笹子峠です。」

 「この難所に開削された笹子隧道は、昭和十一年から十三年まで国庫補助を入れて二八万六千七百円の工費を投入し昭和十三年三月に完成しました。坑門の左右にある洋風建築的な二本並びの柱形装飾が大変特徴的であります。」

 「昭和三十三年、新笹子トンネルが開通するまでこの隧道は、山梨、遠くは長野辺りから東京までの幹線道路として甲州街道の交通を支えていました。南大菩薩嶺を越える大月市笹子町追分(旧笹子村)より大和村日影(旧日影村)までの笹子峠越えは、距離十数キロメートル、幅員が狭くつづら折りカーブも大変多いためまさしく難所で、遥か東の東京はまだまだ遠い都だったことでしょう。」

 「昭和前期の大役を終え静寂の中にあるこの隧道は、平成十一年、登録有形文化財に指定されました。」


 県道の下り道

 街道は、この先しばらく、県道を辿りながら、下りの坂道を進みます。目指すところは、笹子の町の3宿です。黒野田宿、阿弥陀海道宿、そして、白野(しらの)の宿場町。峠の東の麓には、協力し合う3つの宿場が寄り添います。

 

※下り坂となった県道。

 

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*1:平成11年。