旅素描~たびのスケッチ

気ままな旅のブログです。目に写る風景や歴史の跡を描ければと思います。

歩き旅のスケッチ[山の辺の道]4・・・鹿野園辺り

 古道の魅力

 

 古代の道が、本当にどのようなルートを辿っていたのか、おそらく今では、よく分からないのだと思います。特に、山の辺の道の北コース、奈良公園から数キロは、整備された公園内と、住宅が連なる中を縫うように進んでいます。むしろ、本来の道筋が、分からないのが当然とも言えるでしょう。

 それでも、白毫寺を過ぎてから八阪神社辺りの道は、少し趣が異なります。この間は、奈良盆地の東側、笠置山地の山裾を絶妙につないでいるようなルートです。ところどころに史跡も残り、古代の道を彷彿とさせるような道筋です。

 

 

 旧道

 白毫寺を過ぎた後、農地の中の旧道を進んだ先に、児童福祉関連の立派な施設がありました。道は、その建物を右に見て、緩やかな坂道を上ります。

 

※児童福祉関連の施設。病院も併設されているようです。

 

 舗装された旧道を少し進むと、再び農地が広がります。そして、農道の分かれ道には、「円照寺」の方向を示す案内表示。山の辺の道の表記もあって、貴重な道しるべになりました。

 この先も、このような案内板が頼りです。手にした地図は、通過するポイントと、概ねの距離の確認のみ。ルートの細部は、現地の表示を頼るのが最適です。

 

※「円照寺」への道案内。

 

 集落の道

 農地の中を進んで行くと、その先は、小さな谷へと下る道。雑木林をすり抜けて、小さな橋を渡ります。

 

※小さな谷へと下る道。

 

 丘のすき間を流れる川は、窪んだ地形をつくっています。その川沿いのところには、何軒かの民家もありました。この先、道は再び上り坂。なだらかな丘陵地の斜面にも、民家が並び、古くからの集落の様相です。

 

※谷を越え、丘に連なる民家の前を通ります。

 

 緩やかな上り道を進んで行くと、小高い丘が進路を遮り、道は2方向に分かれます。ここはまた、山の辺の道の表示柱が貴重な地点。進路は、道なりの方向とは反対の、鋭角に左に折れる坂道です。

 

※表示柱を頼りに、鋭角に左方向へと進みます。

 

 八阪神社

 坂道を上った先で、今度は右に折れ、丘の縁を周るような道筋を進みます。途中、右手を見ると、山裾に張り付いた、緩やかな農地の斜面が広がります。

 この辺り、鹿野園(ろくやおん)と呼ばれる地域で、奈良独特の古(いにしえ)の響きを感じます。道端に建てられた説明板にも、幾つかの史跡の紹介がありました。

 道沿いは、古くから人々の営みが続けられてきたのでしょう。そして、様々な歴史や文化が育まれてきたのだと思います。

 

※鹿野園の風景と史跡の案内板。

 山裾の細い道を辿り進むと、今度は、八阪神社の鳥居です。こちらも歴史がありそうな神社ですが、私たちは、鳥居前で柏手を打ち、先の道へと向かいます。

 ちなみに、ここの神社は、「阪」の字を使っています。有名な京都祇園は、「八坂神社」と書きますが、その違いは分かりません。

 

八阪神社

 集落と溜池

 やがて、道は下り坂に変わります。そして、その先で、少し大きな集落に入ります。この集落も、鹿野園(ろくやおん)。新旧が入り混じる、民家のすき間をすり抜けます。

 

※鹿野園の集落に入る道。

 

 道は、その先で、小さなため池に向かいます。このため池の堤の道が山の辺の道になるようです。堤の入口辺りには、次のような万葉歌碑がありました。

 

   かるたかの たかまとやまを たかみかも

    いてくるつきの おそくてるらむ  大伴坂上郎女

 

 意味は良く分かりませんが、高円山の上から出る月は、山が高いがゆえに照りだすのが遅い、とでも解釈するのでしょうか。言い換えれば、大成するのは大器晩成型の人?何とも勝手な解釈で、申し訳ない思いです。

 

※ため池のところにあった万葉歌碑。堤の道が山の辺の道です。

 

 古道

 溜池の堤を辿って行くと、道は、雑木林に入ります。そして、その先は竹林です。わずかな幅のこの道は、確かに、古代の雰囲気を感じます。

 史跡と史跡を結びながら、山に沿って、ぐねぐねと続いています。

 

※古代の道を感じさせる道筋。

 

 この先しばらくは、竹藪の中を進みます。田畑として、開拓されずに残ったような里山ですが、このような山の恵みも、人々の生活には欠かせない、重要な要素となっているのでしょう。

 

※竹藪を進む山の辺の道。

 

 舗装道

 やがて道は、整備された林の中に入ります。その先で、少しずつ空が開けて、ひとつの丘を横切ってきたような感覚です。

 

※整然とした林の中を通ります。

 林の中を進んだ道は、一旦、舗装道路に入ります。右手に迫る小さな丘に沿うように、弧を描きながら進みます。

 

※一旦舗装道路に出た山の辺の道。

 

 ところどころに民家が見られる舗装道。その先には、立派な集合住宅などもありました。この住宅、どうも、自衛隊の官舎のような感じです。あまり活用されていないのか、空き室が目立っていたように思います。

 住宅前の角地に置かれた案内板には、次のポイントの円照寺まで、2.3キロの表示です。この辺り、案内表示が置かれているため、道を間違うことはありません。私たちは、矢印に従って、右方向に進みます。

 

※集合住宅の前を通ります。

 

 舗装道を少し進むと、一般の住宅脇に、簡易な山の辺の道の案内表示がありました。舗装された道の隣の、住宅地傍の細い道。少し分かりにくい道ですが、そこが、山の辺の道になるようです。

 不安を覚えながらも、表示通りに細道に入ります。

 

※住宅地脇の細道に入る山の辺の道。