栃木県との県境にある東北最初の自治体は、福島県の白河市。陸奥(みちのく)への入口として、古くから重要な場所でした。古代から中世には、白河の関所が設けられ、厳しく、往来が取り締まられていたところです。江戸時代には、五街道のひとつである奥州道中が整備され、その起終点の町として、大変な賑わいだったと思います。
白河は、また、城下町でもありました。今も、JR東北本線の白河駅の北側には、ほっそりとした華奢な姿の天守閣が望めます。幕末から維新にかけて、旧幕府側と新政府とが争った、戊辰戦争の戦地にもなった白河の町。街道が通過する、白坂の宿場においても、その影響は少なからず及んでいたようです。
本陣跡
宿場町を歩いていると、広い敷地の住宅の片隅に、「本陣跡 河内屋 白坂家」と表示された案内板がありました。
そこには、白坂家の説明として、「元白河結城家の家臣、佐藤と称し市内大和田(白河市の北部)に住す。」と書かれています。白坂家は、その後の白河城主に命じられ、大和田からこの地に移り住み、本陣など、宿場の重要な役割を任ぜられたということです。
※本陣跡。
ところで、冒頭でも触れたように、明治維新で揺れ動いた国内の動向は、旧幕府を擁護する会津などの勢力と、薩長土肥を中心とする新政府軍が対立し、激しい戦いを繰り広げることになりました。
白虎隊で有名な、会津若松での戦いは、良く知られたものですが、この戦いに派生した、幾多のつばぜり合いは、各地で発生していた様子です。ここ、白坂の宿場でも、重要人物が襲撃を受けるなど、何度も血が流されたということが、地元の資料に書かれています。
さらに、本陣をあずかっていた白坂家16代、白坂市之助という方は、会津兵に間違えられて、官軍に惨殺されたということで、痛ましい限りです。(この内容は、上の写真の案内板にも書かれています。)
宿場の外れ
街道は、この後、右方向に湾曲する、坂道に入ります。この坂の途中には、「白坂宿 北入口 木戸跡」の表示です。白坂の宿場町は、この辺りまで。ここからは、奥州道中最後の宿場、白河宿を目指します。
※白坂宿の北入口。
丘伝い
坂道の上り下りと、大きな湾曲を繰り返し、丘陵地の中を進みます。道は、整備された国道294号線。白坂と白河とを、最短距離で結んでいる道路なのだと思います。
※丘陵地の中を通る国道伝いに歩きます。
街道は、まだしばらく、木々が覆う山道を通ります。それほど険しくはないものの、ひと山越えて、さらに奥の地へと向かうような道筋です。
※山の中を通って白河へと向かう街道。
時に、山の尾根を越えながら、少しずつ、北に向かって進んで行くと、前方に集落があり、さらにその向こうには、なだらかな裾野を広げた、美しいひとつの峰が見えました。
まだ、頂の付近には、白い雪が残っています。見とれるようなこの峰は、いったい、どこの山でしょう。もしかして、磐梯山?とも思えるような位置関係。今更ながら、東北の地に達したのだと、感慨を深めたものでした。
※丘陵地を抜けた先に見える集落と磐梯山?。
皮籠(かわご)
丘陵地を下った先は、皮籠と呼ばれる集落です。交差点の手前に置かれた、道路標識が示すように、ここを左に向かえば、JR東北本線の白坂駅。この先、鉄道は、白坂駅→新白河駅→白河駅、の順番に北の地に向かいます。
※皮籠の集落の入口。
交差点を過ぎた後、皮籠の集落に入ります。道沿いには、立派な屋敷が軒を連ね、前庭の植え込みは、美しい容姿を誇っています。
※皮籠の集落を通る街道。
丘の町
皮籠の集落を通り過ぎると、再び、緩やかな坂道に変わります。道は、良く整備され、空も大きく開けたような感じです。
道は、丘陵地へと上るのですが、今度は山の中ではありません。次第に、新しく開発された、近代的な街の様子に変わります。道路標識のところにも、「新白河ライフパーク」や「新白河ビジネスパーク」の道案内がありました。
※新しく開発されたような開発地を通ります。
市街地へ
開発された丘陵地の交差点を横切ると、もう一度、木々が茂る丘の中を進みます。その先は、住宅地が広がる下り道。そして少しの間、街道は、右方向の旧道に入ります。
この辺り、市街地の周辺の、里山のような雰囲気で、小さな池なども見られます。
※再び丘陵地を通る街道。
老久保(おいくぼ)
旧道を抜け出ると、再び、国道の道に戻ります。そして、少し大きな交差点。この辺りには、郊外型のお店が並び、車の出入りも頻繁で、活気がありそうなところです。
※老久保の交差点辺りの様子。
交差点を通り過ぎると、幾つかの店舗なども並んでいますが、次第に農地が広がり、その先で、静かな住宅地に入ります。
街道の前面には緑の帯が先を横切り、道は、その中に吸い込まれるようにして、真っ直ぐに続いています。
※老久保の先線。
白河宿へ
白河の宿場までは、あともう一息というところ。この丘を越えた先には、古くからの白河の町があるはずです。
いよいよ、奥州道中の歩き旅も終着点に近づきます。