旅素描~たびのスケッチ

気ままな旅のブログです。目に写る風景や歴史の跡を描ければと思います。

歩き旅のスケッチ[奥州道中]16・・・芦野宿へ

 芦野温泉の宿

 

 下野(しもつけ)の国の大田原と、陸奥(みちのく)の白河との、ほぼ中間にあたるところが芦野宿。そして、この宿場町の直前に、この日の宿となる、芦野温泉ホテルが位置しています。

 このホテルがある場所は、街道沿いではないものの、それほど離れた場所ではありません。街道歩きの中継宿には、もってこいの立地です。私たちは、ここで一夜を明かし、一気に、奥州道中の終着点、白河の宿場を目指します。(芦野温泉のことについては、このブログの最後で紹介したいと思います。)

 

※芦野温泉ホテルの入口。

 

 豊岡

 豊岡の交差点を過ぎた先には、丘陵地の窪んだ場所に、豊岡の集落が連なります。それほど広くはない、谷間のような地形に沿って、街道と集落が寄り添います。

 しばらくして、民家が途切れた辺りには、右方向の丘へと向かう分岐道がありました。その、分岐のところに掲げられた看板には、「芭蕉温泉ランド」と書かれています。

 どのような施設なのかは分かりませんが、芭蕉とは直接関係はないのでしょう。おそらく、芭蕉曾良は、那須高原の温泉地を巡った後は、直線的に、この先の芦野の宿場辺りに辿り着いたのだと思います。

 

※豊岡の集落を出て、「芭蕉温泉ランド」の看板を見かけます。

 

 那須町

 街道は、丘陵地を北に向かって進みます。民家も途切れ、起伏を乗り越え歩いていると、やがて、「那須町」の表示板。いよいよ、那須塩原市とも別れを告げて、街道が通過する、下野の国の最北端、那須町に入ります。

 

那須町に入る街道。

 

 台地上に開墾された農地を見ながら、あるいは、まだ残る雑木林をくぐり抜け、那須の地の街道を歩きます。

 

那須の台地を進む街道。

 

 黒川

 しばらくすると、これまでの県道が大きく左に迂回する中、直進する旧道が現れます。小さな、集落を通り抜ける旧道は、一気に、谷に向かって下る道。その先は、黒川の川の流れが街道を妨げます。

 

※黒川に向かって下る旧道。

 

 かつては、黒川を直進して川を渡ったようですが、今は、やや左側に架けられた、黒川橋を通ります。

 街道は、その先で右方向。ただ、この日の宿泊場所である、芦野温泉の看板は左向きを示しています。車では、左の方が便利なのだと思うのですが、街道は、道なりの右方向に進みます。

 

※黒川橋を渡る街道。

 

 峠道

 黒川で、芦野温泉の看板を確認し、宿泊地まで、もうそれほど距離はないものと、最後の力を注ぎます。

 それでも、この先は、急勾配の上り坂。なかなか先に進むことができません。途中、県道をそれ、左に向かう旧道へ。この道は、ショートカットに違いないと、期待を込めて歩きます。

  

※左、急坂を左にそれる旧道。右、旧道の道中。

 

 心持ちショートカットの旧道は、左から迫ってくる丘陵の山裾を辿ります。右には、わずかなスペースに、切り拓かれた農地です。

 そしてほどなく、旧道は、先ほどの県道に戻ります。

 県道に戻った街道は、今度は、下り坂。旧道の途中の辺りで、峠を越えたような感覚です。

 

 夫婦石の一里塚

 少し、坂道を下って行くと、道路の左右に、それと分かる小さな塚が見えました。右側の塚の前には、「夫婦石の一里塚」の表示柱。昔からの塚だとすれば、道路整備に影響されずに、よく残ったものだと思います。

 

※夫婦石の一里塚。左右に塚が残っています。

 芦野へ

 一里塚を過ぎた後、街道は、急勾配の下り道に変わります。視線の先には、芦野の宿場でしょうか。小さな集落なども見られます。

 

※急勾配に下る県道。

 

 急勾配の県道が、右に大きく迂回する中、左手に、旧道が現れます。街道は、この、旧道の方向へ。

 木々が茂る山際の道筋を、ゆったりと下ります。

 

※県道からそれ、旧道に入ります。

 

 しばらくすると、街道の左手に、丘に向かう取付道路が現れます。道端の角地には、「中ノ川」の表示と共に、「芦野温泉600m」と記された、案内板がありました。

 街道は、このまま真っ直ぐ下る道。私たちは、ここを左に折れて、この日の宿泊地、芦野温泉へと向かいます。

 

※街道が直進する中、芦野温泉は、この角を左へと進みます。

 

 芦野温泉

 この日の朝、大田原の宿場を発ってから、およそ21キロの行程を歩いた私たち。体力は限界に近づいて、足に力が入りません。

 最後の600mの坂道を、何と遠くに感じたものか。ようやく、ホテルに辿り着き、この日の疲れを癒します。

 

www.asinoonsen.co.jp

 

 芦野温泉のこと

 さて、ここからは、芦野温泉のことについて、少し触れておきたいと思います。

 名前の通り、温泉施設も併設しているこのホテル。温泉は、とりわけ特徴的で、お勧めできる施設です。温泉の建物には、スーパー銭湯と同様の、畳敷きの食堂や、くつろげるスペースなども備わります。浴室は、2つの大きな浴槽があり、何れも、アルカリ性単純泉でありながら、その濃度が異なります。特に手前側の浴槽は、ツルツルの肌感覚が味わえる、絶好の泉質だったと思います。

 そして、大浴場から通路を通って奥に向かうと、そこは、薬草湯のスペースです。ただ、そこにあったのは、普通の薬湯ではありません。何やら、数多くの薬草や刺激のある野菜などを抽出した、強烈な印象の液体が満ちた浴槽です。これは、期待以上かと、匂いと湯色に魅せられて薬草湯につかります。

 疲れた身体を癒すのは、やっぱり温泉です。ましてや、薬草湯。これで疲れも一掃かと、肩まで湯に浸かります。

 ・・・そして、しばしの間、くつろぎの気分に浸っていると、妙な感覚が下半身に伝わります。何なのか、この感覚は・・・と思う間もなく、やがて、股間の辺りに刺激が走り、耐えきれない激痛が襲います。効能は抜群には違いないこの薬湯も、長々と浸ることはできません。早々に湯舟を離れ、冷水を、前後ろに放ちかけたものでした。

 

 ここまで強烈な薬草湯には、これまで、巡り会ったことがありません。耐えきれない湯ではあったものの、どこか魅力も感じます。通常の温泉と、この薬草湯のお陰をもって、私たちは、翌日には、奥州道中の終着点、白河の宿場まで、一気に歩き通すことができました。

 読者の方々が、この地方に行かれるときは、ぜひとも、芦野温泉に立ち寄って頂きたいと思います。

 

※芦野温泉ホテル。