堤の並木道
上徳次郎の宿場の先は、再び、並木が植わる堤の歩道を歩きます。本来の街道は、堤の下を走っている、国道119号線であったはず。かつては、左右の並木に覆われて、その中を人や馬が往来していたのでしょう。
今は、その道は、自動車が勢いよく通り過ぎ、歩く者を寄せ付ける隙間はありません。本来の街道を、堤の下に見下ろしながら、どこまでも続く並木道を歩きます。
上徳次郎へ
智賀都(ちかつ)神社を通り過ぎると、一旦、集落は途切れます。道沿いは、福祉施設や工場などの建物が並んでいます。
農地も見受けられますが、街道には山並みが迫りつつあり、その範囲は限定的。次第に、先細る平地の中へと進みます。
※上徳次郎に向かう街道。
街道はその先で、わずかの区間、並木道に入ります。その後、一旦並木が途絶えると、谷状の、やや低い地形に向かって下ります。
小さな川を越えた後、街道は、今度は勾配のある上り坂。左右から山が迫り、その隙間に残る空間に、街道と集落が細長く続いています。
※谷状のくぼ地へと進み、その後坂道を上ります。
上徳次郎宿(かみとくじらじゅく)
街道が、坂道にさしかかった辺りから、次の集落が始まります。この集落こそ、3つある徳次郎(とくじら)の宿場の最後のひとつ、かつての、上徳次郎の宿場です。
坂道に張り付いた住宅は、新しい家ばかり。往時の宿場町の面影はありません。私たちは、急坂を踏みしめて、集落の中心部へと向かいます。
※上徳次郎の入り口辺り。
集落を進んで行くと、木造の民家などもありますが、往時の町並みは見られません。ただ、緩やかな道の勾配や、弓なりに弧を描く道筋からだけ、街道の名残りを感じます。
集落の後半に進んでいくと、「徳次郎上町屋台庫」と記された札が掛かる、新しい建物がありました。この中に、屋台が納められているようで、説明書きには、「黒漆塗り、錺金具(かざりかなぐ)付きの彩色彫刻屋台である」と書かれています。
※屋台庫と説明板。
屋台庫前には、屋台に関する説明書と、上徳次郎宿の説明板。説明板には、次のような説明書きがありました。
「3宿の中では北端に位置し、最も早くから開けた宿で、元和三年(1617)、徳川家康公の神霊を日光山に鎮座する際、人馬の継ぎ立てを行い、以後宿駅となった。」
また、宿の長さは352m、家数は30軒ほど。宿内には、本陣1軒、脇本陣2件が設けられていた、との記載もありました。
3か所あった徳次郎宿、旅籠の数は、合計72軒あったということです。下徳次郎から上徳次郎まで、およそ3キロに及ぶ宿場町。中と上とは、ある程度離れているとは言うものの、結構大きな宿場町の連合体が形成されていた様子です。
※上徳次郎宿の北の端、一里塚のバス停辺り。
街道は、やがて、上徳次郎の宿場町を離れます。そして、その先の道端に、一里塚のバス停留所。この日、宇都宮の南外れの郊外から、20キロ近くを歩き進んだ私たち。ここで、一区切りすることになりました。
翌日
翌日は、再び、一里塚のバス停に舞い戻り、ここから歩き旅をつなげます。
最初の交差点のところには、バス停の名前にもあるように、一里塚がありました。ここは、石那田の一里塚。日本橋から30里目にあたります。
塚の上には、珍しく、石柱が置かれています。少し変わった形態ですが、塚自体は、しっかりと残っています。
※石那田の一里塚。
堤の道
一里塚を過ぎた後、街道は、並木が植わる堤の歩道を歩きます。この堤、山の傾斜を利用して、設けられた格好で、左には、山の斜面が迫っています。
※車道から一段上がった堤の街道。
街道からは、時折、右側に眺望が開けます。一時、低い山が迫ってはいましたが、この辺り、山は後退し、丘陵地の空が広がります。
※眺望が開けた堤。
丘陵地
並木道が一旦途切れたところには、猪倉街道入口の交差点。左の山も後退し、清々しい丘陵地の中を進みます。
街道の道端には、りんごの販売所も見られます。気持ち良い空気を肌に感じながら、その先の緩やかな傾斜の道へと向かいます。
※猪倉街道入口交差点を横切る街道。
再び堤道
緩やかな坂道を進んで行くと、街道は、再び、堤の道に入ります。ところどころに、バス停が設けられ、その部分だけ、堤から車道に下りる接続道が設けられているという状態です。
※並木が植わる堤の歩道。
街道からの景観は、次々と変化して、丘陵地の奥深くへと吸い込まれる感覚です。遠方の山並みも、再び近づいてきたようにも感じます。
広大な敷地の農家を羨みながら、或いは、美しい木々の緑を楽しみながら、さらに先へと向かいます。
※次々と景色が変化する街道。
名残の紅葉
並木の道は、ところどころで、見事な紅葉の木を挟んでいます。11月の中旬を迎えたこの季節。この辺りの紅葉は、まだ、名残の鮮やかさを保っています。
※名残の紅葉を楽しみながら歩きます。
街道の右下は、あいかわらず、国道119号線が走っています。そして、左手は、農地が連なり、ところどころで、農家の屋敷が見られます。
空の青さと木々の緑の色彩は、心地よい安らぎの空間をつくっています。
※農家や農地を眺めながらの街道歩き。
幾つかの集落
街道は、やがて、木々がまばらな状態に。そして、民家などの建物が目立つ地域に入ります。
歩道際のバス停留所は、「松本」の表示です。この辺りは、松本と呼ばれる地域になるのだと思います。
※松本のバス停留所。
その先を少し進むと、今度は、標識に、「上小池町」と書かれています。次から次に、名前が変わる、幾つかの集落を渡りつないで、さらに奥へと向かいます。
※上小池町の道を進みます。