旅素描~たびのスケッチ

気ままな旅のブログです。目に写る風景や歴史の跡を描ければと思います。

歩き旅のスケッチ[東海道]119・・・総集編5(街道筋)

 街道の名残

 

 東海道は、今から150年以上も前の道。この間に、鉄道や自動車などが普及して、道の様子は、大きく、その姿を変えました。それでも、21世紀に至っても、いまだに、往時の道が残るところは、少なくはありません。

 開発の手が、及ばなかった集落や、新たな道路に飲み込まれなかったところでは、街道の面影が、今も色濃く残っています。

 一方で、車が往き交う道であっても、路肩に残る松の並木が、往時の様子を今に伝える街道筋も、何か所かありました。

 今回は、江戸時代の街道が偲ばれる、幾つかの道筋を紹介したいと思います。

 

 

 集落の街道

 緩やかに弧を描いた道沿いに木造の民家が並ぶ道筋や、幾つかの集落を縫うよう延びて行く街道は、往時の姿を彷彿とさせる光景です。このような情緒ある街道筋は、不思議な魅力を放っています。

 

 【近江路】

 近江路のうち、草津追分辺りから、湖南市の三雲に至るまで、何か所かの、魅力ある街道筋が残っています。その中でも、特に印象深かった道筋は、栗東市の手原から伊勢落(いせおち)の集落の間です。

 この区間には、数か所の集落が街道沿いに連なって、往時のままとも思えるような道幅で、街道筋が流れています。

 

※左、栗東市手原の醤油の老舗前。右、手原から六地蔵の集落に向かう街道。

 

 この間の道筋には、ところどころに、由緒ある、老舗の建物なども残っています。街道の北側には、近江富士と称される、三上山も佇んで、歴史が香る道筋です。

 

湖南市夏見辺りの集落。

 【倉沢】

 名勝の薩埵峠(さったとうげ)を東に下ると、倉沢の集落に入ります。ここは、興津宿と由比宿の間に位置する、間の宿(あいのしゅく)。正式な宿場ではないものの、そこそこの規模を誇った、休憩地だったところです。

 峠を下る坂道が、終わろうとする辺りから、視界の先の町並を見下ろすと、甍の帯が流れるように続いています。

 かつては、旅人達を迎え入れる、茶店などがあったのでしょう。この倉沢の町、今も、街道の面影を色濃く残す道筋です。

 

※ 薩埵峠を東に下った先にある倉沢の集落。

 

 幅の狭い街道筋には、落ち着いた、木造家屋が連なります。ところどころに、左から、斜面を下る沢があり、そこに架かる小さな橋を越えながら、東へと向かうのです。

 途中には、本陣跡や名主の館など、由緒ある建物なども見られます。倉沢は、印象に残る街道筋の一つです。

 

※左、擬木様の橋を幾つも越えます。右、名主の館。

 

 松並木

 東海道の街道筋は、松並木を抜きにしては語れません。かつては、延々と松の木が植えられていたようですが、その多くは、姿を消しました。

 それでも、今に残る、東海道の松並木。見事な景色を振り返りたいと思います。

 

 【池鯉鮒】

 最初は、愛知県の池鯉鮒(ちりゅう)宿の東に延びる松並木。そこそこの規模を誇っています。この先、岡崎宿に至るまで、何か所かの並木道が残っています。

 

※池鯉鮒の松並木。

 

 【藤川】

 次は、藤川の松並木。岡崎の東隣の宿場です。並木道は、国道1号線から右にそれる旧道沿いに続いています。この素晴らしい並木道を辿って行くと、藤川の宿場町に入ります。宿場の中心辺りには、名鉄名古屋本線の、藤川駅があるために、電車でも気軽に立ち寄ることが可能です。

 

 

 【御油

 続いて、御油の並木を紹介します。藤川を出て、赤坂の宿場を越えると、わずか1.5Kmで御油(ごゆ)宿です。松並木は、赤坂と御油の間をつなぐ道。ここにも、素晴らしい姿を残す松の並木が残っています。

 

御油の松並木。

 

 【舞阪】

 浜松市の舞坂の松並木も、よくその姿を残しています。JR東海道本線の、舞阪駅の近くにあって、舞阪の宿場からは、東のはずれにあたります。

 

※舞阪の松並木。

 【三島、初音がケ原】

 静岡県三島市の、初音ケ原の松並木は、国道1号線伝いに続きます。箱根の坂の始まりで、延々と延びていく、箱根の道の入口です。

 この並木道のスケールは、延長や、松の木の樹形など、相当な規模と言えるでしょう。日本が誇る箱根の山の、玄関口にふさわしい、壮大な重量感を誇っています。

 

※初音ケ原の並木道。

 【大磯】

 神奈川県大磯の松並木も、国道1号線伝いに続きます。丁度、下り車道の両脇に並木が並ぶ配置です。その昔、下り車線の道幅で、街道が延びていたのかも知れません。往時の姿が偲ばれる道筋です。

 

※大磯の松並木。

 

 【茅ヶ崎】 

 最後に紹介する松の並木は、神奈川県茅ケ崎です。茅ケ崎の一里塚交差点辺りから、そこそこの距離で続いています。

 この松並木、ところどころで、歯抜け状態ではあるものの、開発が進んだ中でも、良く残っている方だと思います。

 

※茅ケ崎の松並木。

 

 以上、何か所か、紹介してきましたが、その他にも、浜松や藤枝などにも並木道は残っています。また、わずか数本の松が点在している道筋や、1本だけが、寂しく耐えるところなど、その表情は様々です。

 松並木と東海道。往時を偲ぶ、街道の象徴のひとつと言えるでしょう。

 

 箱根の杉並木

 箱根には、東海道で唯一とも言えるような、素晴らしい杉の並木が残っています。おそらく、箱根以外にも、何か所かはあるのでしょうが、脳裏に刻まれているのはここだけです。

 中山道では、安中に、立派な杉の並木が残っています。こちらは、街中に残る道ですが、箱根路は、往時のままの街道筋。昔の旅人たちの足音が、聞こえてきそうなところです。

 

※箱根の杉並木。