旅素描~たびのスケッチ

気ままな旅のブログです。目に写る風景や歴史の跡を描ければと思います。

歩き旅のスケッチ[甲州道中]47・・・高尾の街

 甲州道中の変遷

 

 八王子観光コンベンション協会や、相模湖観光協会などが、共同で発行している、『甲州古道案内図』という、小さな資料。そこには、甲州道中の変遷が、簡潔に書かれています。

 その内容は、「甲州古道は、江戸時代以前から地域の人々の生活や交流の場として使用されていました。江戸時代に幕府が甲州古道を五街道の一つとして整備した後においては、金を産出していた甲州に向かう〈金の道〉として発達し、また、西国の反乱から江戸を守る軍道としての役割も果たしてきました。」というものです。そして、さらに、「甲州古道は明治時代に入り、JR中央本線中央自動車道路の建設により寸断されたり、土地利用の変化により廃道となった箇所もありますが、その多くは現在の国道20号として継承されています。」と、記されています。

 この、国道20号線のルートについては、資料の中の、別のところで触れられていますので、その部分も紹介したいと思います。そこには、「甲州街道では、難所の改良として、この峠(小仏峠)を広げるか、和田峠小仏峠の北西遠くの陣馬山のルート?)、もしくは大垂水峠を通る道路を造るか、という案が検討され、結果現在のルート(大垂水峠)に決定されました。明治17年に着工、明治21年5月3日に完成しました。」*1との記載です。

 ここに出てくる、大垂水峠(おおたるみとうげ)とは、高尾の山の南西側、小仏峠の南に位置する峠です。結果として、国道は、高尾山を南から大きく回り込む道筋となりました。一方で、甲州道中の道筋と、高速道路の道筋は、高尾山の北を貫く、最短のルートです。

 時代によって選択された、道のルートに思いを致すと、その時々の思考の綾にも、感慨深さを覚えます。

 

Google Mapsより。赤〇甲州道中の小仏峠青〇が国道20号線の大垂水峠

 

 駒木野橋

 小仏の関所跡のすぐ近くには、今度は、新しそうな石碑です。「駒木野橋」と記されたこの石碑。この辺りに架けられていた、橋の名残を伝えています。どのような位置づけの橋だったのかは分かりませんが、街道が、沢に架かるこの橋を、通っていたのかも知れません。

 

※駒木野橋の石碑。

 国道20号

 街道は、駒木野の宿場を後にして、住宅が建ち並ぶ道沿いを、東へと向かいます。やがて、やや変形した、T字路の西浅川交差点を迎えます。

 ここで、街道が突き当たる道路こそ、国道20号線の本線です。思えば、小原宿の少し先、底沢橋で別れを告げた国道は、冒頭でも触れたように、高尾山の南側を大きく迂回した後で、ほぼ最短の道筋を進んできた街道と、この地で出会うことになるのです。

 

※西浅川交差点。

 

 高尾の街へ

 街道は、この先で、JR中央本線の高架下を潜ります。この前後には、民家が途切れる場所もありますが、道筋は、次第に都市の様相に変わります。

 

JR中央本線の高架下をくぐる街道。

 

 八王子市高尾町の中心部に近づいた街道は、浅川上宿の信号を通り過ぎ、高尾駅方面へと向かいます。

 辺りには、ビルなども目立ち始めて、賑やかな雰囲気に変わります。

 

※浅川上宿の信号辺り。

 

 高尾駅

 高尾の街並みを眺めながら進んで行くと、やがて、高尾駅の表示です。その先が、高尾駅前交差点。街道は、もうしばらく、道なりの国道を歩きます。

 

高尾駅の近くを通る街道。

 高尾駅は、交差点のすぐ南側。特徴ある駅舎の屋根は、切妻の二層に重なる構造です。どこかの神社の建物を、模したものなのか。何とも奥ゆかしい姿です。

 

高尾駅前交差点のすぐ右に見える高尾駅

 旧道へ

 交差点を通り過ぎ、国道をしばらく進むと、旧道との分岐点を迎えます。少し分かりにくい道ですが、地図をよく確認し、斜め左の細い道に入ります。

 国道と旧道に挟まれた一角は、木々が茂る小公園。その脇をすり抜けて、正面の大きな道路に向かいます。

 

※右に走る国道を離れ、左方向の旧道へ。

 

 大きな道路に突き当たった旧道は、その先、行く手を阻まれます。道路を挟んだ向こうには、旧道の先線が、捉えられてはいるものの、中央分離帯に阻まれて、この道路を横切ることはできません。止む無く一旦、国道に迂回して、町田街道入口の交差点で、信号を渡ります。

 余談ではありますが、旧道を寸断している大きな道路は、少し北に向かうと、昭和天皇の、武蔵野陵へとつながります。なるほど、ここがその場所だったのかと、地理不案内な私にとって、目からうろこの瞬間でした。

 

 交差点から、旧道に戻った後は、しばらくの間、ゆったりとした道筋を進みます。途中には、黒塀が旅情を誘う場所もあり、かすかに、街道の香りを感じます。

 

※黒塀が良い雰囲気を醸し出している旧道。

 

 銀杏並木

 旧道は、この先で、国道に戻ります。よく整備された国道には、銀杏の木が植えられて、延々と続いています。

 ここは、街道に良く見受けられる、松や杉の並木ではありません。天を突く、銀杏並木が、近代的な国道の沿線を、ものの見事に飾っています。

 

※銀杏並木が続く国道の沿線。

 

 私たちは、銀杏の緑に覆われた、国道の歩道に沿って、八王子へと向かいます。

 

*1:()内は、私の注釈です。