八王子
東京都の西部に位置する八王子。人口は、50万人を有に超え、その存在感を誇っています。古くから、甲州道中の往来を監視する、重要な役割が与えられ、関東の西方の要として、発展してきたこの街は、今も、繁栄し続けているようです。
都心から、少し離れた場所ですが、駅近くの中心部には、多くのビルが立ち並び、賑わいの街をつくっています。今では、たくさんの大学が移転して、若人が集う街でもあるのです。
街道は、高尾から八王子、そして、日野の街へと続きます。
国道に戻った街道は、少し先で、多摩御陵入口交差点を迎えます。昭和天皇や大正天皇など、皇族の方々が、埋葬されたこの御陵。ここが東側の導入路になるのでしょう。
歩道には、厳かな石標なども置かれています。
※多摩御陵参道の石碑が置かれています。
国道沿いは、依然として、銀杏並木が続きます。実は、この並木、多摩御陵の造営記念に植えられたものだとか。昭和2年の事業だということで、95年の風雪に耐え、今日を迎えています。
銀杏並木は、時に途切れるところもありますが、八王子の中心地近くまで、その姿を保ち続けているのです。
街道は、並木町の交差点。新宿までは、40キロに迫っています。
※並木町交差点。
並木町
並木町の交差点を過ぎた後、街道は、一旦、旧道に入ります。国道と、ほぼ並行した、斜め左の細い道。路地裏とも思えるような、少し寂しい道筋ですが、次第に、新しい住宅も建ち並び、街中へと近づいていく雰囲気に変わります。
※並木町を通過する旧道(左側)。
長房団地入口交差点
街道は、旧道から、再び国道に戻ります。国道と合流する交差点は、長房団地入口の交差点。そこから、さらに東に向けて、銀杏並木を歩きます。
道沿いは、次第にビルが建ち並び、どこかしら、人の姿も増してきた感じです。
やがて、街道は、西八王子駅西交差点を迎えます。この交差点を右に向かうと、八王子駅の隣駅、西八王子駅に至ります。
この辺り、町の名前は、千人町。徳川の時代になって、街道を警護してきた徳川の家臣団、八王子千人同心の住居があったところです。(このことについては、次回に触れたいと思います。)
※西八王子駅西交差点と銀杏並木の街道。
追分交差点
街道は、西八王子の道筋を、真っ直ぐに、東へと向かいます。やがて、前方に、歩道橋の姿が見えて、そこには、大きな交差点が控えています。
追分と呼ばれるこの交差点、掲げられた、標識を確認すると、斜め右が八王子駅の方向で、直進が立川へと向かう道。街道は、この交差点から右方向。国道20号線の道筋を、八王子の駅に向けて進みます。
※追分交差点を目前にした街道。
道標
歩道橋に近づくと、ひとつの古い石標が目に入り、しばし立ち止まることになりました。石標の一面を見てみると、「右 あんげ道」、他の面には、「左 甲州道中高尾山道」との表示です。
このことから、追分の交差点は、かつての「あんげ道」と「甲州道中」との分岐点。2つの道が枝分かれする、まさに、”追分”だったことが分かります。
この道標のことについて、説明板の内容を、少し紹介したいと思います。
「この道標は文化八年(1811)江戸の清八という職人(足袋屋)が、高尾山に銅製五重塔を奉納した記念に、江戸から高尾山までの甲州道中の新宿、八王子追分、高尾山麓小名路の三ケ所に立てた道標の一つです。その後、昭和二十年(1945)八月二日の八王子空襲によって四つに折れ、一部は行方不明となってしまいました。基部は地元に置かれ一部は郷土資料館の屋外に展示されていました。このたび、地元要望を受け、この道標が復元され、当地に建立されました。二段目と四段目は当時のままのもので、それ以外は新しく石を補充して復元したものです。」
道標をよく見ると、確かに、継ぎ足された痕跡が見て取れます。戦争の傷跡を残すこの道標は、多くの歴史を背負いながら、今なおこの地に、存在し続けているのです。
※歴史を背負った道標。
陣馬街道
因みに、「あんげ道」とは、「案下道」のことだそう。別名は、「陣馬街道」と呼ばれています。追分の交差点から、八王子駅とは反対側、左方向の道筋が、あんげ道になるのです。
そう言えば、前回のブログで紹介した、国道20号のルートとして検討された案のひとつが、和田峠*1を越える道。まさに、「あんげ道」を辿りながら、相模湖の辺りまでつなぐ案が検討されていたのです。
私たちは、追分の歩道橋を利用して、交差点を右方向へ。八王子の宿場町がある、駅方面に向かいます。
八王子宿へ
甲州道中の宿場町があった八王子。この町は、江戸を守る、要の地でもありました。その防衛にあたっていたのが、千人同心と言われる人々です。(先にも触れたように、次回に少し触れたいと思います。)
私たちは、八王子の宿場を目指して、東へと進みます。この先、本郷横丁交差点を横断し、八王子駅の方向へ。道沿いには、大きなビルが目立ち始めて、市街地の中心部に近づいてきた様相です。
八王子の宿場町は、もう間近のところに迫っています。
※本郷横丁交差点。