旅素描~たびのスケッチ

気ままな旅のブログです。目に写る風景や歴史の跡を描ければと思います。

歩き旅のスケッチ[甲州道中]9・・・蔦木宿へ

 釜無川の流域へ

 

 富士見町の街道を、南東へと進んでいくと、道は、いつの間にか、釜無川(かまなしがわ)の流域に入ります。左右から迫る山。その隙間の底に流れを作る、釜無川に沿いながら、甲州道中は、甲斐の国へと向かいます。

 依然として、上り下りが続く道。信州の最後の宿場、蔦木宿(つたきじゅく)は、もう間もなくのところです。

 

 

 塚平

 この日の朝*1JR中央本線富士見駅に降り立って、甲州道中のつなぎの位置に戻ります。駅からは、急な坂を下った後で、上ること、およそ15分。街道にたどり着くまで、結構体力を使います。

 前日に行程を終えた地点は、富士見町の塚平という集落です。民家がまばらに散らばる中を、街道は、静かに通り抜け、南東の方角へと向かいます。

 途中、左手に、それと分かる、一里塚の姿が見えました。これは、塚平の一里塚。前日通った、神戸の一里塚と比べれば、少し見劣りはするものの、それなりに、往時の姿を保っています。

 

※左、塚平の集落を通る街道。右、塚平の一里塚。

 下り坂

 街道は、この先で、やや勾配を増す下り坂に入ります。道沿いは、農地が続き、ところどころに、民家や神社も見られます。

 

※下り坂の街道。

 

 街道は、その先で、雑木林の道となり、一気に丘を下ります。道端には、いたる所に、石仏や石碑などが置かれています。

 今日に至っても、次々と目にするこれらの石碑。その昔、街道には、どれほどたくさん置かれていたのか、想像すると、不思議な光景が浮かんで来ます。

 

※左、雑木林に近づく街道。右、急な坂道。いずれも、石碑が見られます。

 落合

 坂道を下っていくと、やがて、落合の集落に入ります。この集落は、そこそこの規模を誇っていて、街道は、しばらくの間、住宅が軒を連ねる道筋を進みます。

 

※落合の集落の入り口辺り。

 

 急坂が緩まった所には、「吉見屋」と記された、立派な建物がありました。江戸時代の建物かどうかは分かりませんが、旅館なのかお店なのか、趣ある建前です。 

 

※吉見屋と今歩いてきた街道の坂道。

 

 国道と旧道

 街道は、集落を出て、一旦国道に入ります。そして、その先で、釜無川の支流のひとつ、立場川(たつばがわ)を迎えます。

 

※立場川を渡る瀬沢大橋。

 立場川の橋を越えると、今度は、国道の左斜めの旧道へ。この先も、民家が連なる道筋で、依然として、落合の集落が続きます。

 

※国道を離れ、斜め左の旧道へ。

 旧道は、釜無川の東に連なる、山の裾を通る道。その道沿いに、集落が続きます。やがて、民家が途切れると、右方向の斜面や平地は、農地へと変わります。この辺り、釜無川の流域伝いに形成された、幅の狭い平地です。わずかな土地も、農地として、有効に活用されているのです。

 山裾を、蛇行しながら進む道。その先で、街道は、再び国道に戻ります。

 

※左、旧道の道を進みます。右、国道と合流した街道。

 釜無川

 国道に出てきた後は、少しの間、歩道伝いに歩きます。右側は、少し奥に、先ほどの立場川が合流した、釜無川(かまなしがわ)が流れています。釜無川は、この先で、何本もの支流を集め、甲府盆地を下るのです。

 この先で、富士川と名前を変える釜無川。最終的には、甲州のもうひとつの大河川、笛吹川と合流した後、身延を通る深い谷間を流れ下って、駿河湾に注ぎます。

 

 しばらくすると、街道は、もう一度、右方向の旧道へ。そして、その先で、農地に沿ったあぜ道を通ります。

 

※国道から右にそれる街道。

 何となく、街道の雰囲気ではないものの、地図の指示に従って、農地の道を進みます。

 おそらく、街道は、この近辺を通っていたのでしょう。ただ、川の氾濫などにより、度々、その位置を変えてきたのだと思います。今は、その道も、農地として区画され、やむなく、農道を歩かざるを得ないのです。

 後のルートにもあるように、釜無川は氾濫を繰り返し、今では、街道の道筋が、分からない区間もあるようです。

 大体の道筋を辿りながら、南下の旅を続けます。

 

※軽トラックが停まっている先の農道が街道です。

 

 一里塚跡

 農道を歩きながら資料を見ると、左手の国道のすぐ際に、一里塚跡があるようです。遠くからでは、それとは分からない状態でしたが、幸か不幸か、結局その後、一里塚のすぐ傍に戻ることになるのです。

 その理由は、次のとおりです。

 私たちは、農道を下っていましたが、その道は、途中で行き止まり。農地として取り込まれ、先に進むことができません。結局、あぜ道を縫うようにして、国道の方向へ。そして、その時、この一里塚跡に近づくことができたのです。

 

 この一里塚、平岡の一里塚と呼ぶようで、江戸日本橋から、46里目ということです。下の写真で、木が植わっている場所が、一里塚ではありません。写真の荒れ地の右側が、塚の跡地の様子です。

 

※平岡の一里塚跡。

 

 蔦木宿へ

 あぜ道を乗り越えて、国道に戻った後は、山が迫る国道の、左側に設けられた、狭い歩道を進みます。 

 下諏訪宿から、上諏訪宿、金沢宿と通過してきた街道は、信州最後の宿場町、蔦木宿に近づきます。

 

※蔦木宿に向かう国道20号線。釜無川の谷あいです。

 


 

 

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*1:2021年3月