旅素描~たびのスケッチ

気ままな旅のブログです。目に写る風景や歴史の跡を描ければと思います。

歩き旅のスケッチ[甲州道中]3・・・上諏訪宿

 最初の宿場

 

 下諏訪宿を後にして、江戸に向かう最初の宿場が、上諏訪宿。諏訪市の街の中心地に、ほど近いところです。JR中央本線上諏訪駅は、宿場町のすぐ西の位置。駅舎の向こうは、諏訪湖と共に、上諏訪の温泉町が広がります。

 甲州道中の沿線には、江戸から下諏訪宿に至るまで、44か所の宿場町がありました。東海道53次と比べると、距離の割には、随分と多いように思えます。後に分かったことですが、この街道の場合には、小規模の宿場町が、隣り合わせで並ぶところが幾つかあって、グループで協力し合い、その役割を果たしていたらしいのです。

 ただ、上諏訪宿や、この先の幾つかの宿場町は、通常の形態です。甲州道中最初の宿場は、どのような町なのかと、期待を胸に歩きます。

 

 

 大欅

 茶屋跡を通り過ぎると、相変わらず、住宅が左右に並ぶ道筋が続きます。途中には、ひと際目立つ、ケヤキの大木がありました。 

 

※大欅と街道。

 

 男女双体道祖神

 ケヤキの大木のすぐ脇には、大きな石造りの造形物、”男女双体道祖神”が置かれています。この道祖神(どうそじん)、お地蔵様の代わりでしょうか。或いは、他に謂れがあるのかどうか、詳しくは分かりません。男女2体の姿が彫られ、道端に、それとなく置かれているのです。

 道祖神の石像は、特に、信州の甲州道中の各所で見られたような気がします。地方土着の信仰なのかも知れません。

 街道には、また、道沿いに、神社や寺院なども見られます。道中に面した寺社仏閣は、歴史の道の趣を、支えているように感じます。

 

※先宮神社前を通る甲州道中。

 

 上諏訪宿へ

 街道は、次第に道幅が広がって、市街地に近づいた雰囲気に変わります。道は、この先で、大きく右に左に湾曲し、上諏訪宿へと向かいます。この湾曲道路のところには、温泉寺と記された案内板や、幾つかの石碑などがありました。街道の左奥には、温泉に由来する、立派な寺院があるようです。

 湾曲道路を通り過ぎると、その後は、真っすぐ延びる直線道路に入ります。

 

※左、左方向に大きく曲がる街道。右、直線の道に入ります。

 

 道は、左手奥に崖地の斜面。右側は、市街地の住宅地の様相です。しばらく進むと、右側の道端に、一里塚跡と刻まれた、新しい石碑がありました。ここは、下桑原の一里塚跡。この先の辺りから、上諏訪の宿場町が始まっていたようです。

 下諏訪の宿場から、およそ6Kmのところです。

 

※下桑原の一里塚。


 上諏訪宿

 街道は、直線道路を右折して、その先で、国道20号線に交わります。今は、国道との合流地点は、十字路の、諏訪一丁目の交差点。

 甲州道中は、この交差点を左折です。そして、その後しばらく、国道の歩道に沿って、茅野市方面へと向かうのです。ちなみに、諏訪一丁目交差点を右折すると、そのすぐ先が、上諏訪駅という位置関係。諏訪湖は、駅を挟んだ反対側の少し先に広がります。 

 

※諏訪一丁目交差点。街道は、左手前からここに至って、左折です。写真では、左向こうに進みます。

 諏訪一丁目交差点の前後の区間は、かつての上諏訪宿となりますが、街並みは、大きく姿を変えて、宿場町の面影はありません。それでも、少し古い、大正時代風の建物などが姿をとどめ、近代の繁栄ぶりが伝わります。

 さらに、道端には、精進湯と案内された、小さな広場が整備され、温泉の湯の流れのモニュメントが、観光客をひきつけます。
 

※左、国道沿いの甲州道中。右、精進湯。

 酒の町

 街道を南へと進んで行くと、日本酒の、老舗の建物が目にとまります。古くからの酒蔵らしく、その店構えは重厚です。

 最初の老舗は「舞姫」で、続いて、「麗人」という具合です。上諏訪駅で頂いた資料によると、「信州諏訪は酒のまち。温泉街から約10分・・・甲州街道に沿って約400メートルの道のりに、昔ながらの暖簾や木看板、杉玉を掲げた五軒の造り酒屋が建ち並んでいます。」とのこと。

 宿場町の面影は見られませんが、老舗の酒蔵を見ていると、往時の町の様子が浮かんでくるような気がします。

 

※「舞姫」の酒屋の店構え。

 「麗人」の蔵元辺りからは、街道は、緩やかな上り坂に入ります。そして、道沿いは、ごく普通の国道の沿線の姿に戻ります。

 

※「麗人」の蔵元。

 

 城下町

 上諏訪は、宿場町であるとともに、城下町でもある町です。街道から、数百メートル西側に、今も、高島城の城跡が残っています。

 高島城は、かつては、諏訪湖のすぐ傍にあったようですが、今は、地形が変遷し、湖からは、少し離れたところに位置しています。諏訪湖に浮かぶ城の姿は、さぞ、優美だったことでしょう。

 

 街道は、しばらく、直線状に続きます。ところどころに、老舗の店構えがありますが、大方は、新しい建物などが並びます。

 下諏訪宿の南東側の境目は、資料によると、この直線道路の途中まで。次に控える宿場町は、茅野市にある金沢宿。上諏訪から、13Km、南東に向かったところです。

 

 

※左、左手の由緒ある建物が「本金」の蔵元。右、右手は、呉服店