旅素描~たびのスケッチ

気ままな旅のブログです。目に写る風景や歴史の跡を描ければと思います。

歩き旅のスケッチ[奥州道中]11・・・佐久山宿から大田原宿へ

 大田原

 

 街道は、大田原市の佐久山から、市街地へと向かいます。この都市は、栃木県の北部に位置し、その北は、那須町那須塩原市に接しています。市の中心部には鉄道の駅は無く*1、最寄りの駅は、隣接する、那須塩原市の西那須野駅になるようです。

 鉄道からは、やや距離を置く大田原市の中心地。かつては、甲州道中沿線の、主要な宿場町であったとともに、関東地方北縁の城下町でもありました。

 芭蕉も通った大田原。次第に、陸奥の地が近づきます。

 

 

 佐久山宿

 佐久山の宿場町を歩いていると、消防団の分団車庫の敷地のところに、「旧奥州道中 佐久山宿 下町」と刻まれた、新しい表示柱がありました。

 道筋には、往時の名残りの建物などは見かけませんが、このような案内表示が、宿場町の証を伝えています。

 

※分団車庫前に置かれた表示柱。

 

 那須与一

 町中を進んで行くと、今度は何やら、派手な絵が描かれた建物がありました。この建物は、バス停傍の公衆トイレ。絵の中には、「与一の里大田原」と書かれています。

 なるほど、この絵は、那須与一屋島の戦いに従軍し、平氏が掲げた扇の的を、見事に射落とすシーンです。

 彼の人が、どのような方だったのか。私などは、その名前と扇の話を知るのみです。ただ、この絵を見たことにより、この地が那須与一の故郷だったのだと、改めて実感することになりました。

 

※公衆トイレの壁に描かれた那須与一の絵。

 

 宿場の外れ

 街道は、宿場町をさらに進んで、変則の分岐点に至ります。道は、左手が真っ直ぐ延びる県道で、道なりに右方向に下って行くのが、県道48号線の道筋です。

 街道は、右側の道。弓なりの坂道を下ります。

 

※道が変則に分岐するところ。街道は右方向に下ります。

 坂道を下って行くと、その先に、由緒ありそうなお寺がありました。立ち寄りはしませんでしたが、ここには、芭蕉の句碑があるようです。

 前回にも触れたとおり、芭蕉曾良は、矢板から大田原へと向かっています。おそらく、この地には、足を踏み入れていないはず。どうして、句碑があるのかと、不思議に感じた次第です。

 

※宿場町の外れの坂道を下ります。

 箒川(ほうきがわ)

 やがて街道は、箒川に差し掛かり、そこに架かる岩井橋の歩道橋を渡ります。この箒川、那須山中に源を持ち、塩原温泉の渓谷などを流れ下って、ここ佐久山に至ります。

 思ったよりも川幅広く、とうとうとした流れをつくっています。

 

※箒川に架かる岩井橋。

 

 橋の途中で上流を眺めると、清冽な流れの向こうに、緑豊かな丘陵地。そして、流れる雲の向こうには、麗しくも感じられる、那須の連山が見えました。

 絵になるような空間は、見事と言う他ありません。歩かなければ得られない、貴重な景観の醍醐味を味わうことができました。

 

※箒川から見た風景。

 

 私たちは、箒川の河川敷きで、昼食を兼ねた休憩です。この日の朝、喜連川の宿場を発って、随分時間が経ちました。途中のコンビニで手に入れたおにぎりを、絶景の景色の中で味わいます。

 

 県道

 休憩後、再び県道伝いに歩きます。箒川の前後の地形は、一段低い谷状のため、県道は、坂道を上り進んで、台地状の小高い位置に戻ります。

 その先は、真っ直ぐ延びる直線道路。広々とした農地が続き、その合間に、民家などが点在します。

 

※台地上の平坦地を直進する県道。

 

 街道は、幾つかの集落を越え、どこまでも、北に向けて進みます。途中には、立派な門構えの屋敷など、広い敷地の民家などが並ぶ地域もありました。

 

※広い敷地の屋敷が並ぶ地域。

 

 親園(ちかその)

 しばらくすると、親園の交差点。ここを右に向かうと、「道の駅、那須与一の郷」があるようです。

 街道は、この先も直進し、親園の集落へと向かいます。

 

※親園の交差点。

 街道の左には、広々とした農地が続き、その先は、農家や雑木林が連なります。遠方は、山並みが台地を囲うように広がって、その奥に、まだ残雪をいただいた、峰々までも望めます。

 山々は、那須の連山に違いないと思うのですが、はっきりとは分かりません。ましてや、雪を頂く峰々は、どの辺りになるのでしょう。

 雄大な景色を眺め、少しずつ、歩みを進めます。

 

※広々とした農地や、遠方の山並みを眺めながら歩きます。

 

 やがて街道は、ちょっとした集落の中に入ります。この辺りが、親園の集落になるのでしょう。JAのお店などや小学校もあるようです。

 道は、この先で、少し左にカーブして、一路、大田原の市街地を目指します。

 

※親園の集落。

 大田原へ

 そこそこの規模を誇る、親園の集落を進みます。道沿いは、敷地の広い民家が並び、美しく手入れされた、庭の木々が見事です。

 

※親園の集落を通る街道。

 やがて、集落を通り過ぎ、再び、農地が広がる道沿いを進みます。この辺り、写真では分かりませんが、県道の左伝いに、小さな川が流れています。しばらくの間、道と川が隣り合わせの区間です。

 

※県道の左には、小さな川が流れています。

 

 やがて街道は、浅香3丁目交差点に入ります。道路上の標識は、左手が、塩原や西那須野の方向で、右は、黒羽(くろばね)に向かう道。

 この、左右に延びる幹線道路は、大田原の市街地の南側を巡っています。辺りは、新しい町並みへと姿を変えて、大田原の市街地が、迫りつつあることを示しています。

 

※浅香3丁目交差点。

 

*1:大田原市には、JR東北本線の野崎駅がありますが、中心部からはやや離れています。