旅素描~たびのスケッチ

気ままな旅のブログです。目に写る風景や歴史の跡を描ければと思います。

歩き旅のスケッチ[奥州道中]9・・・喜連川から佐久山宿へ

 丘陵地

 

 喜連川を過ぎた街道は、関東平野の北に広がる丘陵地帯に入ります。これまでは、白坂宿の直前で緩やかな丘があった他、氏家宿と喜連川宿とを隔てている、わずかな山を越えたのみ。おおかたの道中は、平坦な道筋です。

 それでも、陸奥に向かう街道は、いよいよ、関東平野とお別れです。これから先の道筋は、幾重にも重なる山々と、丘陵地帯をすり抜けて、東北の地を目指します。

 

 

 喜連川から

 前日に、白沢・氏家間を歩きつないだ私たち。氏家から喜連川までの行程は、雨により予定変更となりました。結局、他の方法で、ここ喜連川までやってきて、温泉宿で1泊です。

 そして、次の日は、この喜連川から佐久山へ、大田原へと向かうことになりました。(前回も記したように、氏家・喜連川の行程は、その翌日に舞い戻り、歩きつなぐことになったのです。)

 

 私たちはこの日の朝、喜連川の宿場のはずれを出発し、佐久山宿へと向かいます。前日の雨は止んだものの、空はまだどんよりとした状況です。

 街道は、喜連川の盆地を流れる内川へ。金竜橋の傍に架かる歩道橋を渡ります。

 

※内川に架かる金竜橋。

 

 山並み

 内川から上流を眺めると、曇天の彼方の境に、雪を抱いた美しい連山が見えました。この山並みは、一体どこになるのでしょう。日光の山なのか、或いはまた、那須の山なのか。どこになるのか分かりませんが、関東の平地を囲む、急峻な山並みの一つです。

 その昔、陸奥へと旅立った人たちは、このような山々を望みながら、自らの行く末を、しみじみと感じ取っていたのかも知れません。

 

※内川から上流を望んだ光景。

 

 丘陵地へ

 街道は、内川を越えた後、田町という地域に入ります。家並みが街道沿いに連なって、その先は、丘陵地が控えています。

 道は、緩やかな上り坂。その先は、林の中に吸い込まれていくような道筋です。

 

※田町を通る街道。

 

 街道が丘陵地帯に近づくと、勾配はやや急となり、山のへりに沿いながら、少しずつ奥の地へと向かいます。

 途中、山里のような地域に入ると、道端には、一風変わった石像です。この石像、男女双体道祖神と言うのでしょうか。2体の像が彫られた様子は、仲睦まじく、ほっこりとする姿です。

 このような、男女の姿が彫られた像は、甲州道中を歩いた時に、よく見かけたものでした。どのような意味があるのか分かりませんが、地域の方の信仰に由来するのだと思います。

 

※丘陵地を進む街道。男女双体道祖神が見られます。

 

 道は、上り下りを繰り返し、左右に大きく屈曲しながら、山あいをすり抜けます。やがて、「菖蒲沢公園」と表示された交差点。この辺り、整然と整備された県道の道が続きます。

 地図を見ると、菖蒲沢公園の周辺は、新しい住宅地があるようです。きっと、多くの人々が、この右奥の丘陵地域に住まいされているのでしょう。

 

※菖蒲沢公園の交差点。

 

 旧道へ

 県道をさらに進むと、ひとつの道路標識が現れます。直進は、大田原市に向かう道。そして、行先が表示されない左の道は、丘陵地の西の区域の方向へ。

 街道は、ここを左折し、その先で旧道に入ります。

 

※旧道に向かう分かれ道。

 

 分岐点を左に折れると、そこそこの道幅の道路が続いています。ただ、街道は、直ぐに右方向。事業所の前の道を通過して、奥に続く旧道に向かいます。

 

県都の分岐直後の様子。街道は、すぐ右の道に入ります。

 

 事業所の前を通り抜けると、その先は、木々が茂る細い道へと変わります。どことなく、心細い道ですが、確かにそこが街道です。

 勇気を出して、山道を思わせる旧道に踏み入ります。

 

※山道風の旧道の入口。

 

 裏道

 旧道は、間もなく、雑然とした荒れ地の道の様相に。土道は、枯れ草が覆う状態で、左右からも、草木が行く手を阻みます。

 今では、ほとんど、人が通る気配はありません。丘の斜面に取り残された、裏道の感じです。

 

※枯れ草に覆われた旧道。

 

 しばらくすると、廃棄物などを取り扱う事業所が建ち並ぶ地域を通ります。街道を歩く者には興ざめですが、このような事業所には、好立地の場所と言えるでしょう。

 途中には、肥料関係の施設などもありました。何とも奇妙な地域をすり抜けて、先に続く丘の道を進みます。

 

※事業所が並ぶ旧道脇。

 

 農地へ

 街道は、時折、急坂もありますが、概ね、緩やかな上り坂。

 やがて、平坦な道に変わると、台地状の土地のところに、わずかな農地が見られます。街道は、農地の脇を通り抜け、その先の森の方へと向かいます。

 

※台地状のところにある農地の脇を通ります。

 

 農地が尽きる辺りから、道は下り坂に変わります。そして、その先は、木々が覆う森の中。ここからしばらくの行程は、再び、心細くなるような道筋です。

 

※農地が終わり、森の中に入ります。

 

 開けた場所へ

 それほど長くはない、森の中の下り坂。やがて、辺りが開け、盆地状の地域に入ります。

 この辺り、広々とした農地が広がり、幾つかの集落も見渡せます。街道は、次第に勾配を緩めながら、先ほど別れた、県道に近づきます。

 

※左、旧道の裏道を出て、盆地状の地域へ。右、この先で県道と合流します。

 県道

 裏道の旧道を離れた街道は、人家が並ぶ県道の、明るい道筋に変わります。どこか、ほっとした思いを抱きながら、安心して、歩道の道を進みます。

 次の宿場の佐久山は、まだしばらく先の位置。奥州へと繋がる道は、幾つもの丘を通って続きます。

※県道につながった街道。