旅素描~たびのスケッチ

気ままな旅のブログです。目に写る風景や歴史の跡を描ければと思います。

巡り旅のスケッチ[西国三十三所]13・・・醍醐寺

 伏見と山科

 

 宇治に続く霊場は、京都伏見の醍醐寺です。伏見と言えば、伏見稲荷伏見桃山城があるところ。ところが、醍醐寺は、そこからは、少し離れた場所にあるのです。

 宇治市の最北端の六地蔵。そこから平地は、V字状に2方向に分かれます。左に向かうと、まさに伏見の方角で、京都盆地につながります。反対の右側は、山科(やましな)へと向かう道。次の札所の醍醐寺は、この、山科への道沿いに境内を構えています。

 山科は、京都市でありながら、少し趣を異にした地域です。都との間には、東山の連山が壁をつくり、西側の近江とは、逢坂山や南郷の険しい峰々が、往来を阻んでいます。そのような地形から、この地域は、”山科盆地”とでも言えるような、独自の空間が広がります。

 都と近江に挟まれた山科の里。天智天皇の陵(みささぎ)や、毘沙門堂など、古くからの貴重な史跡が残っています。また、かの蓮如上人は、この地に、山科本願寺という、広大な宗教都市を築きます。*1

 街道も縦横に交わるこの土地は、古代から、重要な場所として、位置付けられてきたのでしょう。

 

 

 醍醐寺

 醍醐寺は、宇治市六地蔵から山科の盆地に向かう、狭隘な平地の隅に、境内を構えています。辺りは、閑静な住宅地。古くから、南北に走る街道沿いに形成された、落ち着いた雰囲気の町並みです。

 住宅地を進んで行くと、やがて右には、白壁と松の並木が現れます。随分と広い敷地が、壁の向こうにあるようで、長々と白壁は続きます。

 やがて、壁が途切れたところには、醍醐寺の駐車場の案内です。その案内に従って、駐車場へと向かいます。

 

醍醐寺の駐車場の入口。

 参道

 駐車場から、境内へと向かう道筋は、大変風情のあるところです。参道は、石畳風に整えられて、その両側には、白壁と桜並木が連なります。

 街道と参道の、2重に配された白壁は、いかにも厳かで、贅沢にも感じてしまいます。

 

※内側の白壁と桜並木。

 

 駐車場から境内へは、この白壁を左方向に進みます。参道は、時代劇に出てくるような、あるいは、旅情を誘う写真集のひとコマとも思えるような、いにしえ感満載の情景が広がります。

 

※白壁に囲まれた参道を、境内へと向かいます。

 

 三宝院(さんぼういん)

 白壁を終えたところは、広々とした砂利道の参道です。参拝者は、ここで右方向に進路を変えて、正面の仁王門へと向かいます。

 砂利が敷かれた参道の左にある建物は、三宝院と呼ばれている、醍醐寺の本坊です。受付で頂いた資料には、「醍醐寺座主の居住する本坊として醍醐寺の中核を担ってきました。」と書かれています。

 この三宝院、かの有名な、豊臣秀吉の「醍醐の花見」が催されたところでもあるようです。

 晩年の秀吉が、伏見桃山城から豪壮な行列を従えて、ここ醍醐寺三宝院に入るのです。北政所(きたのまんどころ)や淀君など、そうそうたる人々が、桜の花を愛でながら宴を楽しむ情景が、思い浮かぶような気がします。

 

※砂利道の参道。左側が三宝院、唐門も見られます。正面は醍醐寺の仁王門。

 

 三宝院には、由緒ある建物や、秀吉自身が設計した*2、庭園などがあるようですが、ここには立ち寄らず、目的地に進みます。

 

 仁王門

 参道を進んで行くと、仁王門が参拝者を迎えます。ここから先が、醍醐寺の境内です。

 門をくぐった右手の事務所で、拝観料*3を支払って、一路、観音霊場へと向かいます。

 

※仁王門。

 

 金堂

 仁王門の先に続く参道を進んで行くと、左手に、立派なお堂が見えました。大屋根が特徴的なこのお堂こそ、醍醐寺の本堂で、ここでは、金堂と呼ばれています。

 

※金堂に向かう参道。

 

 重厚感ある金堂は、このお寺の中心ですが、私たちは参道から手を合わせ、さらに奥の、観音霊場を目指します。

 

醍醐寺の本堂である金堂。

 

 五重の塔

 金堂を過ぎた先の右手には、これも立派な、五重の塔がそびえています。広々とした境内に、散らばるように建つお堂。まるで、木々が茂る森の中の公園に、由緒ある建物が寂し気に佇んでいるような光景です。

 

※五重の塔。

 

 准胝堂(じゅんていどう)

 西国三十三所霊場は、正式には、上醍醐・准胝堂と呼ぶようです。ただ、通称は、よく知られた醍醐寺で、ここは、少し説明が必要です。

 まず、醍醐寺は、おそらく、三宝院もそのエリアに含む、この辺り一帯の境内を指すのだと思います。そして、その中心である本堂が、先に触れた金堂です。

 一方で、西国三十三所は、まさに、観音様の霊場です。観音菩薩が祀られたお堂こそ、三十三ヶ所の巡拝の対象です。醍醐寺では、准胝堂が、そのお堂にあたるのです。

 ただ、資料によると、このお堂は、近年、火災に見舞われたということで、今は観音堂が札所の役割を果たしているということす。

 

 私たちは、境内をさらに奥へと足を向けて、この、観音堂に向かいます。

 

観音堂

 

 境内の奥に向かうと、左手に、観音堂がありました。石垣で一段高まったそのお堂。背後の山に守られてでもいるように、安らかに、木陰の中に佇みます。

 上醍醐・准胝堂の本尊は、准胝観世音菩薩ということですが、その功徳がどこにあるのか、よく分からないのが実情です。

 何れにしても、観音霊場の巡拝です。心を清めて、ただ、手を合わすのみ。お堂の中で御朱印もいただいて、次の札所に向かいます。

 

観音堂は、正面石段が封鎖されていていますので、裏口が出入り口となります。

 

*1:五木寛之著『蓮如』に、この表現があります。

*2:醍醐寺で頂いた資料には、「その庭園は、秀吉自らが基本設計をしたもので、国の特別史跡特別名勝に指定されています。」と書かれています。

*3:醍醐寺の拝観料は、普段、一人千円です。駐車場も千円ですので、ここの参拝は結構な負担となります。ちなみに、桜の時期はさらに拝観料が上乗せされるようです。