飛鳥の奥地
6番から9番目の霊場は、大和の国を巡ります。まずは、6番札所の壺阪寺(つぼさかでら)。正式には、壺阪山南法華寺(つぼさかやまみなみほっけじ)と呼ぶようですが、通称名の壺阪寺こそ、よく知られた名前です。
6世紀後半から、およそ1世紀、日本の国の中心だった飛鳥の地。その南の奥にそそり立つ、険しい山の斜面に沿って、壺阪寺の境内は広がります。この古刹の始まりは、お寺で頂いた資料を見ると、西暦703年のこと。この時点では、都は既に、飛鳥から藤原宮に移っています。
大和の地を北上していく、政権の中心地。壺阪寺は、その変遷を、背後から見守っているようにも思えます。
壷阪寺へ
壷阪寺へと向かう道は、飛鳥から南下して、深い山の方向へ。途中から、つづら折れの急坂を進んだ先に、駐車場がありました。
私たちは、さらに奥へと車を進め、境内の入り口近くに迫ります。一段上に設けられた駐車場。見晴らしのよいスペースに車を停めて、受付の建物に向かいます。
この寺の拝観料は600円。入り口を通り抜けて、たくさんの建物の姿が見わたせる、参道に入ります。
※境内に入った辺り。幾つもの建物が見られます。
壷阪寺の境内には、幾つもの建物が並んでいます。木造のお堂とともに、コンクリート造りの建物も目立ちます。
上の写真の右側にある、朱塗りの木造建物は、大講堂と呼ばれています。そして、左側の建物が、養護盲老人ホームです。この寺院、眼病平癒の観音様がご本尊だということで、社会貢献事業にも尽力されている様子です。
仁王門など
境内を少し進むと、落ち着いた雰囲気の仁王門がありました。門の前の石柱も、南法華寺の名ではなく、壷阪寺の表示です。
仁王門をくぐった先は、左手に、灌頂堂(がんちょうどう)と多宝塔。そして、右側には、石像などがありました。
※仁王門。
ひと際目立つ石像は、釈迦如来石像です。別名、「壷阪大仏」と呼ばれているようですが、東大寺など他の大仏と比べると、重厚感はありません。
※釈迦如来石像とその他の石像が並ぶ区域。
上り参道
参道は、さらに上へと続きます。石段の途中には、幾つかの、十一面千手観音像。複雑な参道のところどころに、様々な工夫が見られます。
※参道途中にある観音像。
本堂へ
参道は、やがて、楼門のような建物につながります。ここを通り抜けると、本堂がある境内です。
この建物、内部は、展示場のようになっていて、様々な額や品々が置かれています。
※楼門のような建物。左、階段を上って楼門に入ります。右、右方向から入り、手前に出てくる構造です。
楼門を過ぎた先には、三重の塔が控えています。歴史ある佇まいのこの塔は、境内の最も高い位置に、法輪をそびえさせ、どこからでも、その姿を確認できる目印です。
塔の前には、少し変わった、眼鏡の柵が。目にまつわる壷阪寺の、ひとつの象徴でもあるのでしょう。
※三重塔。
三重の塔を通り過ぎると、礼堂と本堂です。本堂は、八角円堂と呼ばれていて、八角形の形をした珍しい建物です。
ちなみに、西国三十三所では、奈良興福寺の南円堂が八角形。そして、京都にある頂法寺の本堂が六角形を呈しています。頂法寺は、親鸞上人が師と仰いだ、法然上人ゆかりの寺院。別名、六角堂と呼ばれています。
※礼堂(左)と八角円堂(右)。
本堂
八角円堂の中に入ると、正面には、本尊の観音様。正式には、十一面千手千眼観世音菩薩像と呼ぶようです。
ただ、おそらく、ここにおられる本尊は、本物ではないのでしょう。訪れた時の記憶が薄れ、はっきりとは分かりませんが、本当の本尊は、どこかに安置されているのだと思います。
※本堂正面の様子。
八角円堂は、観音像の左側から、一周できる構造です。中は、色々な仏像や資料などが置かれています。
私たちは、お堂の中を一回りして、帰路の途につきました。
天竺渡来の大石像
実は、写真には収められていませんが、壷阪寺の境内には、向かって右の方向に、立派な石像が置かれています。そのひとつが大観音石像で、もうひとつは、大涅槃石像です。
いずれの像も、インドとの交流をきっかけに、造られたものだとか。巨大な石像を間近に見るのも、壷阪寺の醍醐味かも知れません。
参考までに、寺院のパンフレットを拝借し、その様子をお伝えさせて頂きます。
※寺院のパンフレット写真を拝借しました。
景観
帰り際、駐車場から、眼下を見ると、大和盆地が見渡せました。遠方は、どの方向になるのでしょう。少し、北西方向なのか、あまり自信はありません。そうすると、おそらく、右側が飛鳥です。飛鳥の先は藤原京。
そして、盆地の北の端、右手遥か奥の地が、平城京になるのでしょう。
平城京の東には、聖武天皇の皇后だった、光明皇后ゆかりの寺院、法華寺が佇みます。広大な、大和盆地の北の端の法華寺と、南側の山の斜面の南法華寺は、何かつながりがあるのでしょうか。
大和の国の空間を隔て佇む2つの法華寺。ここにも、何かロマンを感じます。
※壷阪寺から見下ろす大和盆地の風景。