旅素描~たびのスケッチ

気ままな旅のブログです。目に写る風景や歴史の跡を描ければと思います。

歩き旅のスケッチ[日光道中]27・・・宇都宮宿へ

 二荒山神社

 

 日光を目指す街道は、宇都宮の宿場町で、奥州道中と分かれます。私たちは、追分を北へと進み、少しずつ西寄りに進路を変えて日光へ。一方の奥州道中の道筋は、追分を東に進み、その後、北方向に舵を切り、福島の白河へと向かうのです。

 主要な街道の分岐点である宇都宮。この宿場町のすぐ近く、今では、駅前の大通りに面したところに、二荒山神社(ふたあらやまじんじゃ)が構えています。

 二荒山神社、実は、かの日光にも、同じ名の神社があるのです。日光と宇都宮に鎮座する2つの神社。さぞや、深いつながりがあるものと、思い込んでも不思議ではありません。

 ところが、実際は、2つの神社は全く別のもの。読み方も、日光の二荒山神社は、”ふたらさんじんじゃ”と呼ぶのです。

 宇都宮の市街地に、どっしりと境内を構える、二荒山神社の見事な姿を眺めながら、日光の二荒山を書き留めた、松尾芭蕉の『おくのほそ道』の一文を、読み直した次第です。

 

 「往昔(そのかみ)、此(この)御山を「二荒山」と書きしを、空海大師開基の時*1、「日光」と改(あらため)給ふ。」

 

※左、宇都宮に鎮座する二荒山神社。右、神社前に置かれた由緒書。”ふたあらやまじんじゃ”のルビもふられています。

 

 宇都宮の市街地へ

 江曽島の一里塚跡を過ぎた後、国道は、広々とした幹線道路に変わります。道沿いは、民家から、事業所が中心の街並みへ。

 ここから先は、一気に宇都宮の市街地に近づきます。

 

※広々とした国道筋を進む街道。

 国道4号線

 街道は、依然として、国道4号線を北上します。この国道、随分と長い区間、街道と合流し、或いは、街道と寄り添いながら、宇都宮の市街地に近づいてきましたが、ここから少し先のところで、右に大きく迂回して、日光道中と別れます。

 その後、国道は、宇都宮の東を通り、那須塩原へ、そして、福島の白河へと向かうことになるのです。

 

※左、日光道中と並走する国道4号線。右、この先で、国道4号線は大きく右に向かいます。

 一区切り

 国道4号線と別れを告げて、今度は、国道119号線に入ります。この辺り、歩道には、ところどころでバス停を見かけます。特に、市街地が近づくと、数百メートル間隔で、停留所があるようです。

 私たちの、この日の歩き旅。小金井駅からこの辺りまで、およそ20キロに迫っています。体力的にも、少々きつく感じる時間帯。適当なバス停から、宿のある、宇都宮の街中に向かうことになりました。

 バスは、関東バスが数多くの路線を敷いていて、便数も豊富です。便利に利用させていただいて、歩き旅をつなげます。

 

※バスで歩きつなぐことになった繫ぎ目のバス停辺り。

 

 翌朝

 翌朝、空模様は一転し、小雨の中を歩く羽目になりました。先ずは、宇都宮の宿近くからバスに乗り、前日のバス停に戻ります。

 バス停からは、再び、国道119号線を北進です。そして、しばらくすると、街道は左にそれて、国道と別れます。

 国道との分岐には、不動堂と呼ばれる小さなお堂。歴史あるお堂のようですが、詳しくは分かりません。

 私たちは、左にそれる道へと向かい、宇都宮の宿場を目指します。

 

※不動堂がある国道119号線との分岐。

 宇都宮宿へ

 宇都宮の宿場を目指す街道は、旧道というよりも、郊外と市街地をつないでいる、主要な道路という印象。

 道沿いは、郊外型のお店が並び、その先は、次第に、住宅も増していく状況です。 

 

※宇都宮宿に向かう街道。

 

 しばらくすると、東部宇都宮線の軌道が横切り、街道は、そのガード下を潜ります。そして、この辺りから、宇都宮の宿場町が始まっていたようです。

 

※東部宇都宮線と宿場町の始まり。

 宇都宮宿

 宇都宮の宿場町は、直前の雀宮から、およそ8キロ離れています。本陣は1軒で脇本陣が2軒あり、旅籠の数は42軒だったということです。これだけ見れば、ごく平均的な大きさの宿場町に思えます。ところが、この町は、他にも幾つかの表情を持ち合わせているのために、相当な大きさです。

 先に記した二荒山神社は、この地方の中心地。門前に広がる町は、多くの人が訪れていたでしょう。また、宇都宮は、宇都宮藩の城下町。さらには、鬼怒川の水運も盛んに行われていたようで、商業の町としても栄えていた様子です。

 

※宇都宮の宿場町の様子。

 宿場町の街道は、市街地整備が進む中、往時の面影を見ることはできません。沿線には、住宅が建ち並び、どこにでもあるような街並みが続きます。

 雨は、引き続き、止む気配はありません。足元が濡れ初め、気分も少し消沈気味。とりあえずコンビニで、雲の様子を確かめて、小降りになるのを待つことになりました。

 

 中心地へ

 しばらくすると、雨脚はやや弱まって、雲も次第に薄れる様子。気を引き締めて、街道歩きを再開です。

 この先、街道は、さらに道幅が広がります。低層階のビルも増え、街の中心部に迫ってきた様相です。

 道はやがて、T字路の、裁判所前交差点に至ります。街道は、ここを右折です。この右折する道の先が、宇都宮の中心地。大きなビルが林立し、多くの人が集います。

 

※裁判所前交差点に向かう街道。突き当たりを右折です。

 右折を終えた街道の様子をご覧いただければと思います。ビルが並ぶ市街地は、すぐ右方向に、東部宇都宮駅があり、東部百貨店をはじめとして、様々なお店が並んでいます。

 また、この道を真っ直ぐ進んだ左には、二荒山神社が構えています。そして、そのさらに先が、JR宇都宮駅という位置関係。

 

※宇都宮の中心地辺り。

 

 宇都宮の中心部に入った街道は、この少し先で、奥州道中との追分を迎えます。日光への道筋は、そこを左の方向へ。直進する、奥州道中を見送るように、進路を西寄りに移します。

 

*1:実際は、空海が開基ではなく、勝道上人です。岩波文庫版の注記でも、そのことが書かれています。