東海道の歩き旅
東海道の歩き旅。最初に訪れることになったのは、愛知県豊橋市にある吉田宿。そこから、静岡県湖西市の新居宿までの行程が、歩き始めの区間です。そこを選んだ理由については、特にはなかったような気がします。何となく、思いつきからだったのか、或いは、浜名湖を訪れるついでのことだったのか、今となっては、よくわからない状況です。とにかく、その時は、中山道を歩き終えた5か月後、2019年10月のことでした。
その後、気持ちを入れ替えて、翌11月には、滋賀県の草津市へ。草津宿の途中にある、中山道との分岐点、草津追分に立ち戻ります。
本来ならば、京の都、三条大橋が起点のところ、私たちは、草津までは中山道で制覇済み。従って、勝手ながら、東海道の歩き旅は、草津追分を出発の地とすることにしたのです。
草津を発った後は、ほぼ、順番を違うことなく、東に向けて歩きつないで、およそ2年の時をかけ、2021年10月に、江戸日本橋に到着することができました。
これまでの、「歩き旅のスケッチ[東海道]」は、草津から、江戸日本橋までの行程を、時間をかけて紹介してきたところです。これからの数回は、その総集編。東海道の見どころを、街道の風景、富士山、宿場町、峠道、街道筋、などに焦点を当て、特に魅力あるところなどをお伝えしたいと思います。
※左、京都三条大橋。右、琵琶湖から流れる瀬田川に架かる瀬田の唐橋。
街道の風景
歩き始める前までは、現在の東海道は、”ほぼ国道1号線に沿った道”との認識でした。以前歩いた中山道が、美濃路・木曽路・信濃路など、往時の道筋がよく残されている一方で、東海道は、それほどの魅力はないだろうと、思い込んでいたのです。
ところが、歩き始めて認識したのは、東海道も、なかなか魅力的な街道だということです。
最初に歩いた、吉田宿と新居宿の間には、宿場町の面影がよく残る、二川の宿場がありますし、白須賀宿の東の丘の潮見坂は、遠州灘が絶景です。浜名湖に向かう道には、松並木。新居の宿場は、見事に整備された、関所跡も見られます。
この区間を歩いてからは、これまでの、東海道の認識を改めることになりました。
今回と次回のブログは、この魅力ある東海道の、素晴らしい風景が望めるところを紹介したいと思います。街道からの絶景は、疲労した身体にとっても最良の妙薬です。
※潮見坂から遠州灘を望みます。
※白須賀・新居間の松並木。
薩埵峠と富士山
東海道随一の絶景が望める場所は、静岡県の興津宿・由比宿間に位置している、薩埵峠(さったとうげ)だと思います。ここからの富士山や駿河湾の見晴らしは、言葉では言い尽くせないほど素晴らしく、いつまでも眺めていたい景色です。
※薩埵峠から望む富士山と駿河湾の絶景。
薩埵峠は、街道が通過する場所なので、街道歩きをする場合には、自然とここに行き着けます。ただ、街道歩き以外でも、是非とも訪れて頂きたいところです。
その場合のアクセスは二通り。興津側から徒歩で向かう方法と、由比側から、車で向かう方法です。前者の場合は、興津川辺りから、集落や、ちょっとした山道を歩くことになりますが、後者の場合は、展望台近くまで、車で行くことが可能です。
安藤広重が見事に描いたこの絶景。是非とも、体感して頂きたいと思います。
牧之原台地の茶畑
次に紹介したいところは、牧之原の台地を埋める茶畑の風景です。特に、静岡県掛川市にある、日坂宿(にっさかじゅく)と、島田市にある間の宿(あいのしゅく)、菊川との間に広がる丘陵地帯は、見事な景観を放っています。
街道は、台地を越える峠道。かなり厳しい道筋ですが、どこまでも、尽きずに続く緑の畝は、爽やかな風が心地よいところです。
1日かけて、日坂宿から金谷宿へと散策するのは、絶好のハイキングコースだと思います。*1
※遠方には、茶の木で形作られた「茶」の文字も見えます。
※小夜の中山峠近くの白山神社前。
近江路・三上山
滋賀県の近江路では、落ち着いた雰囲気の風景が望めます。三重県の伊勢の国に向かう途中の、鈴鹿の景色も外せませんが、草津から、石部の宿場に向かう途中の、三上山の風景は、何とも言えない、のどかさを感じます。
近江富士とも呼ばれている、こんもりとしたこの山は、古くから信仰の対象です。この山を眺めた旅人達は、俵藤太(たわらとうた/東国武将の藤原秀郷のこと)の大ムカデ退治の伝説を耳にして、ゆかりの山に手を合わせつつ、通り過ぎたことでしょう。
※栗東市辺りから望む三上山。
三重県は、何と言っても、木曽三川の大河です。揖斐川、長良川、木曽川の3つの河川が、桑名の宿場近くで合流し、伊勢湾に注ぎます。その昔の旅人達は、ここで行く手を阻まれて、船の利用を余儀なくされてしまうのです。
桑名の宿場の外れにあった、桑名の湊。愛知県の熱田神宮近くにある、宮宿の湊とを七里の渡しでつなぎます。
この大河の風景は、雄大さを感じます。旅人達は、のんびりとした船旅を楽しみながらも、行く手を阻む水の流れに、かすかな恐怖も感じていたのかも知れません。
※桑名の湊近くから、河口方面を望みます。
※三川の最西にある揖斐川。今は、渡しではなく、遠方に見える橋を渡ります。