東海道と富士山
東海道の見どころは、なんと言っても富士山です。今回の街道歩きで、始めてその姿を見ることができたのは、浜名湖の辺りから。その後、牧之原の台地から、あるいは、薩埵峠（さったとうげ）から、次第に近づく富士の姿を、目にすることができました。
富士川を渡る街道は、富士山に最接近するところです。流れの先にそびえる雄姿は、圧倒的な迫力で迫ってくるように感じます。
その後、街道を東へと進むにつれて、その姿は少しずつ遠ざかり、あるいは、他の山などに、姿を隠されてしまいます。それでも、箱根路や、横浜の坂道からも富士山は望めます。
東海道沿線の、各地から見られる名峰は、今も昔も変わることなく、旅人の心を捉え続けているのです。
※左、蒲原宿を終え、旧富士川町に向かう途中。道路は東名高速。右、沼津市の黄瀬川から。
富士山と富士川
街道が、富士山に再接近するポイントは、富士市を流れる富士川辺り。今は、県道の富士川橋から、見事な雄姿が望めます。
かつては、流れの早いこの川を、舟の渡しで越えました。その時は、揺れる身体を支えることに集中し、のんびりと、富士の姿を眺めている場合ではなかったかも知れません。
それでも、この辺りから望む富士山は、群を抜く迫力です。旅人は、名峰を目に留めながら、名残を惜しむようにして、足を進めたことでしょう。
※富士川と富士山。
※富士川橋西詰から望む富士山。
街道と富士山
街道から望む富士山は、私たちの心と身体を、和ませてくれるように感じます。なぜかその姿を目にすると、ホッとした気分になるのです。写真では、小さく写る富士山ですが、実際は、もっと大きな姿です。
ここで、街道の各所からの富士山をご覧い頂ければと思います。
浜名湖から
※浜名湖からの富士山。
浜名湖からは、なかなか、富士山を見ることはできません。たまたま、早春の空気が澄んだ頃に、この地を歩いたご褒美なのか。遠方に、白く輝く小さな峰を、愛でることができました。
牧之原台地から
※小夜の中山峠の東から望む富士山。
掛川市の日坂宿と、島田市の菊川の里の間には、牧之原台地が広がります。この道は、東海道の道筋でも、有数の難所です。森の中の山道ではないものの、延々と続く坂道は、結構身体にこたえます。
この道の途中にあるのが、小夜の中山峠です。西側の日坂宿から歩き進めて、峠を越えたところで姿を見せた富士山は、峠歩きの疲労さえ、癒してでもくれるような、爽やかさがありました。
三島から
※三島宿を過ぎた直後の街道から。この先、箱根の坂に挑むことになります。
三島から箱根峠に向かう時、街道は、少しずつ、標高を高めます。箱根の裾野が、緩やかに勾配を増すあたりから、美しい富士の姿が見えました。里から眺める富士の景色も一入です。
箱根から
※箱根の関所を終え、杉林並木の途切れた所から撮影しました。
箱根路は、厳しい道ではありますが、峠を越えて、芦ノ湖湖畔に近づくと、ひと時、落ち着いた道に変わります。
かつては、箱根の関所が控えたところ。道筋は楽になっても、取り締まりには厳しい場所だったということです。
それでも、この地から眺める富士山は、湖と朱塗りの鳥居が合わさって、独特の風景を作っています。
横浜から
横浜の丘陵地帯を通る時、何か所かで、富士山を眺めることができました。その、ひとつの場所が権太坂（ごんたざか）。既に、武蔵の国の入口です。その他に、権太坂の西にある、戸塚区の品濃坂（しなのざか）辺りでも、美しい峰の姿が望めます。
この辺りの街道は、その昔、１日で江戸に着ける場所でした。都心部にほど近い、そんな地からも、富士山の姿を捉えることができるのです。
スカイウオークと駿河湾
街道からの風景で、印象深かった場所として、三島市にある、スカイウオークからの眺望を外すことはできません。そこから望む富士山や、駿河湾の輝く水辺は、いつまでも、私たちの頭の中から離れることはありません。
街道は、スカイウォークの駐車場の、向かいを横切る歩道です。箱根路の坂道の、ほぼ中間の位置にあり、少しだけ、平坦になったところです。歴史の道を歩いていると、突然開けたその場所に、近代的な観光施設が現れます。
歴史ある街道と、新しい観光施設のコントラスト。思いもよらない、ちぐはぐな組合せには、驚きすら感じます。それでも、ここからの眺望は、超一級。機会があれば、ぜひとも、訪れて頂きたいところです。
※スカイウオークのモニュメントと富士山。
※スカイウオークの吊り橋。
スカイウオークから見下ろすと、駿河湾が一望に広がります。東海道は、この湾に沿って続いていますが、三島からは、一気に、箱根路の山道へと変わります。
険しい道でありながら、この絶景は、心と身体を癒してくれる、この上ないご褒美です。
※スカイウオークから望む駿河湾。
