旅素描~たびのスケッチ

気ままな旅のブログです。目に写る風景や歴史の跡を描ければと思います。

歩き旅のスケッチ[東海道]1・・・東海道の風景

 東海道を歩く

 

 今回から、再び「歩き旅のスケッチ」を始めます。歩く道は東海道。江戸期になって整備がすすみ、多くの人々が往き交いました。江戸日本橋と京の都三条大橋を、53か所の宿場で結ぶ、往時の重要な街道です。

 有名な五街道の中でも、圧倒的な存在感がある東海道鈴鹿の山越え、七里の渡し、薩埵峠(さったとうげ)からの富士山の絶景など、その魅力は尽きません。

 

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※興津宿・由比宿の間にある 薩埵峠から見た富士山。*1

 

 私たちは、昨年の暮れ*2中山道との追分がある草津の宿場から、一路、江戸に向けて出発しました。京と草津の間については、中山道と重なるため、今回は省略です。草津追分から、51の宿場をつないで江戸日本橋を目指します。

 私たち夫婦の街道歩きは、時間がある時に、少しずつ歩みを刻みながら歩きつないでいく方法です。そのために、全ての区間を歩くにはそれなりに時間がかかります。特に今年は、新型コロナウイルスの影響で、屋外に出ることも躊躇する時期もありました。

 そんな中でも、タイミングを見て歩き刻んで、ようやく静岡県の蒲原宿(かんばらじゅく)まで辿り着くことができました。残すところ、あと3分の1ほどの行程です。

 江戸までは、まだもう少し時間がかかるとは言うものの、富士山の雄姿を見ることができ、終着点が見通せる段階となったことから、今こそ、東海道のブログを始める時と考えました。

 

 今回から、30回ほどのシリーズで、先ずは東海道の第1章。近江から伊勢・尾張三河の国を経て、遠州に至るまでの街道の風景をお伝えしたいと思います。

 

 

 中山道

 東海道に入る前に、少しだけ、中山道について記します。今回から再開する「歩き旅のスケッチ」の最初のシリーズは、中山道を取り上げました。中山道のブログは、昨年秋から今春(2019年~2020年)まで、都合50回にわたって紹介してきたところです。

 京の都、三条大橋から、近江・美濃を経て、木曽・信濃・上州と、幾つもの峠を越えて、武州から江戸日本橋まで歩きつないだ足跡の紹介です。

 69か所の宿場を擁する中山道は、およそ530Kmの道のりです。京都から美濃の国の御嶽宿までは、多少の峠道はあったものの、比較的平地歩きが中心でした。ところが、その先は、山また山の険しい道が続きます。

 

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追分宿近くから見た浅間山

 

 そして、江戸に向かう最後の難所、信州と上州を隔てる碓氷峠を越えた後は、再び歩きやすい平地です。

 変化に富んだ中山道。険しい道もありますが、昔ながらの街道筋や宿場など、往時を偲んで歩くことができる魅力ある街道です。また、浅間山御嶽山など、雄大な自然も味わえます。中山道を踏破した後、これを超える街道は他にはない、と思えるほどの満足感がありました。

 そして、次は東海道。どんな発見があるか楽しみです。

 

 東海道

 中山道と比較して、東海道は沿線の開発が進んでいます。そのために、昔ながらの街道は、それほど残っていないと思っていました。今や、整備された国道1号線が東海道である、という認識です。

 ところが、草津の宿場を後にして歩き進むと、意外にも、旧道が良く残されていることに驚きました。勿論、国道の歩道を延々と歩かなければならない区間もありますが、思った以上に、街道の名残を味わうことができるのです。

 

 特に、中山道の街道筋と違うところは、松並木の多さです。愛知県から静岡県にかけては、至る所に並木道が残っています。神奈川県でも大磯や藤沢の松並木は有名で、街道に思いを馳せる人々に見守られている様子が窺えます。

 

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御油の松並木。

 

 一方で、宿場町は中山道の方が優れているように感じます。木曽路にある妻籠宿(つまごじゅく)や奈良井宿(ならいじゅく)は、江戸時代にタイムスリップしたような、昔のままの雰囲気が味わえます。また、近江路や信濃路でも宿場町の様子が偲ばれるところは、中山道では少なくありません。

 それに比べて東海道では、宿場町の姿は変貌している状況です。わずかに、三重県の関宿は、よく保存されていて、多くの観光客が訪れます。また、近江路の土山宿(つちやまじゅく)や三河の二川宿(ふたがわじゅく)は、何とかその姿を留めている感じです。これら以外に、宿場町の面影を感じるところもありますが、多くは、街の中に埋没し、そうした宿場は、今はその名残を感じることはできません。

 

 それでも東海道は、景観が素晴らしく、中山道とともに魅力のある街道です。また、歴史の遺構も数多く、往時を想いうかべて歩くことも楽しみのひとつです。

 鈴鹿の峠越え、木曽三川の川渡り、浜名湖からの富士山の遠景、牧之原台地の茶畑の歩みなどは、なかなか経験できない歩き旅の一コマとなりました。また、熱田神宮は、東海道最大級の宿場町、宮宿(みやじゅく)のすぐ傍にあり、”越すにこされぬ大井川”の左岸には、川越の遺跡なども残されていて、寄り道をしてでも訪れたいところです。

 

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鈴鹿峠

 

 弥次喜多道中で知られる、江戸時代の小説、「東海道中膝栗毛」は、弥次郎兵衛と喜多八という2人の旅人が、東海道を旅する物語。江戸から伊勢参りに向かう道中で、色んな事件に出合いながら旅を続ける彼らの様子は、かつての歩き旅の過酷さを露ほども感じることなく、むしろ滑稽な気まま旅そのものです。

 私たちの歩き旅も、この2人とよく似たもので、気ままに、楽しみながら江戸日本橋に向かいます。

 

*1:正真正銘、私が写した映像です。絶好の天候で撮れたので感動しました。

*2:2019年