旅素描~たびのスケッチ

気ままな旅のブログです。目に写る風景や歴史の跡を描ければと思います。

出会い旅のスケッチ8・・・ジャック・ロンドン

 ジャックロンドンの故郷

 

 映画「野生の呼び声」が公開されました。この映画の原作者は、アメリカの作家、ジャック・ロンドン。20世紀の初頭に出版された、同名の小説の映画化です。

 ジャック・ロンドンの故郷は、サンフランシスコ近郊の都市、オークランド。以前、「気まま旅のスケッチ5」で、少し紹介しましたが、今回の映画化を知り、もう一度、振り返ってみたくなりました。

 

 

 オークランド

 昨年夏(2019年)、サンフランシスコにほど近い、アラメダという町に短期滞在していた私たちは、何度かオークランドを訪れる機会がありました。

 オークランドは、サンフランシスコから、ベイブリッジでひとまたぎ。それこそ、目と鼻の先のような位置関係。アラメダとも隣接し、気軽に立ち寄れるところです。

 ただ、サンフランシスコと比べると、目立った観光地がないために、一般には訪れる機会は少ないかも知れません。MLBのアスレチックスは、このオークランドが本拠地です。

 

 ジャック・ロンドン・スクエア

 オークランドの海沿いは、サンフランシスコ湾の一角が、運河のようになったところです。海の先はアラメダ島。そして、湾の向こう岸が、ビジネスの一大拠点、サンフランシスコです。

 この、海沿いにある、ウオーター・フロントの公園が、ジャック・ロンドン・スクエア。「野生の呼び声」の作者の名前を冠した公園です。

 

f:id:soranokaori:20200223093010j:plain
f:id:soranokaori:20200223092510j:plain

※左、ジャック・ロンドン・スクエアからアラメダ島を臨む(左手対岸。その向こうの山並の麓は、サンフランシスコ)。右、スクエアへの導入路。

 ジャック・ロンドン・スクエアには、散策路をはじめとして、幾つかの高級そうなレストランや土産物店などが並んでいます。また、サンフランシスコと結ぶフェリーの波止場もあって、船で対岸に向かう人達の、重要な交通の拠点ともなっています。

 そして、その波止場のすぐそばには、ジャック・ロンドンの像。オークランドの海を駆け抜けた思い出を背負いながら、人生を語りかけている様子です。

 

f:id:soranokaori:20200224112206j:plain
f:id:soranokaori:20200224112255j:plain

※左、ジャック・ロンドン像。右、フェリーの船着き場。

 

 ジャック・ロンドン

 ジャック・ロンドンは、1876年に、サンフランシスコで生をうけました。その後、家庭の事情で、ベイエリアと呼ばれる、サンフランシスコ湾に面した地域を転々として、生活を送ります。

 若い頃には、オークランドが生活の拠点。この地で、苦労を重ねて成長します。

 ジャック・ロンドンは、サンフランシスコ湾で、様々な行動を繰り返しながら、仕事を転々として、貧しい生活をしのぎます。果ては、カナダ北方やアラスカの旅へ。ゴールド・ラッシュにも、夢を託したということです。

 

f:id:soranokaori:20200223094139j:plain
f:id:soranokaori:20200223093756j:plain

ジャック・ロンドン・スクエア周辺の街。

 

 「野生の呼び声」

 今回映画化された「野生の呼び声」は、街中で優雅に暮らしていた犬が、カナダ北部の厳寒の地で、”犬そり”のリーダーとして君臨し、最後には野生化してしまう、バックという犬の半生を描いた物語。

 この小説とは反対に、オオカミの血をひいて、野生で暮らした犬、ホワイト・ファングが、次第に人間世界に飼い慣らされ、遂には屋敷の中で生涯を終える「白い牙」。

 ジャック・ロンドンの、この2つの小説は、犬の視点で物語が進展する、一風変わった作品です。

 

 いずれの小説も、カナダ北部の厳しい冬の光景が描かれていて、大自然の中で勇敢に生きぬく人々や、犬たちの姿が、強烈な印象を与えます。

 自身が生きぬくために、大海原の航海や、氷雪の踏破を経験した、ジャック・ロンドンならではの世界が広がります。

 

 オークランドの誇り

  今日、オークランドの海辺近くには、ジャック・ロンドン・スクエアだけでなく、彼の名前を冠した、施設なども見られます。そのひとつが、鉄道のジャック・ロンドン・スクエア駅。この駅からは、シリコンバレー方面や、カリフォルニアの州都サクラメント方面に向かう路線があるようです。

 ジャック・ロンドンが、若い頃に暮らしたこの地域。街全体が、才能ある作家の功績を称えているようです。

 

f:id:soranokaori:20200223093306j:plain
f:id:soranokaori:20200223093320j:plain

ジャック・ロンドン・スクエア駅

 

 写真はありませんが、ジャック・ロンドン・スクエアの中には、彼が暮らしていた、小さな小屋のような家が展示されています。19世紀の後半は、この辺りが、海辺の寒村であったことを想像させるような、貧祖な家。

 今では、近代的な施設や建物が立ち並び、時代の変遷を感じます。

 

f:id:soranokaori:20200223093652j:plain
f:id:soranokaori:20200223093556j:plain
f:id:soranokaori:20200223093657j:plain

ジャック・ロンドン・スクエア内。

 

 ジャック・ロンドンは、40歳という若さでこの世を去りますが、その後半は、ベイエリアから少し離れた、北部の町に居を構えていたとのこと。その町には、今も彼を偲んで、ウルフ・ハウス(Jack London's Wolf House)という施設が残されているようです。

 

 そう言えば、「野生の呼び声」のバックと、「白い牙」のホワイト・ファング。小説では、その結末で、彼らの子孫の存在を匂わせます。若くして、命絶えたジャック・ロンドン。彼自身、次の世代に、自身の夢を託したのかも知れません。