旅素描~たびのスケッチ

気ままな旅のブログです。目に写る風景や歴史の跡を描ければと思います。

出会い旅のスケッチ7・・・リルーエットからバンクーバーへ

 リルーエットを後に

 

 リルーエットでは、念願のミヤザキ・ハウスを訪れることができました。そして、地域の人達が、ドクター・ミヤザキに寄せる思いも、感じとることができました。

 ドクター・ミヤザキの功績を後世に伝えるために、この施設は、これからも大きな役割を果たしてくれることでしょう。遠くから、いつまでも、見守っていければと思います。

 私たちは、リルーエットを後にして、フレーザー川の流れに沿って南下です。来た時とは別ルートで、バンクーバーを目指します。

 

 

 ドクター・ミヤザキのエピソードなど

 最後にもう一度、ドクター・ミヤザキについて、触れておかなければなりません。そのひとつは、エピソード。

 もともと、医師のいなかったリルーエットの町に招へいされたミヤザキ医師。おそらく、長い間、たった一人の医師として、孤軍奮闘されたことでしょう。

 

 特筆すべきエピソードは、リルーエットを取り囲む地域での、往診についてです。ミヤザキ医師は、患者のもとへ行くために、100Kmもの山道であっても、馬にまたがって駆け付けたということです。また、湖をボートで渡り、対岸の山道を徒歩で登って、患者のもとへ行ったとも。

 

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※リルーエット近くの山。

 

 冬になると、雪深いに違いないリルーエット。町の中だけでなく、山中に暮らしていた人も少なくなかったことでしょう。特に、先住民の人々は、自然と一体化した生活を送っていたのだと思います。

 急を要する患者のもとへは、例え雪山のような過酷な条件のところであったとしても、労力を惜しまず、医療の提供に尽力されたということです。*1

 

 もうひとつ、記しておきたいこと。それは、町のひとつの教会で、ドクター・ミヤザキのことも含めた、資料などが見られるということです。私たちは、週末の夕方から翌朝までの、短い時間の滞在で、残念ながら、この教会を訪ねることはできませんでした。

 次回、再びリルーエットを訪ねる機会があれば、ぜひとも訪れたいと思います。

 

 帰路へ

 名残惜しくはありますが、私たちは、リルーエットに別れを告げて、帰路につきました。往路は、99号線に沿って、海側の道から山道へ、ウイスラー経由のドライブでしたが、今度は、山中を、フレーザー川に沿って南下です。ひとつの山脈をぐるりと一周するように、バンクーバーに戻ります。

 

 

 

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※町から、フレーザー川を越えて振り向くと、山裾に連なる、リルーエットの町が見渡せました。

 

 99号線は、フレーザー川を越えたところで左折して、北方向に向かいます。この交差点を右折して、南に向かうのは12号線。私たちは、12号線に乗り換えて、リットンという小さな町に向かいました。

 来た時と同様に、車はほとんど見かけません。たまに追いついてくる車は、猛スピードで追い越して、先に駆け抜けて行ってしまいます。

 フレーザー川の左岸には、来るときには、はあまり見かけなかった農地などもありました。ところどころに、民家なども点在し、安心して運転できる道筋です。

 

 リットン

 1時間近くのドライブで、リットンの町に到着です。この町は、リルーエットよりもコンパクト。一方で、家並は密集した感じです。

 12号線は、この町のメインストリートのようになっていて、道路沿いにはお店なども見かけます。ただ、この日は休日の朝。町の中は、ひっそりとした雰囲気です。

 12号線から、一筋右方向に入っていくと、そこは広場のようになっていて、フレーザー川の美しい景色が見えました。

 深い山の中を、ゆったりと流れるこの川は、流域に数々の恵みをもたらしながらも、時に、土地や財産を奪い取る、厳しい川でもあるのでしょう。川の蛇行に削られた、谷の岩肌を見ていると、自然の雄大さを感します。

 

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※リットンの町中の広場から見られる、フレーザー川

 

 1号線へ

 ブリティッシュ・コロンビア州の主要道路である1号線は、東の方角から延びてきて、リットンへ。その後、12号線を吸収して、フレーザー川伝いに南下します。

 私たちも、リットンの南の町はずれで1号線に。一路南に向かいます。

 この辺りの1号線は、フリーウエイというよりも、日本の国道のような道。時々、町に入ると、制限速度も抑制されます。

 快適なドライブの途中のこと、山が迫ったところで、前を走る車が減速しました。不思議に思ってスピードを緩めると、その先に、数台の車が渋滞中。事故かとも思ったものの、少し様子が違います。よく見ると、子熊を抱えた女性の姿が見えました。

 道に迷い、道路に出てきた子熊を助けている様子。日本では、考えられない光景です。

 

 ハリソン・ホットスプリング

 私たちは、1号線を南下して、ホープという町の直前で、右方向へ。フレーザー川の右岸を延びる7号線に乗り換えて、ハリソン・ホットスプリングに向かいました。

 この町は、バンクーバーからほど近く、たくさんの観光客が詰めかけます。

 ハリソン湖に面した湖岸は、風光明媚。のんびりとくつろぐ人、ウォーキングをする人たちが、休日の午後を楽しむ姿が見えました。

 ここは、ホットスプリングということで、温泉プールもあるようです。リゾートマンションや、ホテルなど、意匠を凝らした建物も数多くありました。

 

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 ※ハリソン・ホットスプリングの風景。

 

 バンクーバー

 ハリソン・ホットスプリングを後にして、再び7号線へ。見晴らしの良い山道や、フレーザー川に沿った畑地などの景色を楽しみながらのドライブです。

 いつのまにか、交通量が増えてくると、郊外型のショッピングセンターや沿道サービスの店舗などが現れて、辺りは、次第に街の景色に変わります。幾つかの町を通り過ぎると、バンクーバー。ドライブの出発点に到着です。

 

 今回の旅の目的は、山深いリルーエットの町で、ドクター・ミヤザキの活躍の拠点、ミヤザキ・ハウスを訪れること。この邸宅が、地域の人達の努力によって、今も大切に守られている様子を拝見することができました。

 それと同時に、日本から海を渡り、その生涯を異国の地に捧げられた人々に、想いを馳せる機会ともなりました。

 遠いカナダで、祖国を同じくする人の生き様は、多くのことを暗示してくれているように思います。

 

 

*1:「出会い旅のスケッチ5」で、紹介したように、「国際文化研究への道」という書籍の中で、そのエピソードは紹介されています。