旅素描~たびのスケッチ

気ままな旅のブログです。目に写る風景や歴史の跡を描ければと思います。

歩き旅のスケッチ[熊野古道]7・・・近露王子と発心門王子

 車の移動

 

 私たちの熊野古道歩きの計画は、中辺路を完歩して、熊野本宮大社に向かうというものでした。ところが、出発地点の滝尻王子から、牛馬童子口までの行程が余りにも厳しくて、とても続けて、すべての道を歩くことは、不可能と思うようになりました。

 そのために、中辺路の後半は、古道近くの旧道を、車を使って移動です。そして、最後の区間となっている、発心門王子から熊野本宮大社まで、再び徒歩で進みます。

 今回は、つなぎの区間。近露の里から発心門王子まで、車移動の道のりの紹介です。

 

 

 近露王子

 近露の里に下り立って、日置川(ひきがわ)の橋を渡ると、すぐ左手に、近露王子がありました。

 近露王子は、かなり古くからの王子として、記録にも残っているようです。ところが、位置的には、変遷があるらしく、詳しいことは不明です。日置川という、熊野の谷を縫う川は、時折氾濫を繰り返し、周囲の地形を少しずつ変えるとともに、王子の位置も移動を重ねてきたのだと思います。

 

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※近露王子の入口。

 

 近露王子は、道の左の少し小高い場所あり、石段を上って向かいます。上にあがると、平らな広場になっていて、幾つかの石碑や歌碑が置かれています。奥の方には、表示板などもありますが、祠の姿は見えません。その昔、旅の合間に、歌会などが行われていたということで、近露は、長い旅の道中の、安息の地だった様子です。

 

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※近露王子。

 

 近露から牛馬童子口へ

 私たちのこの日の古道歩きはここまでです。あとは、車を停めた、道の駅熊野古道中辺路まで、路線バスで戻ります。

 

 この辺りを走るバスは、明光バス龍神バスの2社があり、本数は少ないものの、上手く時間配分されているため、便利な交通手段です。

 ただ、一方の路線バスしか停まらない停留所もあるようで、少し注意が必要です。近露王子のバス停もその一つ。明光バスは、すぐ近くの、なかへち美術館前のバス停まで行かなければなりません。

 

 私たちは、なかへち美術館を右に見て、その少し先のバス停留所へと向かいます。美術館前と名付けられたバス停ですが、その場所は、わずかに美術館の南側。バス停留所とはいうものの、かなり大きなところです。バスターミナルのような大きな敷地は、熊野古道のバスの中継基地なのかも知れません。

 

 車の移動へ

 この日は、牛馬童子口から歩き始めて、近露まで、1時間ほどの行程でした。後は、道の駅までバスで戻って、駐車してある車に乗って、中辺路の旧道を辿ります。

 

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牛馬童子のモニュメントがある、道の駅熊野古道中辺路。

 

 野中の清水

 道の駅から車に乗りかえ、国道311号線を近露へと戻ります。近露の集落に近づいて、日置川を越えた所で、左方向の旧道へ。そこからしばらく、山際の細い坂道を進むのです。

 途中、熊野古道と重なる場所では、古道歩きの方の姿も見えました。私たちは、車でこの区間を進みます。 

 しばらく、先へと向かって行くと、民家は無くなり、斜面沿いの木々が覆う道へと変わります。やがて、左手に、鮮やかな朱塗りの欄干が目に止まり、少し開けた空間が広がります。

 

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※野中の清水。

 

 この場所が、野中の清水。欄干の向こうには、清らかな湧水が流れる、小さな池がありました。

 この池は、古くから知られた名水で、真上の崖地を熊野古道が通っています。古道を歩く旅人たちは、ここまで下って水を飲み、喉を潤していたということが、傍に置かれた説明板に書かれています。

 

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※野中の清水脇の説明板。

 

 一方杉と継桜王子

 説明板にもありますが、野中の清水の上方に、野中の一方杉があるようです。一方杉は、何本かの杉の大木が、片側だけに枝を付けた、不安定な姿をした樹形です。その不思議な形が好まれて、名所と言われるようになったのか。理由は良く分かりませんが、その傍の継桜王子とともに、この辺りの熊野古道の見どころです。

 私がかつて、中辺路を訪ねた時、この一方杉と野中の清水を訪れました。深い山の奥にありながら、歴史が語り継がれている現実に、いたく感銘を受けたものでした。

 

 旧国道

 熊野古道は、この位置から15Kmほど、深い山の中を辿った先で、発心門王子(ほっしんもんおうじ)に至ります。

 この間の道筋は、おそらく、大変な行程だと思います。道案内などを読んでいると、本来の古道ではなく、迂回路などもあるようです。私たちは、体力的な問題で、この区間はパスをさせて頂きました。

 しばらくの間、国道の旧道を車での移動です。心細くなるような山の道。かつては、この道を多くの車が往来していたのでしょう。

 3Kmほど走った先で、ひとつの王子がありました。小広王子だったと思うのですが、写真も撮らず、はっきりと思い出すことはできません。何れにしても、その先で、旧国道は右に折れ、新国道311号線に入ります。

 

 川湯

 私たちは、国道を快適にドライブし、この日の宿泊地、川湯温泉に向かいます。

 川湯温泉は、一度は訪れてみたい土地でした。清らかな川の中に温泉が湧いている光景は、テレビではよく目にします。昨日の疲れた体を癒すのに、絶好の温泉地となりました。

 

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川湯温泉。川に面した露天風呂も。

 発心門王子へ

 発心門(ほっしんもんおうじ)から、熊野本宮大社に向かう道は、熊野古道随一の、人気のルートです。翌日は、朝から再び、この熊野古道を歩きます。

 先ずは、川湯温泉の宿の方の計らいで、宿の車と、発心門王子に向かう2組の車とで、熊野本宮大社の駐車場に向かいます。その後、2組の車を駐車して、宿の車に乗り込みます。そこから、20分ほどをかけ、熊野本宮大社の奥にある山中へと向かうのです。

 そして、いよいよ、発心門王子です。王子前で降車して、そこから熊野古道の最後の区間を歩きます。

 宿の親切な計らいは、熊野古道の人気にも一役買っているのだと思います。そのサービスが無い場合には、路線バスを使います。時期が良ければ、きっと、多くの観光客が訪れる場所なのだと思います。

 

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※発心門王子。

 

 私たちは、発心門王子に祈りを捧げ、熊野古道の最終区間に向かいます。