旅素描~たびのスケッチ

気ままな旅のブログです。目に写る風景や歴史の跡を描ければと思います。

巡り旅のスケッチ(四国巡拝)41・・・阿波路(22番→21番)

 空海の修行の地へ

 

 阿波の国は、吉野川を境にして、南北に深い山地が広がります。北は讃岐につながる山々で、南は、阿波一帯から、土佐にまで続きます。

 空海が、都での勉学を辞した後、修行の地と定めたところが、阿波に広がる山地です。標高こそ、それほどでもない峰々ですが、鬱蒼とした森が幾重にも連なります。

 どのようにして、このような厳しい場所で修業を続けることができたのか。その過酷さは、私には想像もつかない世界です。

 

 

 阿南市

 23番薬王寺を後にして、再び国道55線を北上です。私たちは、この日の霊場巡りに区切りをつけて、ひとまず、阿南市のホテルに向かい、翌朝に、次の札所に向かいます。

 阿南市は、四国の東端に位置する小さな都市ではありますが、火力発電所が幾つかあって、海沿いは、工業地域の様相です。海辺近くや、山間の集落には、農地も広がり、それぞれに独特の風景を奏でます。

 阿南市にある、四国八十八か所霊場は、22番平等寺(びょうどうじ)と21番太龍寺(たいりゅうじ)。前者は、山里にひっそりと佇んで、後者は、深い山の頂近くに境内を構えます。

 

 平等寺

 阿南市の海岸から、西に向かって一山超えると、新野(あらたの)という集落に入ります。桑野川の流域に、小さく開けた盆地には、山里という言葉がよく似合う景色が広がります。

 平等寺は、集落の北に連なる、低い山を背にするように境内が設けられ、入口の仁王門は、集落に向かって両手を差し伸べるように参拝者を迎えます。

 

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 ※左、平等寺の入口辺りと仁王門。右、金剛力士像。

 

 平等寺の門前は、集落内の道路が走り、駐車場は、道路を挟んだ向かいです。少し広めの駐車場であるために、門前は、空間が開けたような明るさを感じます。

 仁王門は、幅の広い石段を少し上った位置にあり、石柱や常夜灯、そして、正面を見定める赤膚の金剛力士像などが、来る人の目を引き付けます。

 

 平等寺

 仁王門をくぐった先の両脇には、お堂や鐘楼が並びます。境内の中ほどの左側が大師堂で、右側が、納経所。そして、正面には真っ直ぐに石段が延びていて、その先にあるのが本堂です。

 本堂に上がる石段には、右に弘法大師像、左は観音様の像なのか、2つの像が参拝者をお迎えされている様子です。

 

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 平等寺は、集落の方々が境内の手入れなどをされていて、地域に親しまれている様子です。

 本堂の石段を上る左側には、小さなお堂が建っていて、地域の方がお世話をされる光景が、印象深く残っています。

 後々知ることになったのですが、このお堂は地蔵堂と呼ばれていて、そこには、弘法大師ゆかりの泉があるようです。

 私たちは、順序通り、本堂の参拝を終えた後、石段を下って大師堂の参拝です。

 

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※左、本堂。右、大師堂。

 平等寺という寺院名は、親しみが持てる名前です。どの人にも平等に、救いの手を差しのべるという、親鸞聖人の教えにも通じるようなこの名称。それでも、平等寺は、れっきとした真言宗の寺院です。

 

 四国山地

 平等寺の次の札所は、21番太龍寺(たいりゅうじ)。新野の集落を出て少し北上し、国道195号線に入ります。その後、一路西に向かって進んでいくと、道筋は、次第に両側から山が迫る谷間の道へと変わります。

 ところどころに民家などが点在し、小さな集落が現れては過ぎ去る道を、少しずつ、標高を上げながらのドライブです。

 四国山地は、鬱蒼とした木々が山々を覆い尽くすような状況で、湿気に満ちた空気感が漂います。

 

 那賀町

 やがて、盆地のような、少し開けたところに出てくると、そこは那賀町というところです。那賀町は、徳島県の南に広がる、四国山地の真っただ中に位置していて、町域の大半は深い山。その町域の中央辺りに、那賀川が蛇行しながら東進します。

 

 ロープウエイ

 那賀町に入って間もないところで、国道を右折して、那賀川の方向に向かいます。その先を進んだところが那賀川で、橋を渡って右折した後、大きく左方向に回り込んだ先の右側に、広々とした駐車場がありました。

 この駐車場は、太龍寺ロープウエイと道の駅の駐車場。私たちは、ロープウエイを利用して21番目の札所に向かいます。

 

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太龍寺に向かうロープウエイ。

 

 太龍寺への道

 太龍寺を訪れるには、私たちが今回利用した、ロープウエイを利用する方法と、太龍寺の山の裏手(東側)からアクセスする方法があるようです。

 私たちが、数年前に来た時は、裏側から車で上ったものでした。ただ、結構な山道を上らなくてはならない上に、駐車場から太龍寺まで、およそ1Kmの山道を歩かなければなりません。

 今回は、時間の都合も考えて、極めて楽な方法で参拝することにしたのです。

 

 太龍寺ロープウエイの山麓駅は、立派な建物となっていて、土産物店や幾つかの展示スペースなどもありました。この施設は、道の駅も兼ね備え、一般ドライバーなど、多くの人が利用されている様子です。

 

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※ロープウエイから、那賀町那賀川山麓駅を望みます。

 

 ロープウエイから俯瞰すると、丁度、那賀川が大きく蛇行した位置に、麓駅が設けられている様子が分かります。川の向こうは、那賀町の町や農地が広がって、その先は、幾重にも重なる四国山地が望めます。

 

 いよいよ、空海が修行を重ねた、ゆかりの地へと向かいます。