室戸岬へ
室戸岬は、弘法大師信仰の重要な聖地とも言える場所。空海の足跡は、伝記などにも書かれていますが、室戸の地での修行については、間違いのない事実だったと思います。
今でこそ、道がつながり、人が往き交う場所ですが、8世紀の時代には、人里から遠く離れた、未開の地であったことでしょう。自然しかない孤独な土地で、空海は何を求めて修行をしたのか。私などには、想像もできない世界です。
室津の漁港
金剛頂寺の山を下って、再び国道55号線に入ります。ここら先は、一気に南下し、室戸岬へと近づきます。
続く札所は、25番津照寺(しんしょうじ)。岬へと向かう途中の、室津という町にある霊場です。
室津には、漁港があり、その港を望む丘の上に津照寺は佇みます。
※津照寺の入口辺り。
津照寺の入口辺りは、漁港に面したところです。道幅が、極端に変わる角のところに、導入路が設けられ、その先に山門が望めます。
駐車場は、導入路から少し西の方角の、漁港の付け根辺りにあるようですが、港に沿った幅広の道路にも縦列駐車が可能です。私たちは、道端に車を停めて、津照寺に向かいます。
※津照寺山門。
津照寺の山門は、朱塗りの単純な造りです。門の先の右手には、納経所と大師堂がありました。
本堂へは、丘の上に真っ直ぐ延びる石段を上がります。石段の途中には、色鮮やかな、異国風の鐘楼門(仁王門でもあるようです。)が待ち構え、独特の景観を放ちます。
※本堂への石段と仁王門。
本堂と大師堂
本堂までは、鐘楼門をくぐった後、さらに石段を上らなければなりません。相変わらず、急な階段を上った先の、狭い頂上のような空間に、小さな本堂がありました。
津照寺の本堂は、コンクリート造りのような建物です。この本堂の参詣は、左の入口を開け、お堂の中で行います。帰路は右側の出口から。参詣者は、一方通行で進みます。
津照寺の大師堂は、山門の近くです。急勾配の石段を、もと来た入口の方へと下り、山門の手前まで戻ったところの左手が、大師堂。そして、そのすぐ脇が納経所という配置です。
※左、津照寺の本堂。右、大師堂。
港を照らす寺院
津照寺は、その名の通り、津(港)の位置を指し示す、灯台のような役割があるようです。大海に漕ぎ出た船が、室津の港に戻る時、時として、津照寺の本堂に揺らめく燈明を頼りにしていたのかも知れません。
あるいは、船の安全を祈願する、よりどころとなる寺院のようにも思えます。この津照寺。本堂のご本尊は、楫取延命地蔵菩薩(かじとりえんめいじぞうぼさつ)ということで、大変珍しいお名前です。
室戸スカイラインへ
逆回りの四国八十八か所の巡拝も、いよいよ、土佐の国の最後の札所、24番最御崎寺(ほつみさきじ)へと向かいます。
最御崎寺の境内は、室戸岬の最先端。室戸岬灯台の、すぐ後ろにある崖地の中に、その姿を隠します。
津照寺を出た後は、海岸伝いに南に延びる、国道55号線を南下です。風景は、次第に南国の香りが漂って、心地よい潮風を楽しみながら、快適なドライブを楽しみます。
やがて、岬の少し手前に、最御崎寺への導入路を示す表示板が現れます。そこから、国道を左にそれて、新しく整備された道路のような、急坂の美しい道を上ります。
室戸の崖地に貼りつくように設けられたこの道路。室戸スカイラインと呼ばれていて、名前の通り、空の方に駆け上るような道路です。
最御崎寺へ
室戸スカイラインからの眺望は、それこそ、見事という他ありません。室戸の町や漁港が連なる海岸線と、壮大な海へとつながる土佐湾の優しい水面が印象深い光景です。海と山、山と空、そして、海と空の境界は、いずれも独特な線が描かれて、いつまでも見つめていたい絶景です。
崖下に広がる景色を背にした先で、スカイラインは、深い森の中に吸い込まれていくように、左へと大きくカーブを描きます。そのカーブを越えた右側に、灯台と、最御崎寺を訪れるための駐車場がありました。
私たちは、駐車場で車を停めて、道路右の森の中へと踏み込みます。
※駐車場から境内への入口。
境内への道
森の中への入口には、左側に石段が延びていて、右側は、緩やかなスロープです。どちらの道を通っても、境内には行けそうですが、案内では、スロープを利用するよう促していたように思います。
私たちは、右側の坂道へと足を運んで、境内を目指します。
しばらく歩くと、前方がやや開けてきて、明るい日が森の中を照らします。左手には、境内を取り囲む塀が現れ、やがて、最御崎寺の建物の屋根などが、次第に姿を現します。
※境内への道。左は、最御崎寺の境内。
左手にお堂などの屋根を見ながら少し進むと、仁王門に向かうための入口が現れます。そして、その先が、24番最御崎寺の境内です。
ここからは、直ぐに境内へと向かうこともできますが、この時は絶好の晴天でした。私たちは、参拝を後にして、先ず、室戸岬灯台を訪れます。
仁王門を左に見て、もう一息、真っ直ぐ進むと、灯台が見える展望所が現れます。そこには、手が届きそうな位置のところに、灯台があり、その向こうには、雄大な太平洋の景色が広がります。
海の果てに、弧を描いて広がっている水平線を眺めていると、地球や宇宙というものが、身近に感じられるような気がします。
空海は、このような地で修業を重ね、自分と世界を見つめておられたのかも知れません。