旅素描~たびのスケッチ

気ままな旅のブログです。目に写る風景や歴史の跡を描ければと思います。

歩き旅のスケッチ14・・・中山道、武佐宿から高宮宿へ

 近江商人のふるさと

 

 近江出身の商人が、全国で活躍したことはよく耳にします。実際には、広く滋賀県出身の商人のことを指すようですが、特に中山道近江路の中央部は、近江商人のふるさととして有名です。

 今回は、近江八幡市の武佐宿から愛知川宿です。道中の五箇荘という町は、まさに近江商人の町のひとつです。

 

 66番武佐宿(むさじゅく)

 近江鉄道武佐駅は、武佐宿の入口近くにあります。JR近江八幡駅から近江鉄道に乗り換えて、次の駅が武佐駅です。近江路は、公共の鉄道を利用して、少しずつ中山道の道のりを刻むことができ、私たちにとってはありがたい区間です。

 駅を降りると、そこが中山道。宿場町は北に延びる街道沿いです。駅近くで、道は少し屈曲しているものの、そこから先はほぼ一直線。真っ直ぐに武佐の宿場は続いています。

 

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※左、武佐宿。右、本陣。

 武佐宿から五個荘(ごかしょう)へ

 武佐の宿場を離れても、昔からの集落が続きます。街道沿いには民家が軒を連ね、道はほぼ真っ直ぐに延びています。歩くには、少し単調な道のりです。途中、幾つかの神社を過ぎると、道は左に折れ、国道8号方面へ。ここから少しだけ国道の歩道を歩き、その後、国道を渡って旧道に入ります。

 山裾の細い道を通り、次に再び国道に戻ると、五個荘に。そこには、国道と旧道の境目に、近江商人の像が建っています。

 

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五個荘の入口。

 

 五個荘

 近江商人の像からは、国道を左に見て、右側が中山道です。真っ直ぐに延びた道を進むと、再び昔ながらの住宅地に入ります。途中には、五個荘を通る中山道の古絵図が描かれた大きな案内版がありました。

 五個荘近江商人を知るためには、国道を横切って、博物館等を訪れる必要がありますが、今回は、中山道を歩くことが目的です。寄り道はせず、ひたすら街道歩きに徹しました。

 五個荘では、所々に残る松などの古木が、街道の情緒を感じさせてくれます。

 

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五個荘の町中。

 

 65番愛知川宿(えちがわじゅく)へ

 五個荘の町は入口から出口まで、様々な表情を持ちながら街道を包み込んでいます。近江商人が活躍した名残なのか、あるいは、街道と生活を共にする歴史が続いたのか、その理由は分かりません。とにかく、中山道を歩く者にとって、この町は興味をひかれる道筋です。

 五個荘の後半は、これまでもあったように、古くからの住宅地となっています。家々の間をすり抜けるように道は続いています。そして、愛知川へ。ここからは、国道の橋を渡り、国道8号に沿って進みます。
 国道は、車の往来が激しく、歩くには注意が必要です。そして、間もなく右方向に愛知川宿のゲートが現れます。

 ここまで、武佐宿から10Km、3時間ほどの道のりです。

 

 愛知川宿

 愛知川宿のゲートをくぐると、宿場町に入ります。街道沿いは、小規模な商店や民家が軒を連ねています。途中、交差点には、中山道の宿場絵図などが描かれたモニュメントも配置され、宿場町の名残を感じることができます。

 宿場そのものは、それほど印象深いものではありません。ただ、街道は、かつての道筋が残っているようで、ゆるやかに蛇行する独特の線を描きながら先に進んで行きます。

 

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※ 左、愛知川宿の入り口。右、出口付近。

 

 愛知川宿から高宮宿へ

 愛知川宿を越えると、道幅は少し広がります。しかも、道は真っ直ぐに延びていて単調です。それでも、しばらく進むと、正面に伊吹山を望むことができ、遠景は絶景です。

 街道沿いには、相変わらず民家が張り付いています。この状態は、豊郷に入っても同様です。豊郷は、もともと、間の宿(あいのしゅく)*1でもあったようで、長距離の宿場間の休憩所のような役割だったのでしょう。

 

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※左、愛知川宿から豊郷へ。伊吹山が望めます。右、豊郷の町。


  豊郷はまた、近江商人のふるさとの一つです。道中には、伊藤忠兵衛の記念館がありました。中山道は、商人を育む道でもあったのです。

 そして、アニメけいおんの聖地として有名な、旧豊郷小学校の校舎も街道沿いにありました。道中には、聖地を訪れた人たちなのか、若者の姿もちらほら見かけます。

  

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※旧豊郷小学校けいおんの聖地です。

 

 街道は、のどかな道となり、彦根へと続きます。住宅はまばらになり、農地も広がります。ところどころに、松並木の名残が現れ、街道の雰囲気を盛り上げます。

 

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※左、松並木の名残。右、高宮宿の入口、無賃橋。

 

 彦根市に入ると、再び民家が連なる道を進みます。歩道はなく、車が行き交う中をしばらく進むと、無賃橋の石碑が見えました。この橋は、高宮宿の入口です。

 

 高宮宿

 無賃橋を渡ると、高宮の宿場です。橋のたもとは、少し道が開けた広場のようで、往時の賑わいを彷彿とさせる光景です。

 ここから先は、道は狭く、雑然とした街並みになっています。それでも、ところどころには、歴史を感じさせる建物や寺院、石碑などが点在し、蛇行した街道とともに、かつての宿場の雰囲気を感じることができます。

 宿場の中央辺りには、大きな鳥居がありました。多賀大社*2に向かう鳥居のようで、中山道と多賀への道が交差する、重要な場所だったのでしょう。

 

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※高宮宿。

 

 高宮には、また、近江鉄道高宮駅があります。JRの南彦根駅までは少し距離がありますが、高宮駅は街道から少し東に入ったところです。ここから3駅目が彦根駅。愛知川宿から8Kmで、丁度よい行程の区切りとなりました。

 

*1:歩き旅のスケッチ9で記したように、木曽路の平沢などと同様の機能を演じていたのでしょう。

*2:イザナギノミコトとイザナミノミコトを祀り、この辺りでは有名な神社です。