旅素描~たびのスケッチ

気ままな旅のブログです。目に写る風景や歴史の跡を描ければと思います。

歩き旅のスケッチ10・・・中山道、塩尻峠と和田峠(前編)

峠越え

 

 中山道最大の難所は、和田峠と言われています。この峠は、崖地や急な斜面が続くうえ、下諏訪宿から和田宿まで、宿場間の距離が23Kmに及ぶ長丁場。塩尻峠を越えたと思えば再び急峻な山道です。連続する峠越えは本当に厳しい道のりでした。

 また、和田宿に宿はなく、和田峠越えの行程は、宿泊所の確保にも苦労します。峠を越えて、どのようにつないでいくか、頭を悩ます区間です。

 

 塩尻宿

 木曽路を越え、信濃路に入り、洗馬宿(せばじゅく)から塩尻駅に向かったのは、4か月ほど前のことでした。今回は、塩尻駅からスタートし、幾つかの峠を越えて、立科町にある26番芦田宿まで、2泊3日の行程です。

 

 30番塩尻宿は、駅から20分ほどのところです。国道と旧道とを交互に歩く宿場です。

 今は、宿場の面影はそれほど残っておらず、所々に神社や石碑等が見うけられる程度です。ただ、旧道には、堀内家住宅という由緒ある住居が残っていて、珍しい建物飾りを見ることができました。

 この住居には、下の写真のように、屋根の上に雀飾りと呼ばれる派手な衣装が施されています。雀が羽を広げている姿を模したようですが、これは、かつての家の繁栄を誇示しているとのこと。この飾りの大きさが、屋敷の所有者の富の象徴とか。

 国道に戻ると、中山道を都に向かう一人の男性とお会いしました。この方は、東海道を江戸まで行って、引き続き中山道を都に戻る途中とのこと。こんな旅の方もいるのだと、つくづく感心したものでした。

 

 

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※左、塩尻宿、阿礼神社前。右、堀内家住宅。

 

 塩尻峠へ

 塩尻宿を過ぎて、次は塩尻峠に向かいます。街道は、徐々に上り坂。国道から、再び左にそれて旧道へ。永福寺という立派なお寺が見えてきます。さらに進むと、坂道の両側には集落が。ここの集落も、所々に雀飾りの屋根がありました。そして、さらに坂道を進み、畑地が広がる山裾の丘陵地へと向かいます。

 途中には、小高い丘を削り取った、切り通しのようなところに、長野自動車道がはしっています。この自動車道を直角にまたぐように架けられた橋が中山道。橋から見下ろすと、ちょうど、みどり湖のパーキングエリアが見えました。

 少し進んで、国道20号の下を抜ける地下道をくぐり、一旦山道に入ります。その後、国道と合流。ここで、合流地点近くにある”東山食堂”を見つけて休憩です。

 

 ”東山食堂”を出ると、少しだけ国道の歩道を歩きます。その後は、直ぐに左手の旧道へ。この辺りには民家もありますが、次第に山の中へと入っていきます。

 山道をしばらく上ると、少し開けた場所に行き着きます。ここがもう、塩尻峠です。朝、塩尻駅を出て、およそ3時間、それほど急な坂道でもなく、余裕を持って峠を越えることができました。

 

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※左、塩尻峠を目指す街道。右、塩尻峠。

 

 塩尻

 塩尻峠には、右上の写真にも見られるように、小高いところに上がる階段が。ここを上ると塩尻峠展望台です。展望台は、コンクリートの構造物で、2階か3階ほどの高さの見晴らし台に設けられています。

 展望台からは、岡谷の町と諏訪湖を望むことができます。これまで、山の中や川沿いの道が長く続いたため、湖の景色は新鮮で、また違った信濃路の扉が開いたという感じです。昔の旅人も、諏訪湖の絶景を眺めて、感慨深く、ここで一息ついたことでしょう。

 

 

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※岡谷の街と諏訪湖

 

 下諏訪宿

 今度は、塩尻峠を下り、29番下諏訪宿に向かいます。峠からの下り坂は、そこそこ急な坂道です。塩尻宿から、少しずつ緩やかに上ってきた峠道も、一気に下っていく感覚です。坂を下り、長野自動車道岡谷インターチェンジが見えると、左に石船観音が。そこを左折し、自動車道の高架を越えて岡谷の町中に向かいます。この辺りは、道案内がなく、要注意のところです。しっかりと位置を確認しないと中山道からそれてしまいます。

 岡谷インターチェンジからしばらくは、農地がまばらに散らばる集落です。今井番所跡を越えて、少しずつ、岡谷の市街地に入っていきます。

 中山道は、岡谷の町を縦断するように延びています。主に住宅地の道を進み、やがて、岡谷市から下諏訪町に入ります。国道20号の橋を渡り、旧道へ、そして、大社通りに出てきます。

 下諏訪は、諏訪大社の町でもあり、立派な鳥居が見られます。この通り沿いには、諏訪大社詣での起点となる、観光施設がありました。駐車場横には足湯があり、疲れた足を癒します。

 

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※左、大社通り。右、宿場の入口。

 

 下諏訪宿から毒沢鉱泉

 下諏訪宿は、この施設からすぐのところにありました。宿場の入口には、「中山道下諏訪宿」と記された提灯の案内ゲートが設けられています。

 宿場町は、その面影がほどよく残っています。道も石畳風に整備され、良い雰囲気です。街道の突き当りはT字路で、右に向かうと甲州街道、左が中山道です。つまり、この角が、甲州街道の起終点という訳です。

 T字路を左折すると、下諏訪の古い町中に入ります。そして、諏訪大社の下社春宮です。*1

 中山道は、諏訪大社を左下に見て、国道142号の急な坂道を上って行きます。

 

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諏訪大社下社春宮。

 

 諏訪大社を越え、坂道をさらに上へと進みます。道は諏訪湖を離れ、再び山の方向に。2Kmほど坂を上ると、左手の橋の向こうに毒沢鉱泉宮乃湯旅館*2が見えてきます。この日はここで1泊し、翌日、和田峠に向かうことにしました。

 塩尻駅から下諏訪宿を越え、毒沢鉱泉まで15Kmの道のりでした。

 

 私たちは、和田峠越えの負担をできるだけ少なくするため、下諏訪宿では宿をとらず、毒沢鉱泉まで進むことにしました。わずか2Kmではありますが、翌日、少しだけ気持ちを楽にして、峠に向かうことができました。

*1:T字路を右折して、甲州街道に入るとすぐに、諏訪大社下社秋宮があります。

*2:正規の温泉では無いようですが、鉄分を含んだ茶色のお湯は、疲れた身体を癒してくれました。家族経営の小じんまりした旅館です。