今治の市街地
今治市にある6か所の霊場のうち、残る3か所は市の中心部に位置します。特に、55番南光坊は、今治駅や市役所にもほど近く、隣接する大山祇神社(おおやまづみじんじゃ)とともに、市民の憩いの場のようなところです。
今治市と言えば、今治城やタオルなどが有名ですが、今回は次の松山に向かうため、札所の巡拝に専念します。
56番泰山寺
泰山寺(たいざんじ)は、今治市の中心部からやや西の、まだ農地も残る住宅地の傍に位置します。
直前の栄福寺からは、車で10分ほどの距離。街中の主要道路を北西方向に進み、一路目的地を目指します。途中から住宅地の中の道を縫うように進んで行くと、再び、片側1車線の主要道路に行き着いて、そのすぐ脇に、整備された泰山寺の専用駐車場がありました。
泰山寺は、駐車場から道路を渡り、70mほど奥に進んだところです。車でも入っていけそうな道ですが、その先は極端に道幅が狭くなっていて、往生すること間違いなし。必ず道沿いの駐車場に入られることを薦めます。
※泰山寺への入口。石段を上がった、左側が本堂です。
駐車場から細い道を進んで行くと、美しく積み上げられた石垣と白壁に囲まれた泰山寺の境内が近づきます。
そういえば、この霊場も仁王門はありません。石段の上部に標石があり、その向こう側に、左右に少し細長い境内が広がります。
本堂は、入口の左側。正面は、納経所や宿坊などがある建物です。大師堂は、宿坊の向かい側。境内の配置で言うと、右方向で、集落を背にした位置にありました。
※左、本堂前から見た境内。奥の右手に大師堂があります。右、大師堂。
泰山寺は、集落や農地からは一段高い丘のような位置にあり、境内からは、付近の景色が見渡せます。
大師堂の右方向には、金剛杖をかざした弘法大師像が、凛とした姿で巡拝者を見守ります。またその右側には、不老松と呼ばれる松がありました。かなりの年月を経た古木の切り株は、大師の御手植ということです。今では、さらにその右側に、形の良い若木が育ち、不老松の世代を引き継いでいる様子です。
※弘法大師像と不老松。
55番南光坊へ
次の札所は、南光坊(なんこうぼう)。泰山寺を出て、北東の今治市の中心部へと向かいます。JR予讃線の高架下をくぐってしばらくすると、正面は今治の商店街。アーケードがある賑やかそうなところです。その交差点を左折した先の左手が市役所で、さらに奥に向かうと、今治駅という具合です。
南光坊は、市役所から、200mほどの位置。大通りの左側に、境内は広がります。
※南光坊の入口。
南光坊は、境内の中に駐車場がありますが、正面の仁王門からは車で入ることはできません。仁王門の手前か、その先の細い道を左折して、脇の方から境内に入ります。
南光坊は、隣接する大山祇神社と関係が深く、立派な仁王門のすぐ先には、大きな鳥居がそびえています。大通りに面したところの、神仏2つのシンボルは、ある意味圧巻とも言える光景です。
仁王門を入ると、その先の右側が大師堂、そして、正面奥が本堂です。大師堂がある境内と本堂がある境内の間には、アスファルトの道路が通っていて、少し不思議な感じです。
そういえば、南光坊という名称。「坊」がつく霊場は、四国八十八か所で、ここだけです。調べてみると、「坊」とは、”大きなお寺に帰属する小さなお寺”らしいのですが、この南光坊は、規模的に他の霊場と遜色はありません。歴史の変遷を経て、この名が残っているのでしょう。
※左、右奥の仁王門から手前に入り、写真左が大師堂。右、本堂。
ついでながら、四国霊場の札所の中で、「院」がつく寺院も僅かながら存在します。正式には、68番神恵院(じんねいん)だけのようですが、「院」の場合は、例えば79番天王寺が、別名で高照院(こうしょういん)と呼ばれるように、もしかして、他にもこのような例はあるのかも知れません。
ちなみに、「○○山△△院▢▢寺」という寺院は幾つか存在するようです。
54番延命寺へ
次は、今治市最後の札所、延命寺(えんめいじ)です。今治の中心地から、今度は北寄りに西方向に向かいます。位置的には、56番泰山寺とは僅かに1Kmほどの距離ですが、間に55番を挟むため、迂回しての道筋となりました。
南光坊から延命寺へは、街中の県道を利用して向かう方法と、他に、やや北寄の”いこいの丘”を通る方法の2通りの行き方があるようです。前回、この、”いこいの丘”の道を通った時には、当時話題になっていた、岡山理科大学今治キャンパス(いわゆる、加計学園)の建物群が目に止まり、一種異様な雰囲気を感じたものでした。
今回は、私たちは県道の利用です。市の西部の住宅地を進んだ後、県道から右手にそれて、緩やかな丘のような地形に向かいます。途中、ため池の脇をすり抜けると、その奥に仁王門がありました。駐車場は仁王門の右脇を通り抜けたところです。
※駐車場から仁王門方向を見た様子。
駐車場から境内へは、もう一つ山門をくぐります。山門の先は、真っ直ぐに参道が延びていて、正面の奥、一段高いところに本堂がありました。
※山門。
大師堂は、本堂の手前、山門を背にすると、左側。大師堂も、本堂と同様に一段高いところです。
延命寺は、それほど広い境内ではありません。背後に小高い山が迫っていて、建物は、生い茂る木々に抱かれるように佇みます。
※左、本堂。右、大師堂。
慌ただしく、今治の6か寺の参拝を終えました。次は愛媛県の中心地、松山市へと向かいます。