旅素描~たびのスケッチ

気ままな旅のブログです。目に写る風景や歴史の跡を描ければと思います。

巡り旅のスケッチ(四国巡拝)34・・・土佐路(31番竹林寺)

 五台山と竹林寺

 

  高知市の南東に位置する五台山。高知市を代表する観光地のひとつです。五台山は、市街地にほど近く、市民の憩いの場所でもあるようです。季節によっては、多くの人で賑わいます。

 次の札所の31番竹林寺(ちくりんじ)は、この五台山の中にあり、お遍路さん以外にも、大勢の参拝者が訪れます。

 

 

 五台山へ

 禅師峰寺の山を下って、高知市の市街地方向に向かいます。五台山は、市街地の南東部、浦戸湾の東側の付け根に位置します。小高い山というよりも、市街地近くの森のようなところです。この山を巻き込むように、車の道が整備され、誰でもが、安心して頂上付近まで上れます。

 ただ、注意すべきは、その上り口。浦戸湾に流れ込む、国分川に架かる青柳橋の東詰めには、4本の道が収束していて、どの道を選択するか、よく確認しなければなりません。

 この上り口、道幅が少し狭く感じるために、不安を感じる道ですが、山に入る坂道を進めば正解です。一方通行の坂道を、カーブを繰り返しながら上ります。

 

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竹林寺の仁王門。

 

 竹林寺

 竹林寺は、頂上の東側の斜面に境内を構えます。この辺りには、高知県立牧野植物園の敷地も広がり、駐車場も潤沢です。

 それでも、頂上付近に上ってしまうと、竹林寺の入口までは少し歩かなければなりません。できるだけ、竹林寺の山門付近の駐車場を利用されると良いでしょう。

 この駐車場のすぐ上の斜面には、新しく建設された、寺院本坊の建物が目に入ります。この建物の辺りからも境内に入ることができますが、私たちは、少し坂を下って、仁王門下の石段から境内に向かいます。

 

 竹林寺

 竹林寺の名称は、推測するに、竹林に覆われたところに築かれた寺院ということなのか。余りにも単純な推測ではありますが、あながち間違いでは無いような気がします。 

 私が学生の頃、一人旅で高知を訪れた時、歩いてこの五台山に登ったことを覚えています。その時のことを思い起すと、記憶は定かではないものの、何故か、竹林寺の周囲には、たくさんの竹が覆っていたような情景が浮かぶのです。

 

 それはさておき、私たちは、寺院の正面の入口から、竹林寺の境内に入ります。自動車道路のすぐ傍にある、急な石の階段が、その入口です。石段を少し上ると、立派な仁王門が待ち構えます。

 その先は、幅の広い重厚感ある石段が、参詣者を境内へと導きます。五台山の木々の合間を通り抜ける見事な石の階段は、31番霊場の厳かさを醸し出すような導線です。

 

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※仁王門をくぐった先に延びる重厚な石段。

 

 竹林寺の境内

 石の階段を上り詰めると、石敷きの参道と、周りに砂利が敷かれた、広々とした境内です。石段のすぐ左手が大師堂。右手の奥が本堂です。

 私たちは、順序通り、先ず本堂に向かいます。本堂の建物は、入母屋のような形態で、正面に破風などの意匠はありません。参拝は、木でできたスロープを上って行います。

 

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※本堂。

 

 本堂の参拝の後は、振り返って、その先にある大師堂に向かいます。大師堂の建物は、瓦葺の小さなお堂。本堂と向き合いながら、ひっそりと、石段脇に佇みます。

 竹林寺のひとつの大きな特徴は、大師堂の右上にそびえる五重の塔。朱塗りの美しい姿が印象に残ります。

 

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※左、大師堂。右、境内から五重の塔を望みます。

 

 納経所

 本堂と大師堂をお参りした後、御朱印を頂きます。竹林寺の納経所は、先ほども少し触れた、新しい本坊の建物に併設されたところです。数年前、初めての四国巡拝を行った時点では、この新しい建物は建設真っただ中の状態でした。今回は、真新しい建物が完成し、新鮮な姿を味わうことができました。

 

 牧野植物園

 竹林寺の隣には、県立牧野植物園が広がります。その中に入ったことはないのですが、植物学者の牧野富太郎氏を記念した植物園ということです。

 牧野氏がどのような方なのか、知るよしもなかったものの、後で調べて分かったことは、日本の植物学では第一人者とも言える偉人であったということです。そして、この方の経歴などを調べている時、私の中では、何となく気に掛かることがありました。

 私自身のかすかな記憶を辿ってみると、かつて仕事でお世話になった小学校の先生が、この方の名前に触れられたような気がしたのです。牧野氏は、植物の図鑑を自身の手で作成されるような、実務派の学者です。日本の至る所で、植物の観察を実施され、その昔、私が住む地方の都市にもおいでになった様子です。

 その時に、新種の植物を発見されたということが、かすかな記憶の正体であったのですが、調べてみると、やはり、そのことの記述がありました。

 思えば、不思議なご縁があるものかと、ふと感じた次第です。

 

 五台山からの眺望

 竹林寺からの帰りがけ、途中の道を少しそれると、高知市の市街地が見渡せる展望所がありました。

 四国山地を背景にした、盆地のような地形のところに、その市街地が広がります。土佐の国の中心地、高知城を擁する県都には、よさこい祭りの緩やかな節回しの音が漂っているような情景です。

 

   土佐の高知の はりまや橋で 坊さんかんざし買うを見た ・・・ 

 

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※五台山から見た高知市の眺望。