旅素描~たびのスケッチ

気ままな旅のブログです。目に写る風景や歴史の跡を描ければと思います。

歩き旅のスケッチ[甲州道中]22・・・鶴瀬宿へ

 谷伝いの道

 

 甲府盆地を最短距離で横切ってきた街道は、勝沼宿を過ぎた後、山あいの谷間の道に入ります。果樹の畑も次第に薄れ、それこそ、深い山の道へと向かうのです。ここから先は、甲州道中最初の難所、笹子峠を目指します。

 これまでに、信州から甲州へと歩き進んだ街道は、国境の道でありながら、それほどの難所はありません。ところが、ここから先は、甲州道中の正念場。険しい道が待ち受けます。

 

 

 国道の道

 勝沼宿の先にある、谷あいの道の入口は、柏尾と呼ばれる交差点。街道は、ここで、国道20号線と合流し、この先、車が往き交う国道の坂道を進みます。

 左手は、山の斜面が壁のように立ちはだかって、次第に、その険しさを増す勢いです。国道を挟んだ右側は、日川の流れが、深い谷を削っています。

 しばらくすると、左側の斜面には、大善寺の山門です。見上げると、境内は勇壮で、悠久の歴史を背負った重厚感が漂います。

 

 新選組

 街道は、やがて、ひとつの橋を越えるのですが、その橋の東詰めには、新選組近藤勇の石像がありました。どうして、こんなところに近藤勇が置かれているのか、歴史を知らない私など、不思議に思った次第です。

 よく見ると、石像の裏手には、「柏尾古戦場」の表示板。新選組は、ここで官軍と戦って敗走し、その役割に幕を下ろした、歴史的な場所だったことを知りました。

 

※街道の東側から見た近藤勇の石像。

 谷に入った街道

 街道は、次第に深い谷へと向かいます。辺りには、建物は姿を消して、国道と緑の木々が前面に広がります。

 

※谷間の道となった街道(国道20号線)。

 国道の歩道に沿って歩いて行くと、右側の、車道を渡った道際に、「旧甲州街道一里塚」の表示板がありました。よく眺めても、どこに一里塚があるのかは分かりません。道自体、新しく整備された国道なので、当然と言えるでしょうが、おそらくこの辺りには、江戸より30里目となる、横吹の一里塚があったのだと思います。

 

※横吹の一里塚跡。

 横吹

 一里塚跡を通過して、わずかに先に進んだところで、街道は、谷方向に枝分かれする、旧道に向かいます。旧道への目印は、別れ際のすぐ手前にある、国道の標識です。「東京まで117Km」を示す標識を越えたすぐ先が、旧道への入口です。

 

 

※左、国道20号線と東京まで117Kmの標識。右、横吹の集落へと向かう旧道。

 旧道を下っていくと、その先に、小さな集落が見えました。そこは、横吹の集落で、10軒ほどの建物が、軒を連ねて並んでいます。

 谷あいの、わずかな斜面に切り開かれた集落は、どのような歴史を背負ってきたのか。先祖の土地を引き継いで、今もこの地で、脈々と営みが続けられているのです。

 

 集落を過ぎたところには、旧甲州街道の表示です。大和まちづくり推進会が設置された標識で、横吹も、旧大和村の一部だったことが分かります。*1

 

※集落を過ぎたところに置かれた標識。

 

 崖道

 街道は、その先で、国道下を潜り抜け、国道の上り車線に出て行きます。その先は、資料を見ると、確かに、国道の左上に迫っている、崖地へと進まなければなりません。

 どこに道があるのかも、分からないような崖に近づき、その入り口を探します。

 何とか見つけた入口ですが、その道は、危険を感じる崖道です。少しずつ上って行っても、心細くなるような、不安と恐怖を覚えます。申し訳程度の手摺が据えられ、上る人を誘います。

 ただ、この手摺、ここでは非常に重要です。細道で、バランスを崩してしまえば、崖下に真っ逆さま。手摺を頼りに、祈る気持ちで上ります。

 

※国道横に迫る崖地を上る街道。

 

 聖観音

 崖道を上り切ったところには、少し開けた土地があり、そこには、小さなお堂がありました。聖観音堂と表示されたこのお堂。地域の信仰の場所なのか、或いは、旅人の安全祈願の場所なのか、いずれにしても、今はひっそりと身を隠すようにして、崖地の中に埋もれています。

 

観音堂

 

 鶴瀬宿へ

 聖観音堂を後にして、国道へと下る道に進みます。こち側の下り道、先ほどの上りの道と比べれば、よく整備されているようです。相変わらずの土道ですが、幅は広くて、傾斜も緩やかに感じます。

 それほど時間も経たないうちに、国道20号線に戻ります。国道を振り返って見たところ、そこには、トンネルの出口がありました。見通すと、向こう側には入口があるようで、その距離、100メートルもあったかどうか。

 街道は、わずかな距離のところを迂回して、危険な崖地を辿るルートを、今も残しているのです。 

 

 国道に戻った街道は、新しい集落を越え、次の宿場の鶴瀬宿を目指します。

 

※比較的新しそうな集落を越え、鶴瀬宿に向かいます。

 

 鶴瀬宿(つるせじゅく)

 国道をしばらく進むと、やがて道は、左方向に大きくカーブを描き、次の集落を迎えます。そして、そのすこし先で、街道は、左側の旧道へ。

 ここはもう、鶴瀬の集落です。旧道には、秋葉大権現の常夜燈。鶴瀬の宿場は、この辺りから始まっていたいようです。

 勝沼の宿場からは、およそ5Kmの地点。鶴瀬の宿場を味わいます。

 

※鶴瀬宿の入口辺り。

 

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*1:現在は、甲州市