旅素描~たびのスケッチ

気ままな旅のブログです。目に写る風景や歴史の跡を描ければと思います。

歩き旅のスケッチ[甲州道中]21・・・栗原宿から勝沼宿へ

 ブドウの町

 

 山梨市にある栗原の宿場から、甲州市勝沼宿まで、街道の沿線には、幾つものブドウ園が並んでいます。ブドウ農家の前庭には、大きなブドウの棚も見受けられ、通る人の目を惹きつけます。

 私たちが歩いた時期は、まだ春の頃。たわわに実る果実の姿はありません。それでも、地域全体が、ブドウの果樹に覆われて、その迫力は、忘れることができません。

 いつの日か、秋の風に誘われて、再び訪れてみたいところです。

 

 

 甲州市

 坂道の街道は、徐々に勾配を増しながら、甲州市の町の中を進みます。やがて、等々力(とどろき)の交差点。ここからは、甲斐大和まで7Kmで、山間の町、大月までは27Kmの表示です。

 

勝沼町等々力交差点から東を目指します。

 

 甲州市は、"ぶどうの町"として有名な勝沼町(かつぬまちょう)、温泉や果物などで知られている塩山市(えんざんし)、そして、山間の笹子峠の北に佇む、大和村(やまとむら)が合併し、新しく市政施行されました。

 位置的には、甲府盆地の東の地域と、それに続く山間地帯に広がります。

 街道は、まず、勝沼町の町の中を横断し、勝沼宿を目指します。

 

 ほうとう

 この日の朝、石和宿から歩き始めた街道歩き。勝沼に入った辺りで昼時です。私たちは、甲州で有名な、”ほうとう”のお店を探しながら、ゆっくりと足を進めます。

 実は、先ほどの、等々力交差点の少し手前に、”皆吉”という、有名なお店があったのですが、生憎と、その日は休業日。庭先から、中を覗っていた時に、お店の方が、丁重に、お知らせして下さいました。

 度々、テレビドラマに登場するこのお店、いつかまた訪れたいと思います。

 

 残念な思いを持って、地図を見ながら進んで行くと、次の交差点の左先に、もうひとつ、”ほうとう”のお店があるようです。少し脇道にそれますが、空き腹には勝てません。開店を祈りながら、そのお店へと向かいます。

 

※ 頑固おやじの手打ちほうとう、というお店でほうとうを頂きました。

 

 私たちは、一旦、勝沼地域総合局入口交差点を左折して、しばらく街道から離れます。少し歩いたところには、勝沼中学校の校舎です。そして、そのすぐ先に、その”ほうとう”のお店がありました。

 「頑固おやじの手打ちほうとう」というお店。名前から想像すると、さぞかし怖そうな店主がおられ、気難しい雰囲気なのかと思いきや、優しい感じのお人柄。屋外の席を進めて頂き、美味しい”ほうとう”を頂くことができました。

 ”ほうとう”は、みそ煮込み風のおうどんで、そこに、たくさんの野菜が入った食べ物です。特に、大きなカボチャが特徴で、食べきれないほどのボリュームです。ぜひ一度、味わって頂きたいと思います。

 ちなみに、「頑固おやじ」のお店には、大きなブドウの棚が、庭一面に覆っています。ここも、秋にはブドウ狩りで、大賑わいになるのでしょう。

 

 空腹を満たした私たち、再び街道へと戻ります。この先、道は勾配を増し、さらに山へと近づきます。

 

勝沼小学校前を通る街道。次第に勾配が増していきます。

 旧田中銀行

 勝沼小学校を左に見ながら進んで行くと、少し変わった、洋風の建物がありました。建物前のフェンスには、「旧田中銀行社屋」との表示です。元々は、勝沼郵便電信局の建物だったのですが、後に、山梨田中銀行の社屋として利用されたということです。

 特徴あるこの建物、国の登録文化財に指定されているようです。

 

※旧田中銀行社屋。

 

 勝沼宿

 坂道を進んで行くと、やがて、間口が狭い建物が、軒を連ねる町並みに変わります。おそらく、この辺りから、勝沼の宿場町となるのでしょう。建物自体は、往時の面影は見られませんが、街道の雰囲気からは、何となく、宿場の名残を感じます。

 

勝沼宿の様子。

 

 直前の栗原の宿場から、わずか、3.5Kmの地点です。距離を開けずに、2つの宿場町が並んでいます。

 この宿場町には、本陣1軒、脇本陣2軒、問屋1軒が設けられ、旅籠の数は23軒だったということです。ここも、甲州道中の宿場では標準的な大きさだった様子です。

 

 宿場町を進んで行くと、左手に、「本陣槍掛けの松」と記された、大きな石柱がありました。石柱横の松の木が、槍を掛ける木だったのか*1。とにかくこの地に、本陣が設けられ、立派な建物や門が構えていたのでしょう。 

 

※本陣槍掛けの松。

 街道は、その後道幅を広げます。ところどころに、歴史を感じる建物や、神社なども残っていますが、宿場町の面影はありません。

 山が近づき、いよいよ、甲斐の国の東の山へと踏み込んで行く感覚です。

 

勝沼宿の東側の町並みです。次第に山が近づきます。

 

 甲斐大和

 勾配のある、広い道路を進んでいると、山の斜面や、お屋敷の裏手には、あちこちに果樹園が見られます。この辺りから北側は、まさに、ブドウの里とも言えるような、ブドウ畑の連続です。JR中央本線の駅の名も、「勝沼ぶどう郷駅」という、お洒落な名前が付けられて、辺り一面、甘い空気が漂ってきそうなところです。

 

 ブドウ園を眺めながら、坂道を上った先で、柏尾の交差点を迎えます。前回にも紹介した通り、ここで、国道411号線は、国道20号線に吸収されることになるのです。

 私たちは、柏尾交差点を左に折れて、国道20号線を辿りながら、甲斐大和にある、鶴瀬宿へと向かいます。

 

甲州道中が、国道20号線に吸収される柏尾交差点。

 

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*1:大名などが宿泊した時、目印に槍を掛けておく風習があったようです。