旅素描~たびのスケッチ

気ままな旅のブログです。目に写る風景や歴史の跡を描ければと思います。

歩き旅のスケッチ[東海道]83・・・三島宿から箱根の坂へ

 東海道の最終章

 

 今回から、「歩き旅のスケッチ[東海道]」に戻ります。箱根の山への上り道から始まって、江戸日本橋まで、東海道を歩いてつなぐシリーズの最終章。

 この区間には、名所や観光地が目白押し。最後の”海道”歩きを楽しみます。

 

f:id:soranokaori:20220206111658j:plain
f:id:soranokaori:20220206112316j:plain

※左、箱根の杉並木から芦ノ湖と富士山を望みます。右、藤沢市時宗総本山遊行寺(ゆぎょうじ)。

 

 箱根への道

 三島宿から東に向かう東海道。ほどなく、箱根の山への、厳しい道中が始まります。どこまでも続く坂道は、心が折れそうにもなりますが、この難所を克服すれば、相模の国に入ります。

 伊豆の国から相模の国へ。一歩ずつ、歩みを進めて、箱根峠を目指します。

 

 

 三嶋大社から

 前回、歩き旅を終えたところは、三島宿の東にある、三嶋大社の鳥居前。それからおよそ1か月、この地点に戻ってきたのは、昨年(2021年)3月のことでした。

 今回は、数日で、箱根峠を克服し、一気に平塚まで向かう計画です。この行程が終了すると、あともう一息で江戸日本橋。いよいよ東海道の歩き旅も、終盤へと向かいます。

 

f:id:soranokaori:20220207111224j:plain

三嶋大社前。

 

 三嶋大社を出た後は、しばらく、市街地を歩きます。前方には、箱根の山が屏風のように横たわり、行く手を阻むような圧迫感を与えています。近くの斜面に姿を見せる、ベージュ色の大きなビルは、病院か介護関係の施設でしょうか。ひと際、目を引く建物です。

 

f:id:soranokaori:20220207111350j:plain

三嶋大社を過ぎた辺りの街道。

 

 途中、小さな川を渡ったところで左を見ると、美しい富士の姿が見えました。やがて、市街地の主要道路は、右方向に大きく迂回。街道は、ここを道なりには進まずに、真っ直ぐ延びる旧道に入ります。

 

f:id:soranokaori:20220207111413j:plain
f:id:soranokaori:20220207111445j:plain

※左、大場川に架かる橋と富士山。右、旧道への入口。

 今井坂と愛宕

 旧道に入った先は、道幅が狭くなり、しばらく進むと、坂道に変わります。それでも、道沿いには住宅などが張り付いて、旧市街地の外れのような光景です。

 この辺りの坂道は今井坂と呼ばれています。そして、やがて、JR東海道本線の踏切です。旧東海道踏切と呼ばれる通り、この鉄道は、まさに、旧東海道を横切って、三島駅函南駅をつないでいます。

 

f:id:soranokaori:20220207111548j:plain

旧東海道踏切。

 踏切の向こう側は、小高い丘のようなところです。街道は、その丘をS字状に蛇行しながら上ります。この上り坂が愛宕坂。坂の右には、市街地から見えていた、ベージュ色の大きなビルが、ずっしりと構えています。

 坂の上には、「箱根旧街道 愛宕坂」と表示された、案内板がありました。そこには、この坂についての簡単な紹介が。ここで少し、その内容を紹介したいと思います。

 

 「・・・この旧街道は急な坂道なので、人も馬もすべって大変なところでした。そこで幕府は、1680年に、それまでの竹を敷いてあったものから、石を敷きつめて『石畳の道』に改修したものです。その石畳を1769年に修理した記録によると、『愛宕坂では、長さ140m、幅3.6mを修理した』とあり、当時の道幅がわかります。」

 

f:id:soranokaori:20220207111611j:plain

愛宕坂。

 

 今の愛宕坂は、上の写真のように、石畳風に新たに整備された歩道です。それでも、この道の地中には、往時の石畳が、そのまま埋まっているところもあるようです。

 

 初音原(はつねがはら)の松並木

 愛宕坂を上り切り、少し、平坦なところに出てくると、街道は、国道1号線に合流します。そこは、五本松の交差点。一旦終わった坂道も、ここから再び、次の坂道に入ります。

 辺りは、三島市の郊外の雰囲気で、事業所や新しい住宅地が広がります。道は、国道に沿った歩道が整備され、歩道と車道の間には、素晴らしい松の並木が続きます。

 これから先は、標高を下げることなく、ひたすら箱根の山へと向かうのです。

 

f:id:soranokaori:20220207111650j:plain
f:id:soranokaori:20220207111712j:plain

※左、五本松交差点。右、箱根旧街道松並木の案内板。

 初音原の松並木は、これまで通った幾つかの並木道とは、少し趣が異なります。その素晴らしさは、御油や舞阪の並木道と変わるところはないものの、箱根に向かう坂道の並木とあって、何となく、重みを感じます。

 

f:id:soranokaori:20220207111737j:plain



 錦田の一里塚

 松並木の中ほどに、錦田の一里塚がありました。立派な塚や木々の様子は、往時の姿を彷彿とさせますが、国道の向こうを見ると、同じ姿の一里塚がもうひとつ。幹線道路の国道1号線の沿線に、上下線で対を成す、立派な塚が残っている光景に、感動を覚えたものでした。

  

f:id:soranokaori:20220207111833j:plain

※錦田の一里塚。

 やがて、松並木を抜け出ると、伊豆縦貫自動車道路をまたぎます。その先で、縦貫道路のランプ道と交差して、街道は、次の坂道に入ります。

 

f:id:soranokaori:20220207111903j:plain

※三島塚原ICの交差点。真っ直ぐ延びる道路は、箱根峠に向かう道。

 

 ランプ道と交わるところは、三島塚原ICの交差点。街道はその先で、左手の旧道の坂道に入ります。旧道への入口には、”箱根路”と刻まれた、横長の大きな岩がありました。国道沿いの松並木といい、重量感ある石標といい、箱根が、日本の象徴であることを誇示するような、重みのある設定です。

 

 真っ直ぐ延びる国道は、ここから箱根越えのドライブ道に入ります。その脇を、ひっそりと、峠に向かう東海道。急坂が続く厳しい道ではありますが、今も、往時の様子が残る区間もそこそこあって、変化に富んだ道筋です。

 

f:id:soranokaori:20220207111936j:plain

※国道1号線から旧道へ。”箱根路”の石標も置かれています。