巡り旅のスケッチ(四国巡拝)の再開
今回から、「巡り旅のスケッチ(四国巡拝)」の再開です。四国八十八か所の霊場巡りは、弘法大師ゆかりの古刹を訪ねるもの。阿波の国の1番札所、霊山寺から、讃岐の国の山中にある、88番大窪寺まで、88か所の寺院の巡拝です。
札所巡りの順番は、千差万別とは言うものの、一般には、1番から88番まで、ほぼ順序通りに進むのが一般的。阿波の国から土佐に入り、伊予、讃岐へと、四国の中を時計回りに周ります。ところが、4年に1度の閏年の巡拝は、逆打ちと呼ばれる周り方が好まれます。
昨年(2020年)は、閏年。慣習に従って、88番大窪寺から、逆回りの巡拝です。
「巡り旅のスケッチ(四国巡拝)」の前半は、28回シリーズで、88番札所から、伊予の国の最後の札所、40番観自在寺までを描いたもの。今回からは、その続き、39番札所から、本来の起点である、1番札所を目指します。
土佐の国
今回から、土佐の国に入ります。四国では、最も広い面積を誇る高知県。西の足摺岬から、東の室戸岬まで、太平洋を抱くように、海岸線がつながります。
四国八十八か所の霊場は、四国4県では最も少ない16か寺。それだけに、霊場間の間隔は開きます。土佐の国の巡礼は、「修行の道場」と呼ばれるように、歩き遍路の方にとっては、その距離を克服するのが、大変な苦労だと思います。
土佐の国の最初の札所は、39番延光寺。そこから、四国最南端の足摺岬へと向かいます。
延光寺へ
伊予の国の最後の札所、40番観自在寺を後にして、すぐに国道56号線に入ります。交通量は、それほどではないものの、愛媛県と高知県を隔てる山越えの道。カーブを繰り返しながら、県境をまたぎます。
高知県に入ってしばらくすると、道は盆地状の開けた空間に入ります。そして、延光寺への進入路を示す表示板。指示に従い、国道を左にそれて、谷あいの集落へと進みます。
少し山の中に入りかけたところが、39番延光寺。土佐の国の初めての札所です。
※延光寺の入口と仁王門。
延光寺の銅鐘
石段を上がって仁王門をくぐると、少し開けた感じの境内が続きます。参道を本堂に向かって進んでいくと、右側には、一風変わった亀の像がありました。強いて注意をしなくても、参拝者の目を引き付ける、奇妙な姿の亀の像。甲羅の上に、梵鐘を乗せた像の姿は、この寺の名の由来に関係しているということです。
※亀の像。
この石像は、昭和54年に、ある方が寄進されたものですが、その台座には、ごく簡単に延光寺の銅鐘の由来が刻まれています。
それによると、「延喜11年(911)に赤亀が竜宮より持ち帰る。」とされ、「この由来に依り、亀鶴山宝光寺を赤亀山延光寺と改め今日に至る。」とのこと。
実際に、銅鐘はこの寺に存在しているようですが、亀が竜宮から持ち帰るとは、何とも微笑ましい伝説のように思えます。
石像を通り過ぎると、境内の中心地に入ります。右前方が本堂で、本堂の左手前に大師堂がありました。
大師堂は、本堂と比べて、意外と小さなお堂です。「巡り旅のスケッチ(四国巡拝)」シリーズの前半でも触れてきたことですが、四国八十八か所の霊場巡りは、少なくとも、本堂と大師堂の参拝を行います。
大師堂には、例外なく、弘法大師が祀られていて、大師と共に巡り歩く巡拝では、このお堂の参拝を、欠かすことができません。
※左、延光寺本堂。右、大師堂。
庭園
本堂と大師堂の参拝を終え、納経所で御朱印を頂きます。納経所は、本堂に向かって右側で、本堂との間には、立派な庭が広がります。よく手入れされている深みのある庭園は、参拝者の誰もが触れられる配置です。四季折々、様々な姿を醸し出してくれるのでしょう。
※延光寺の庭園。
金剛福寺へ
延光寺を後にして、次の札所、38番金剛福寺(こんごうふくじ)へと向かいます。地図を見ると、高知県の西南部分は、宿毛市と四万十市の中村を結ぶ線の南側の一帯が、一塊の山地です。その山地の南東に、盲腸のように突き出た小半島の先端にあるのが足摺岬。
従って、延光寺から足摺岬に向かうには、概ね、3通りの選択肢があるのです。1つ目は、宿毛から西回りで山塊を回り込み、竜串を通って足摺の小半島に向かう道。2つ目は、その逆の東回り。四万十市の中村の郊外をかすめて、四万十川の堤防に出た後で、そこから土佐清水を経由して、小半島に入る道。
3つ目の選択肢が、実に悩ましいルートです。この道は、延光寺を出て、国道56号線を少しだけ中村方面に向かいます。丁度、宿毛と中村の中間辺りで右折して、その後は、一気に南下です。つまり、直線的に山塊を割るようにして南へと向かうのです。*1
以前、順周りの巡拝をした時は、足摺岬から東回りで延光寺へと向かったのですが、今回は、安易にも、3番目の直線コースの選択です。このルートを選んだ理由は、他でもなく、単純に、時間的な問題によるものです。
実は、延光寺の参拝を終えた時刻が、15時過ぎ。四国の札所は、17時で閉じられるため*2、少なくとも、16時45分頃には、金剛福寺に到着しなければなりません。
金剛福寺の参拝を翌日にしてしまうと、宿泊場所との関係からも、時間のロスが重なります。何とか、1時間と少しの時間で、確実に到着するため、直線的なルートの選択に至ったという次第です。
ところが、このルートの選択は、成功とは言えないほど、過酷なドライブになりました。山塊の中を、延々と、つづら折れのカーブが続く道。対向車はほとんどなく、心細くなるようなところです。折れ曲がる坂道と、時間との戦いに、ほぼ1時間を費やして、ようやく、山塊を抜け出すことができたのです。
そして、足摺の小半島に差し掛かかった時には、すでに時刻は、16時30分に迫ろうという状況。制限時刻すれすれで、岬にある、金剛福寺に辿り着くことができました。
39番延光寺と38番金剛福寺をつなぐルートは、回り道とは思っても、是非とも、四万十市の中村を経由する東ルートをお薦めします。