旅素描~たびのスケッチ

気ままな旅のブログです。目に写る風景や歴史の跡を描ければと思います。

巡り旅のスケッチ(四国巡拝)18・・・伊予路(60番横峰寺)

 山岳の霊場

 

 これまでも、険しい山の中にある霊場を幾つか訪れてきましたが、次の横峰寺は、車で向かうのにも困難な、急峻な深い山にある古刹です。

 車での遍路の場合、大抵は、道路も舗装され、あるいはロープウエイなどを利用して、山の頂へも辿り着くことが可能です。それでも、横峰寺をはじめとした幾つかの霊場は、今でも険しい崖道や、鬱蒼とした森の中を進んで行かなければなりません。

 

 

 60番横峰寺

 これまでの4か寺は、西条市の国道11号線の沿線近くに点在し、効率よく巡拝を進めることができました。次に向かうところは、西条市最後の霊場横峰寺(よこみねじ)。国道から、一気に四国山地に駆け上り、険しい山中に分け入ります。

 

 61番香園寺を出て、国道11号を64番前神寺方面に戻ります。63番吉祥寺を過ぎたあたりの交差点で、横峰寺への標識を確認し、その交差点を右折です。その後は、次第に勾配が増す坂道に。

 道は、ほどなく山の中に吸い込まれ、蛇行しながら次第に標高を高めます。やがて、少し空が開けたかと思うと、T字路が現れて、正面に人工湖と思われるダム状の湖が見えました。

 T字路を右折して間もなく、湖に沿って道なりに延びる県道と、その右脇を、上方に向っていく坂道に分かれます。目的地は、坂道の方向で、ここからさらに険しい山の中に入ります。

 分岐から少し上がったところには、昭和の雰囲気が漂う、バス待合所のような建物がありました。未舗装の駐車場には、マイクロバスがたくさん停まり、どうも、横峰寺への車の乗り換え所のようなところです。

 ここから先は、大型バスではとても走ることができない道になるために、団体のお遍路さんたちは、ここで小さな車に乗り換えることになるのだと思います。

 

 その先は、心細くなるような、木々が覆う山道ですが、勇気を出しての運転です。

 山中の薄暗い細道を、奥へ上へと進んで行くと、やがて谷あいに、料金所が現れました。この料金所、林道管理のための協力金のような位置づけで通行料の徴収です。車1台、1,850円の料金は、高いのか安いのか。霊場へ向かう身としては、ありがたく通行させて頂きました。

 

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※左、料金所。ここで料金を支払います。右、横峰寺の駐車場。土産物店が1軒ありました。 

 

 料金所からその先は、幾分舗装状況は良くなったような気もします。それでも、屈曲を繰り返す山道は延々と続きます。

 

 やがて、山の頂上のような場所に出ると、そこは横峰寺の駐車場。結構な広さがあって、見晴らし台にもなるような、空間が開けたところです。天気がよければ、緑濃い山並みを望むことができるのでしょう。もしかして、四国最高峰の石鎚山もすぐそこに望めるのかも知れません。

 ここまで、山道をおよそ30分。なかなかハードなドライブでした。

 

 横峰寺

 駐車場から横峰寺の境内へは、逆に山道を少し下ります。10分程度の道筋ですが、運転ばかりの身体には、ほどよい散策の機会です。

 

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※左、駐車場から境内への道。右、境内の入口。

 

 山の小道を歩き進むと、やがて境内に到着です。横峰寺の境内は、山の斜面に築かれていて、狭い敷地に、お堂などの建物が上手く配置されています。

 境内入口の左手上が大師堂。その前から延びる細いスペースが参道で、大師堂と向かい合う位置に本堂がありました。大師堂と本堂をつなぐ参道の左斜面は、シャクナゲの群生地。反対の右手下には、客殿や美しいお庭がありました。

 

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※左、写真には写っていませんが、左手前が大師堂。右奥に見えるのが本堂です。右、本堂側から正面奥の大師堂を望みます。左の屋根は客殿です。

 

 美しい庭

 四国霊場を巡っていると、たまに、美しいお庭を拝見することがありますが、横峰寺のお庭は、特に素晴らしく感じます。その理由は、圧倒的なシャクナゲの植え込みと、様々な種類の、花のなる木が境内を覆っているからです。

 今回の訪問は、季節的に花が少ない時期ということで、少し残念な気分です。前回訪れた時は5月頃。シャクナゲの淡いピンクの花が咲き誇っていた時でした。

 

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※左、今回の横峰寺客殿とお庭。右、前回の訪問時の様子。

 

 本堂と大師堂の参拝後は、客殿の隣にある納経所で御朱印をいただきます。本来の参拝は、険しい山道を歩いて上り、納経所の左手方向にある仁王門から境内に入るのですが、私たちは、裏手からの参拝となりました。

 

 遍路ころがし

 この横峰寺、麓から歩いて登れば、どれほどの時間がかかるのでしょう。歩き遍路では、時折、”遍路ころがし”という言葉が使われます。これは、お遍路さんたちを転がり落とすような急な坂道が続き、あるいは、歩く心を折れさすような厳しい道のりが待ち構える難所という意味のようで、まさに修行の道程です。

 ”遍路ころがし”で最も知られている霊場は、徳島の12番焼山寺(しょうざんじ)。さらには、20番の鶴林寺や21番太龍寺、45岩屋寺なども、本当に険しい道筋です。

 このような、幾つかある難所にも劣らない程の難所の一つが、この横峰寺ということです。私たちは、車での参拝で、その本当の厳しさは分からないまでも、石鎚山の至近距離まで歩かなければならない遍路道の過酷さを、何となく想像できるような気がします。