旅素描~たびのスケッチ

気ままな旅のブログです。目に写る風景や歴史の跡を描ければと思います。

巡り旅のスケッチ(四国巡拝)15・・・伊予路へ(65番三角寺)

 讃岐から伊予へ

 

 讃岐の国の巡拝は、前回で終了です。次は、四国第2の面積を有する伊予の国に入ります。

 愛媛県にある、四国八十八か所霊場の数は26。65番札所から40番札所まで、県内全域に散らばります。4県で最も多い霊場を抱える伊予の国。ここにも、様々な顔を持つ古刹が控えます。

 

 

 伊予の国の霊場

 愛媛県は、瀬戸内海に面した四国の中央部から、豊後水道を隔てて大分県と向かい合う南西部まで、広範囲に広がります。海岸線は、穏やかな平地がつながる瀬戸内海の沿岸も、西に進むに従って、リアス式海岸のような険しい山が迫ります。

 一方の内陸部は、石鎚山や久万高原(くまこうげん)など、深く険しい山地が広がり、車であっても難渋するようなところです。

 このような、伊予の国の巡拝は、街中や郊外の比較的訪れやすい霊場と、奥深い山の中にある、険しい場所の霊場にくっきりと二分されていて、変化に富んだ遍路道が続きます。

 

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愛媛県霊場の様子。

 

 65番三角寺

 讃岐の国の最後の札所雲辺寺から、伊予の国の東の入口、三角寺(さんかくじ)に向かうルートは大きく分けて2通り。その一つは、観音寺市方面に戻りながら国道11号または高松自動車道を利用して川之江に向かうルートです。もう一方は、徳島県方面に向かう山越えの道。峠を越えて、徳島県三好市の池田町で国道192号に入り、川之江へと向かう道筋です。

 私たちは、今回は、時間短縮を優先して、前者の高速ルートで伊予の国に入ります。

 

 三角寺は、今は四国中央市の市域ですが、元は川之江市金田町。松山自動車道の三島川之江インターチェンジを下りて、少し迂回するようにして、南側の山の中へと向かいます。三角寺への細かな道筋は、少々複雑なため、カーナビの過信は禁物です。よくルートを確かめて、道筋を確認することが大事です。

 松山自動車道の下を潜って、山道に入り、蛇行した坂道を一途に上って行くと、やがて右手に駐車場が現れます。

 

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※駐車場から境内へと続く石段。

 三角寺

 駐車場は、料金箱が置いてあり、200円を投入します。駐車場前の民家の玄関にお婆さんがおいでになり、確認をされている様子です。*1

 

 駐車場からすぐのところに、境内へと続く石段が真っ直ぐに延びていて、その上に、仁王門が望めます。黙々と石段を踏みしめて仁王門に近づくと、そこには釣り鐘の姿も見えました。仁王門と鐘楼とが兼用している、珍しい形です。

 

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※仁王門。鐘楼門でもあるのでしょう。

 

 三角寺の境内は、それほど広い敷地ではありません。山の中腹の、少し開けた場所で、周囲は木々が生い茂ります。

 本堂は、境内の左手奥。そして、その右隣りが大師堂という配置です。

 

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※左、境内の様子。右、本堂。 

 

 三角寺縁起

 本堂の右手には、三角寺の縁起が書かれた案内板がありました。これによると、三角寺は、かつて弘法大師が境内に三角形の護摩壇を築かれて、護摩の秘法を執り行われたのがその名の由来ということです。そして、今もその護摩壇の遺跡が、三角の池として残っているということです。

 

 菩提の道場

 四国巡拝は、4県それぞれの霊場を巡り歩く、修行として捉えられています。特に、歩いて八十八か所を辿る場合は、修行以外の何物でもなく、厳しい道のりと苦難の日々が続きます。

 それに反して、私たちは、車での巡拝です。時として観光気分になりがちで、修行の意味をなかなか感じることはできません。

 それでも、本堂の前に立ち、大師堂で弘法大師の姿を見れば、多少なりとも心が洗われる気分です。修業とは言えないまでも、遍路の心構えは大切にしなければなりません。

 

 四国4県をつなぐ巡礼の旅。各県の巡礼をそれぞれ一括りの修行と捉え、県ごとに固有の表現で紹介されたりもしています。伊予の国の場合は、”菩提の道場”。悟りをひらく場所、という意味でしょうか。

 元々、四国巡拝は徳島の阿波の国がスタートです。この阿波の国は”発心の道場”と呼ばれていて、修業を始めるところです。その次が土佐の国。まさに修行を続ける”修行の道場”。そして、伊予の国の”菩提の道場”へとつながります。最後の国が讃岐の国。ここは”涅槃の道場”です。最後に悟りを得て修行を終わると表現されているのだと思います。

 

 閏年には、最後の札所から逆方向に巡拝するとご利益が得られる、という言い伝えは、どのような根拠があるのか分かりませんが、発心し、修行して、菩提の域に達することで、涅槃に至る本来の巡拝とは、趣が異なるような気がします。

 それでも、四国巡拝は、気持ちの問題。弘法大師とともに巡る遍路の旅は、何よりも、それぞれの人の心の中が大切です。

 こんなことこを思いつつ、菩提の境地を求めて伊予の国の霊場を辿ります。

 

*1:お婆さんがおられない時は、帰りに料金を投入した方がよいと思います。今まで記載したことはありませんが、88か所の札所の多くは、駐車場料金がかかります。概ね、200円から500円で、中には、車に貼るステッカーをいただけるところもあります。