旅素描~たびのスケッチ

気ままな旅のブログです。目に写る風景や歴史の跡を描ければと思います。

巡り旅のスケッチ(四国巡拝)8・・・讃岐路(78番→77番)

 宇多津と多度津

 

 天皇寺を後にして、県道33号を坂出市の中心部方面に向かいます。坂出は、瀬戸大橋の結節点で、児島・坂出ルートの四国側の起点です。県道は、市街地を横断して橋に続く瀬戸中央自動車道の高架下をくぐり抜け、西隣の町、宇多津町へと入ります。

 四国霊場は、この先は、宇多津町と多度津町の寺院を巡り、いよいよ、空海の出身地、善通寺市につながります。

 

 78番郷照寺

 坂出市の中心部を横切って、瀬戸中央自動車道の高架をぬけると、宇多津町に入ります。この町は人口は2万人弱ですが、街中には住宅地が広がって、賑わいも感じます。

 郷照寺(ごうしょうじ)は、JR沿線に広がる宇多津の街から、少し南の方角で、地図で見ると青野山の麓にあたります。

 郷照寺へのアクセスは、住宅地内をうまくすり抜けて行く必要があり、なかなか苦戦するところ。以前にも訪れてはいるものの、今回も同じ間違いを犯すことになりました。

 最初は、カーナビを頼って走ったところ、道は青野山への方向へ。慌てて進路を修正するも、目的地に近づくことができません。右往左往しながら住宅地をさまよっていると、小さな案内看板が見えました。この案内に従って、町中の小道をおそるおそる進みます。やがて、駐車場の方向を示す看板が現れて、細い舗装道路の方向へ。

 心細くなるような狭い道のその先に、ようやく、郷照寺の山門です。道路をまたいで建てられた山門をくぐり抜けると、その奥が駐車場。なかなか分かりにくいアクセスでした。

 

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郷照寺の境内へ。

 

 郷照寺

  郷照寺は、全体としてスッキリとした寺院です。白壁や石垣など、境内の施設は手入れが行き届いていている感じです。駐車場から続く石段を上がると、清楚な感じの境内で、整然と敷き詰められた砂利の敷地の右手には、破風が美しい本堂が構えます。

 先に、82番根香寺のところで少し触れたと思うのですが、四国霊場のほとんどは真言宗の寺院です。ところが、根香寺は、智証大師のゆかりがあって天台宗。そして、この郷照寺は、一遍上人(いっぺんしょうにん)がかかわって再興されたということで、四国霊場ではただ一つの時宗(じしゅう)の寺院ということです。

 鎌倉時代に地方を行脚し、「南無阿弥陀仏」の唱えを説いた一遍上人。仏の救いを求める時宗の世界と、宇宙の真理を探究する空海真言密教が同居する、珍しい寺院の形です。

 

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 ※左、本堂。右、本堂脇から大師堂を望みます。

 

 本堂への参拝後は、左側に続く石段を登り、大師堂へと向かいます。

 大師堂も、小じんまりとしているものの、整然とした美しいお堂です。そして、このお堂の左手に、観音像が置かれていて、地下に下りる階段がありました。いかにも不思議な気分になって、その階段を下りていくと、そこには黄金輝く幾つもの小さな観音像が神々しく据えられていたのです。

 万体観音と称される観音群は見事な光景で、根香寺の回廊と似てはいるものの、また異なった厳かさを感じます。

 

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※大師堂脇の観音像と万体観音。

 

 77番道隆寺

 郷照寺の次の札所は、多度津町にある道隆寺(どうりゅうじ)。宇多津町から丸亀市を通り抜け、讃岐の西側の地域に向かいます。

 多度津の町は、ところどころに農地も広がり、落ち着いた雰囲気です。道隆寺は、県道から少しだけ細い道を入ったところ。仁王門前の一角だけが、駐車場などが整備され、広い空間になっています。中山道などの旧街道でも、道が折れ曲がる辺りだけに、少し広いスペースが残っているところがありますが、まさにそのような空間が道隆寺の門前にありました。

 

 道隆寺

 道隆寺の仁王門は、堂々とした立派な構えです。金剛力士像の姿も勇壮で、身が引き締まる気がします。門からは、正面奥に凛として佇む本堂も望めます。四国霊場の中では、少し規模が大きめの本堂で、大屋根の威風が印象的な建物です。

 仁王門をくぐると、真っ直ぐに参道が延びていて、左手には、幾つもの観音像が並びます。この観音像は、本堂近くの境内にも配置され、巡拝者を見守っていてくれている様子です。

 

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※左、仁王門。右、観音像と本堂。

 本堂への参拝が終わると、次はその右手に控える大師堂へ。大師堂の近くには、石塔と弘法大師の像がありました。

 この大師像、写真にもあるように、巡拝の人が大師の前にひざまずく姿もあって、珍しい構図です。

 

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弘法大師像と大師堂。

 

 道隆寺の門前は、先ほども触れたとおり、ちょっとしたスペースが広がります。このスペースに面した一角に、(仁王門に向かって右手側、帰路の方向では、門を出てすぐ左)一軒のお店がありました。

 お土産や、お遍路用具が揃えられた店のようで、かつてはこのようなお店が幾つか並んでいたのかも知れません。