旅素描~たびのスケッチ

気ままな旅のブログです。目に写る風景や歴史の跡を描ければと思います。

歩き旅のスケッチ[中山道総集編]7・・・峠道(中編)

 木曽路

 

 美濃路の後半は、厳しい峠道が続きます。そして、さらにその先は、「すべて山の中である」と語られる、木曽路です。

 峠道は、険しい道ではあるものの、それぞれに趣がある山道です。往時の街道の面影が良く残り、中山道の醍醐味が味わえるところです。

 

 

 十三峠(じゅうさんとうげ)

 美濃の山の奥深く、ひっそりと佇む、47番大湫宿(おおくてじゅく)。この宿場を発ったすぐ先に、十三峠の西の入口を示す道標が構えます。十三峠は、ここから先、3里半もの長丁場の始まりです。

 大湫宿の休憩所でいただいた資料には、「『十三峠におまけが七つ』と言われ、アップダウンが20以上ある中山道の難所のひとつ」と記されているように、起伏を繰り返して、街道は続きます。

 本来、この名の由来は、峠が13か所あるからだ、とされているようですが、実際には資料の通り、沢山のおまけがあるようです。ただ、数を数えながら歩けるほど、たやすい道ではありません。気力と体力を振り絞り、一歩ずつ、恵那市にある大井の宿場を目指します。

 

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大湫宿のすぐ先。十三峠の西の入口。

 

 この峠道は、幾つのも山を縫うように続いていて、周りの風景も次々と変化していきます。ゴルフ場や林間の道、細い崖路、石畳風の急な坂。ところどころに、小さな集落もあって、畑地の脇をゆっくりと通り抜ける道などは、一息つけるところです。

 途中、深萱という集落があり、そこには、トイレや休憩所がありました。ただ、大湫宿から続くこの道は、すべての峠を越えるまで、途中で店や自動販売機はありません。水分補給もままならず、必ず、軽食と水は持参して臨まなければなりません。

 

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※深萱の集落。写真の右側にトイレ等があります。

 

 深萱から先は、再び厳しい坂道に入ります。石畳のような、自然の石が連なる道や、幅の狭い山道など、次々と姿を変える街道です。農地や集落が現れて、下り坂が続いてくると、次第に緩やかな森の中の道へと入ります。

 槇ヶ根の立場跡を通り過ぎ、西行の森の公園が現れたら、いよいよ十三峠の終わりです。その先の、石畳の坂道を下ったところに、「是より西 十三峠」の道標が。そして、そのすぐ脇に、飲み物や食料の持参を促す注意看板がありました。

 十三峠は、長い道のり。幾つもの峠が連なるこの道筋は、中山道の特色ある峠道のひとつです。*1

 

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※十三峠の東の入口。

 

 馬籠峠(まごめとうげ)

 次は、馬籠峠です。馬籠峠の様子については、中山道総集編の2回目のブログに記したとおり、中山道随一の人気の区間。海外からもたくさんの観光客が訪れるところです。

 美濃路の最後、落合の石畳を踏みしめて、新茶屋で木曽路に入る、長い長い上り一筋の峠道。43番馬籠宿を通過して、馬籠峠に至るまで、標高は上がり続けます。

 

 尾根に連なる、馬籠の宿場を通り抜けた町はずれ、峠に向う展望所からは、遠くに美濃の山並みが見渡せます。

 峠へと向かう道筋は、木々が茂る山の中。時に民家の脇を擦り抜けながら、ひたすら坂道を上ります。やがて、妻籠南木曽駅に続く自動車道に合流すると、その先が馬籠峠です。

 峠には、小さな広場とともに、休憩所を兼ねたお店もあって、一息つけるところです。

 

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 ※左、馬籠宿のはずれにある展望所から美濃の山並みを望みます。右、馬籠峠。

 

 馬籠峠は、このように、車でも訪れることができる峠です。先に記した、琵琶峠や十三峠とは趣を異にした、開けた感じの峠です。

 峠を越えると、街道は、一気に山道に変わります。当然ながら、長く続く下り坂。妻籠宿のすぐ手前、間の宿と言われる、大妻籠の集落へと向かいます。

 

 馬籠宿から妻籠宿に至る峠道。この区間は、たくさんの観光客が往き交います。時に、心細くなるような、人けのない峠道とは異なって、楽しく歩けるところです。

 

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妻籠へと向かう下り道。一石栃白木改番所跡。(「中山道総集編2」を参照下さい。)

 

 鳥居峠

 今回紹介する最後の峠は、35番藪原宿と34番奈良井宿を隔てる鳥居峠木曽川奈良井川の流れを分ける、分水嶺の連峰の尾根筋にある峠です。木曽路の中でも、最も標高が高いと言われるところで、険しい峠道のひとつです。

 峠をまたぐ街道は、つづら折れの急坂が続き、中山道の中でも屈指の難所と言われています。都から江戸方面に向かって進むとき、この峠を越えれば、信濃の国が近づきます。

 

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※左、峠道から藪原の宿場を俯瞰。右、鳥居峠の石碑。

 

 峠道は、急勾配が続くものの、藪原方面の景色は絶景です。峠の辺りは、幾つもの石碑が建てられて、意外と、平坦な広場のようなところも見られます。街道も緩やかで、御嶽神社や峰の茶屋の建物などがありました。

 難所と言われる峠越え。かなり厳しい道と覚悟して挑んだものの、藪原から峠までは、思いのほか、時間をかけずに辿り着くことができました。

 

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※峰の茶屋と奈良井方面に下る峠道。

 

 峰の茶屋からその先は、峠の下り道。坂を下り切ったところに控える、奈良井の宿場を目指します。

 この下り道は、結構な急坂です。しかも、延々と続く坂道は、それこそつづら折れ。右に左に蛇行を繰り返しながら、続きます。いつになったら集落が現れるのか、不安がよぎるほどの長さです。

 この坂道を、江戸方面から上るには、余程の覚悟が必要で、難所と言われる所以です。

 

 鳥居峠の麓には、江戸時代の姿をそのまま残しているような、奈良井の宿場が佇みます。鳥居峠奈良井宿。往時の中山道の様子がそのまま伝わるところです。

 鳥居峠は、JR中央本線藪原駅奈良井駅の間にあって、6~7Kmのハイキングコースとしても楽しめます。少し、準備をして臨むのであれば、それこそ絶好の峠道歩きの区間でしょう。

 

*1:恵那市の街中にある46番大井宿は、ここからさらに1Km余りのところです。