旅素描~たびのスケッチ

気ままな旅のブログです。目に写る風景や歴史の跡を描ければと思います。

歩き旅のスケッチ[中山道総集編]4・・・宿場町(中編)

 風情が残る宿場町

 

 中山道69次の宿場町の筆頭は、前回紹介した、妻籠宿と奈良井宿。宿場全体が、往時の姿をよく残し、江戸時代の光景を存分に味わえます。

 次に紹介したいのは、これら2つの宿場に続く、風情が残る宿場町。再生され、修復された建物が、数多く見られる宿場もあれば、かつての姿を変えつつあるところも少なくありません。それでも、往時の面影を残すため、苦心の跡が窺える宿場です。

 街道筋の雰囲気を、色濃く残した家並みや、個性ある景観を、幾つかの宿場で味わうことができました。

 

 

 馬籠宿

 妻籠と奈良井に続くのは、何と言っても馬籠宿(まごめじゅく)。妻籠宿とは、馬籠峠を挟んだ南側。木曽路の入口とも言える宿場です。

 この宿場町は、何度かの大火に見舞われて、建物は、明治期以降の建築です。それでも、江戸時代を再現したような建物が連なって、見ごたえは充分です。観光客の入込は、妻籠よりも上をいくかも知れません。

 幾分、観光地化され過ぎて、興ざめに思う向きもあるでしょう。ただそれ以上に、美濃の山並みを眺望し、木曽の尾根伝いに連なる家並みは、見事という他ありません。

 小説「夜明け前」の舞台でもある馬籠宿。中山道を代表する宿場町に違いはありません。

 

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※馬籠宿。
 

 柏原宿

 次に紹介したいのは、近江路の東に位置する柏原宿(かしわばらじゅく)。近江から関ヶ原に抜ける道筋にあり、伊吹山鈴鹿の山並みに挟まれて、ひっそりと佇む宿場です。

 この宿場町は、1Km以上にわたって延びる、規模の大きな宿場です。歴史を感じる家並みや、寺社、道標など、由緒ある史跡も豊富です。中でも老舗の建物は、2階に大きな看板を掲げ、往時の繁栄を伝えています。

 町並みは、妻籠などにはかないませんが、落ち着いた、街道筋の雰囲気が味わえます。宿場町を保存するため、沿道の意匠や修景が施され、景観を守る努力が払われている様子です。*1

 

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 ※柏原宿。

 

 醒井宿

 柏原宿の次に記しておきたい宿場町。それは、柏原の隣に位置する、醒井宿(さめがいじゅく)。宿場の姿は、もうそれほど残されてはいませんが、豊かな水が流れる地蔵川と、ひっそりとした家並みは、落ち着いた雰囲気を醸し出し、旅の情緒を誘います。

 さらに、問屋場跡や加茂神社などの寺社の構えは、山際に沿うように連なる宿場町の面影を 引き立てます。日本武尊(やまとたけるのみこと)の熱さましの伝説から名付けられた、醒井という地名。清冽な川の流れは冷たくて、梅花藻の可憐な花を育みます。

 

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醒井宿。右は、問屋場跡。 

 

 福島宿

 次は、もう一度、木曽路に戻ります。先ずは、木曽の中心地、木曽福島にある福島宿。福島の関所とともに、見所多い宿場です。宿場町そのものは、今ではそれほど大きくはなく、かつての町並みの多くの部分は、道路整備で姿を変容させてしまった様子です。

 それでも、木曽福島駅から右手の坂道を下って行くと、自動車道路までの間には、趣ある、宿場の町並みが残ります。幾分、修復された建物が多いように感じるものの、細い道筋に連なる家々は、情緒を誘います。

 さらには、本陣跡をはじめとして、木曽川伝いの道筋や、崖地に設けられた関所など、街道にまつわる史跡も多く、町歩きを楽しめるところです。

 

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※左、福島宿。中、本陣跡。右、福島関所。
 

 須原宿野尻宿

 木曽路にある宿場町で、もう少しお伝えしたいのが、須原宿(すはらじゅく)と野尻宿(のじりじゅく)。

 いずれの宿場も、福島宿の南にあって、都に向かう道中は、上松、須原、野尻という順序で続きます。

 須原宿は、道幅の広さと水路が特徴の宿場町。家並は、随分改修されていて、歴史的な重みはないものの、宿場町の雰囲気は、十分に味わえるところです。多くの家には、行灯や、水舟と呼ばれる、水を受ける木造りの設備などが設置され、街道の趣を感じます。

 また、ところどこに残された、道標や石碑なども旅情を誘い、木曽路の山に囲まれた、宿場の空気が漂います。

 

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須原宿と水舟など。

 

 野尻宿は、須原とは対照的に、道幅の狭い街道が通ります。しかも、道は、宿場内で屈折を繰り返し、独特の雰囲気です。この道筋は、七曲(ななまがり)と呼ばれていて、この宿場の特色のひとつです。

 家並は、やや雑然とした状態で、時代の流れを感じます。そんな中でも、ところどころに古い建物も残されて、曲がりくねった街道とともに、宿場の情緒を味わえます。

 

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 ※野尻宿と七曲の道。

 

 長久保宿

 もうひとつ紹介したい宿場町は、長久保宿信濃路の、笠取峠の麓にある宿場です。都からは、諏訪湖を過ぎて、中山道最大の難所と言われる和田峠を下り切り、和田宿の次に位置するところです。

 この宿場町は、典型的なかぎ型で、町の中央にある濱田屋旅館を角にして、中山道は直角に曲がります。この角の南側、和田宿方面の町並みは、少し寂れた集落の様相で、変わり映えはありません。ところが、濱田屋旅館から東に向かう街道は、往時の姿をよく残した佇まいが続きます。

 本陣跡や、古い家屋もいくつか残り、街道自体が、笠取峠に向かう坂道で、奥ゆかしい情景です。

 

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※濱田屋旅館から東に延びる街道と本陣跡。

 

 今回振り返った宿場町。妻籠と奈良井の後に続く、風情のあるところです。あくまでも、私の主観で選んだもので、その点は、了解いただければと思います。

 中山道には、この他にも、印象に残る宿場町は幾つもあって、次回には、その見どころをまとめます。

*1:修景には、力を入れられているようですが、一方では、電線などは地中化されておらず、少し残念なところも見られます。